[PG018] 中学校でのアサーション・トレーニング導入に関する実践研究
社会科における表現力の向上の実践といじめ防止の実践を通して
Keywords:社会科における表現力, いじめ防止, アサーション・トレーニング
問題と目的
現行学習指導要領において,教科指導の中においても,これまで以上に思考力,表現力の育成に力点を置くとされている。このことは,自分の意見を相手に正確に伝え,相手との対話を進めていこうとすることを奨励するものでもある。つまり,人と関わり,「生きていく力」を全教育活動の中において具現化していくことと捉えることができる。筆者はこのように捉えて,本研究に取り組んだ。さて,表現力の向上のためには様々な方法があるが,本研究はアサーション・トレーニング(以下AT)を導入した。ここで言うATは平木典子(2008)らが進めているATを基本としつつ,中学生のニーズや語彙力等も含め,発達段階を考慮したATプログラムを筆者が作成した。平木の言うATの定義は「自他を尊重した,さわやかな自己表現」である。「さわやか」の意味は,自分の思いを率直に述べ,自分の思いや意見が相手に伝わり,納得,賛成を得たことのみが「さわやか」と捉えられるが,それだけを意味するものではない。つまり,自分の意見を述べても,相手は反対することもあるので,そのことを想定して,相手との一致点や妥協点を見出していこうとする姿勢を持っているコミュニケーションが「さわやか」な意味であり,ATが目指していることの1つである。ATがめざすものは,人と人が協同して生きていくためには重要なもので,一人ひとりが社会を変革に導いていくことにつながるものと考える。
方法と結果
1 いじめ防止の実践例
3年間にわたり,A中学校の1年生が入学して間もない4月下旬頃に「いじめの認識」についての学年集会形式で,場面1~場面6までについて生徒たちに考えさえ,解説を行った。場面3を取り上げその結果は下の「表3」に結果を示した。
場面3を取り上げた理由は,3年間を通して,もっとも正解率が低かったからである。いじめ行為においては,周りの生徒たちから,いつもプロレスや柔道などの技をかけられたりしている生徒が毎回同じであっても,本人がその場で「違うよ,いじめ
られてないよ,遊びだよ」などと否定するとそれ以上踏み込まず,いじめ行為とみなさない生徒が7割近くを占めている。
2 社会科におけるAT実践例
社会科の既習の知識をもとに,当時の歴史上の人物が行った行為について,自分の意見を述べていくという試みである。歴史の理解も深まり,その出来事について,ATの自己表現法のスキルDESC(デスク)を用いて自分の意見や思いを文章にして発表するというものである。以下生徒作品の一部を掲載する。
井伊直弼に対して(中2男)
D:「あなたは国をまとめるために攘夷派のリーダーを次々と逮捕し、橋本左内、吉田松陰らを処刑しましたね。」
E:「あなたは自分なりに国の最善策だと考えてやったのだと思います。でも、そのことによってたくさんの人が悲しんだと思います。」
S:「自分1人で考えるのではなく、みんなと話し合って決めればよかったんじゃないかな?」
YESの場合:「ありがとう、もうやってしまったことは仕方ないから、これから一緒に国について考えていきましょう。」
NOの場合:「もう1度、同じ過ちをおかしてほしくないんです。」「もう1度考えてもらえませんか。」
3 考察
学校でATを導入したねらいである表現力の育成に関しては,特に社会科でDESCづくりを継続し,定期考査にもDESCづくりを取り入れての評価の1つの材料としていった。生徒たちが作るDESCは学年があがるにつれて,上手になっていった。またいじめ防止はじめ,開発・予防的に中学生の円滑な人間関係づくりにとっても,ATを取り上げることによって,生徒たちの意識が高まったと考える。
現行学習指導要領において,教科指導の中においても,これまで以上に思考力,表現力の育成に力点を置くとされている。このことは,自分の意見を相手に正確に伝え,相手との対話を進めていこうとすることを奨励するものでもある。つまり,人と関わり,「生きていく力」を全教育活動の中において具現化していくことと捉えることができる。筆者はこのように捉えて,本研究に取り組んだ。さて,表現力の向上のためには様々な方法があるが,本研究はアサーション・トレーニング(以下AT)を導入した。ここで言うATは平木典子(2008)らが進めているATを基本としつつ,中学生のニーズや語彙力等も含め,発達段階を考慮したATプログラムを筆者が作成した。平木の言うATの定義は「自他を尊重した,さわやかな自己表現」である。「さわやか」の意味は,自分の思いを率直に述べ,自分の思いや意見が相手に伝わり,納得,賛成を得たことのみが「さわやか」と捉えられるが,それだけを意味するものではない。つまり,自分の意見を述べても,相手は反対することもあるので,そのことを想定して,相手との一致点や妥協点を見出していこうとする姿勢を持っているコミュニケーションが「さわやか」な意味であり,ATが目指していることの1つである。ATがめざすものは,人と人が協同して生きていくためには重要なもので,一人ひとりが社会を変革に導いていくことにつながるものと考える。
方法と結果
1 いじめ防止の実践例
3年間にわたり,A中学校の1年生が入学して間もない4月下旬頃に「いじめの認識」についての学年集会形式で,場面1~場面6までについて生徒たちに考えさえ,解説を行った。場面3を取り上げその結果は下の「表3」に結果を示した。
場面3を取り上げた理由は,3年間を通して,もっとも正解率が低かったからである。いじめ行為においては,周りの生徒たちから,いつもプロレスや柔道などの技をかけられたりしている生徒が毎回同じであっても,本人がその場で「違うよ,いじめ
られてないよ,遊びだよ」などと否定するとそれ以上踏み込まず,いじめ行為とみなさない生徒が7割近くを占めている。
2 社会科におけるAT実践例
社会科の既習の知識をもとに,当時の歴史上の人物が行った行為について,自分の意見を述べていくという試みである。歴史の理解も深まり,その出来事について,ATの自己表現法のスキルDESC(デスク)を用いて自分の意見や思いを文章にして発表するというものである。以下生徒作品の一部を掲載する。
井伊直弼に対して(中2男)
D:「あなたは国をまとめるために攘夷派のリーダーを次々と逮捕し、橋本左内、吉田松陰らを処刑しましたね。」
E:「あなたは自分なりに国の最善策だと考えてやったのだと思います。でも、そのことによってたくさんの人が悲しんだと思います。」
S:「自分1人で考えるのではなく、みんなと話し合って決めればよかったんじゃないかな?」
YESの場合:「ありがとう、もうやってしまったことは仕方ないから、これから一緒に国について考えていきましょう。」
NOの場合:「もう1度、同じ過ちをおかしてほしくないんです。」「もう1度考えてもらえませんか。」
3 考察
学校でATを導入したねらいである表現力の育成に関しては,特に社会科でDESCづくりを継続し,定期考査にもDESCづくりを取り入れての評価の1つの材料としていった。生徒たちが作るDESCは学年があがるにつれて,上手になっていった。またいじめ防止はじめ,開発・予防的に中学生の円滑な人間関係づくりにとっても,ATを取り上げることによって,生徒たちの意識が高まったと考える。