[PG057] 短期的-長期的×継続的-適宜的な有効性の認知
メタ認知的方略使用に対する影響
Keywords:学習方略, メタ認知, 有効性の認知
問 題
ある方略を使用することについて,効果的であるという認知を有効性の認知という。村山(2003)は条件知識に注目し(cf. Schraw & Moshman, 1995),次のテストに向けた短期的な認知と生涯という長期的な認知に分け,異なる効果を示した。さらに,Yamaguchi(2014)は認知的方略に対して,継続的に使い続けるのか,適宜的に場面に合わせて使用するのかといった使用方法で分け,短期的-継続的使用の有効性の認知が直接影響していることを示した。一方で,高次の学習であるメタ認知的な方略については検討がされていない。
目的 メタ認知的方略使用に対する,2つの時期(短期,長期)と2つの使い方(継続,適宜)の影響を明確にすることである。また,方略に対する知識の影響も考慮する(Yamaguchi, 2013)。
方 法
大学生111名を対象に調査を実施した。メタ認知的方略7項目について,1つの項目に対して同時に方略使用,4つの有効性の認知(短期-継続的,短期-適宜的,長期-継続的,長期-適宜的),コスト感の回答を6件法で回答を求めた。方略知識については2件法で回答を求めた。
結 果
項目をレベル1,参加者をレベル2としたマルチレベル分析を行った。村山(2003)やYamaguchi(2013)を参考に,本研究では有効性の認知を継続的使用と適宜的使用に分け,さらに各有効性の認知の中で長期的なものから短期的なものへのパスを想定したモデルを用いた(Figure 1)。
メタ認知的方略使用に対する影響 分析の結果,適合度は良好であった(χ2(15)=29.92, RMSEA=.04, CFI=.98, TLI=.95, SRMR項目=.04, SRMR参加者=.05)。結果をFigure 1に示す。レベル1について(Figure 1下),2つの継続的な使用に対する有効性の認知が高い項目ほど,その方略を使用していたという直接効果を示した。また,長期的-継続的な有効性の認知は,短期的-継続的な有効性の認知を媒介した効果も示した。適宜的な使用に対する有効性の認知の影響はみられなかった。レベル2について(Figure 2上),短期的-継続的な有効性の認知が高い学習者ほど方略を使用していた。一方で,レベル1でみられた長期的-継続的な有効性の認知の直接効果はみられなかった。なお,共変量として投入したコスト感をいずれのレベルにおいても有意な負の影響を示した。
考 察
認知的方略について検討したYamaguchi(2014)と同様に,短期的-継続的な有効性の認知の直接効果がみられた。一方で,レベル1において長期的-継続的な有効性の認知の直接効果もみられた。メタ認知的方略は,認知的方略など,様々な学習方略を把握・調整する役割を持つため,長期的な展望の直接効果もみられた可能性がある。
今後の展望 マルチレベル分析に際して,項目数が少なかった。そのため,方略の項目数を増やした上で,レベル1の結果を再度検討すべきである。また,方略使用に対する動機づけ変数との関係性も明確にすべきである(e.g., 山口, 2012)。
主な引用文献
山口 剛(2012). 教育心理学研究, 60, 380-391.
Yamaguchi, T.(2014). The 12th Annual Hawaii International Conference on Education.
ある方略を使用することについて,効果的であるという認知を有効性の認知という。村山(2003)は条件知識に注目し(cf. Schraw & Moshman, 1995),次のテストに向けた短期的な認知と生涯という長期的な認知に分け,異なる効果を示した。さらに,Yamaguchi(2014)は認知的方略に対して,継続的に使い続けるのか,適宜的に場面に合わせて使用するのかといった使用方法で分け,短期的-継続的使用の有効性の認知が直接影響していることを示した。一方で,高次の学習であるメタ認知的な方略については検討がされていない。
目的 メタ認知的方略使用に対する,2つの時期(短期,長期)と2つの使い方(継続,適宜)の影響を明確にすることである。また,方略に対する知識の影響も考慮する(Yamaguchi, 2013)。
方 法
大学生111名を対象に調査を実施した。メタ認知的方略7項目について,1つの項目に対して同時に方略使用,4つの有効性の認知(短期-継続的,短期-適宜的,長期-継続的,長期-適宜的),コスト感の回答を6件法で回答を求めた。方略知識については2件法で回答を求めた。
結 果
項目をレベル1,参加者をレベル2としたマルチレベル分析を行った。村山(2003)やYamaguchi(2013)を参考に,本研究では有効性の認知を継続的使用と適宜的使用に分け,さらに各有効性の認知の中で長期的なものから短期的なものへのパスを想定したモデルを用いた(Figure 1)。
メタ認知的方略使用に対する影響 分析の結果,適合度は良好であった(χ2(15)=29.92, RMSEA=.04, CFI=.98, TLI=.95, SRMR項目=.04, SRMR参加者=.05)。結果をFigure 1に示す。レベル1について(Figure 1下),2つの継続的な使用に対する有効性の認知が高い項目ほど,その方略を使用していたという直接効果を示した。また,長期的-継続的な有効性の認知は,短期的-継続的な有効性の認知を媒介した効果も示した。適宜的な使用に対する有効性の認知の影響はみられなかった。レベル2について(Figure 2上),短期的-継続的な有効性の認知が高い学習者ほど方略を使用していた。一方で,レベル1でみられた長期的-継続的な有効性の認知の直接効果はみられなかった。なお,共変量として投入したコスト感をいずれのレベルにおいても有意な負の影響を示した。
考 察
認知的方略について検討したYamaguchi(2014)と同様に,短期的-継続的な有効性の認知の直接効果がみられた。一方で,レベル1において長期的-継続的な有効性の認知の直接効果もみられた。メタ認知的方略は,認知的方略など,様々な学習方略を把握・調整する役割を持つため,長期的な展望の直接効果もみられた可能性がある。
今後の展望 マルチレベル分析に際して,項目数が少なかった。そのため,方略の項目数を増やした上で,レベル1の結果を再度検討すべきである。また,方略使用に対する動機づけ変数との関係性も明確にすべきである(e.g., 山口, 2012)。
主な引用文献
山口 剛(2012). 教育心理学研究, 60, 380-391.
Yamaguchi, T.(2014). The 12th Annual Hawaii International Conference on Education.