[PG059] 中学・高校生の学習に対する態度の差異
認知・行動・情緒の3側面からの検討
Keywords:学習に対する態度, 認知・行動・情緒, 中学・高校生
問題と目的
生徒らの学習の悩みはなかなか減らない現状(内閣府,2007)がある中,本研究では悩みは認知・行動・情緒のあらゆる面にわたっていること,学習行動や方略の不適応と関連があることを問題とした。そこで中学・高校生の学習の実態を捉えることを意図して,学習に対する態度尺度を作成し,中学・高校生の差異を検討することを目的とした。
方法
予備調査:2つの予備調査(中学・高校生14名への半構造化面接,および中学・高校生7名への個別学習相談の実施)をとおして学習に対する態度の項目を収集し,カテゴリー化を行い,質問紙原案を作成した。調査1:2012年10月~12月に中学1~3年生715名と高校1~3年生890名を対象に学習に対する態度の質問紙調査を行った。調査2:2012年12月~2013年1月に中学2年生97名と高校2年生103名を対象に学習に対する態度尺度と自律的動機づけ尺度(西村ら,2011)の質問紙調査を行った。
結果と考察
態度尺度の検討 調査1で得られた中学・高校生の有効データを一緒にして探索的因子分析(最尤法,Promax回転)を行った結果,認知・行動・情緒のいずれの側面も3因子が見出された(Table1~ 3)。中学・高校生を別にして確認的因子分析を行ったところ,許容範囲内の適合度が得られた。信頼性を検討したところ,α係数は概ね許容できる値を示し,I-R相関係数と調査2で検討した再検査信頼性係数(r=.57~.89,いずれもp<.001)は満足できる値を示した。妥当性を検討したところ,ポジティブな態度(下位尺度)であるコスト受容・習慣的な積極行動等と「学習時間」との間に弱い~中程度の正の相関(r=.24~.51,いずれもp<.001)が見られ基準関連妥当性を確認した。ポジティブな態度(下位尺度)と自律的動機づけとの間に中程度以上の正の相関(r=.46~.72,いずれもp<.001)が,また統制的より自律的動機づけとの強い相関が見られ,態度と学業適応との関連が示唆された。
中学・高校生の差異 中学生と高校生を別にして下位尺度間の相関係数を算出し,さらに相等性の検定を行った。その結果,対処回避はほとんどのポジティブな態度と負の相関があり中学生が高校生より有意に関連が強かった。遂行目標の重視は高校生がテスト課題対処と正の相関があり中学生より有意に関連が強かった。学習の不安は高校生が関与肯定・テスト課題対処と正の相関があり中学生より有意に関連が強かった。次に,学年(6水準)を独立変数,態度の下位尺度を従属変数とする1要因分散分析を行った。その結果,認知的側面では,関与肯定とコスト受容は6年間ほぼ同じ水準を保ち続け,遂行目標の重視は高2・高3になると低くなることが示された。行動的側面では,概ね学年が進むにつれて習慣的な積極行動とテスト課題対処は低くなり,対処回避は高くなることが示された。情緒的側面では,充実感は高校移行期が一番低く,統制感は高2まで下がり続けて高3になって再び高くなり,学習の不安は学校移行期あたりが最も高いことが示された。
生徒らの学習の悩みはなかなか減らない現状(内閣府,2007)がある中,本研究では悩みは認知・行動・情緒のあらゆる面にわたっていること,学習行動や方略の不適応と関連があることを問題とした。そこで中学・高校生の学習の実態を捉えることを意図して,学習に対する態度尺度を作成し,中学・高校生の差異を検討することを目的とした。
方法
予備調査:2つの予備調査(中学・高校生14名への半構造化面接,および中学・高校生7名への個別学習相談の実施)をとおして学習に対する態度の項目を収集し,カテゴリー化を行い,質問紙原案を作成した。調査1:2012年10月~12月に中学1~3年生715名と高校1~3年生890名を対象に学習に対する態度の質問紙調査を行った。調査2:2012年12月~2013年1月に中学2年生97名と高校2年生103名を対象に学習に対する態度尺度と自律的動機づけ尺度(西村ら,2011)の質問紙調査を行った。
結果と考察
態度尺度の検討 調査1で得られた中学・高校生の有効データを一緒にして探索的因子分析(最尤法,Promax回転)を行った結果,認知・行動・情緒のいずれの側面も3因子が見出された(Table1~ 3)。中学・高校生を別にして確認的因子分析を行ったところ,許容範囲内の適合度が得られた。信頼性を検討したところ,α係数は概ね許容できる値を示し,I-R相関係数と調査2で検討した再検査信頼性係数(r=.57~.89,いずれもp<.001)は満足できる値を示した。妥当性を検討したところ,ポジティブな態度(下位尺度)であるコスト受容・習慣的な積極行動等と「学習時間」との間に弱い~中程度の正の相関(r=.24~.51,いずれもp<.001)が見られ基準関連妥当性を確認した。ポジティブな態度(下位尺度)と自律的動機づけとの間に中程度以上の正の相関(r=.46~.72,いずれもp<.001)が,また統制的より自律的動機づけとの強い相関が見られ,態度と学業適応との関連が示唆された。
中学・高校生の差異 中学生と高校生を別にして下位尺度間の相関係数を算出し,さらに相等性の検定を行った。その結果,対処回避はほとんどのポジティブな態度と負の相関があり中学生が高校生より有意に関連が強かった。遂行目標の重視は高校生がテスト課題対処と正の相関があり中学生より有意に関連が強かった。学習の不安は高校生が関与肯定・テスト課題対処と正の相関があり中学生より有意に関連が強かった。次に,学年(6水準)を独立変数,態度の下位尺度を従属変数とする1要因分散分析を行った。その結果,認知的側面では,関与肯定とコスト受容は6年間ほぼ同じ水準を保ち続け,遂行目標の重視は高2・高3になると低くなることが示された。行動的側面では,概ね学年が進むにつれて習慣的な積極行動とテスト課題対処は低くなり,対処回避は高くなることが示された。情緒的側面では,充実感は高校移行期が一番低く,統制感は高2まで下がり続けて高3になって再び高くなり,学習の不安は学校移行期あたりが最も高いことが示された。