[PG093] 母親の乳幼児に対するミラーリングの横断的検討
キーワード:ミラーリング , 母親の関わり, 言語発達
■問題と目的
ミラーリングは,乳児の感情状態を映し返す情緒的交流として自己感の認識の発達に重要な役割を持つと言われ(Kohut,1971,Stern,1985),言語発達促進や自閉症児に対する関わりに利用されて久しいが,その機能や,言語発達との関連性の研究は希少である。そこで本研究は,ミラーリングの定義をLegerstee, & Varghese(2001)に準じ,1「注意維持・喚起行動」,2「模倣行動」,3「情緒的交流行動」とし,以下のように母親のミラーリングの実態を検討する。まず,母親が3ヶ月齢児から前言語期の乳児や言語発現期の2歳までの幼児に,場面によって,どのような頻度でミラーリングを行っているかを明らかにし,それと共に発達的な側面としての言語発達(共同注意)との関連について検討する。
■方法
調査期間:2013(平成25)年1月から2013(平成25)
年3月までである。
調査対象者:O市保健センターの定期健診に訪れ
た0ヶ月から2歳までの子どもを持つ保護者559名(回収率72.8%)である。
データ収集方法:健診(3ヶ月,6ヶ月,1歳半,2
歳3ヶ月)の案内書に依頼文と質問紙を同封して郵送し健診当日回収ポストに入れてもらった。
質問紙:以下の2種類の内容を示す項目を作成し
た。a生活の6場面(起床,食事,おむつ替え,着替え,入浴,遊び)で,4つの関わり「実況」「代弁」「注意」「模倣」の頻度を6件法で問うもの。b精神,言語発達を問うもので,それぞれの発達に応じた項目を設けた。3ヶ月健診では0~3ヶ月齢児用,6ヶ月健診では4~6ヶ月齢児用,1歳半健診では1歳児(16ヶ月~)用,2歳3ヶ月健診では2歳児用の4種類を使用した。
分析:a上記の4つの関わり得点の6場面合算
の平均値を「平均実況」「平均代弁」等とした。
b6場面ごとの関わり得点の平均値をそれぞれ算出したものを「起床実況」,「食事代弁」等と命名した。c4つの関わり得点について月年齢グループの差を見るため一元配置分散分析を行った。dミラーリング頻度を表す関わり得点と共同注意,指さし等,前言語期の発達,言語発達の時期との相関を分析した。
■結果と考察
ミラーリング頻度の年齢差(発達的差異):「平
均注意」「平均模倣」で有意差が示された(図1)。
ミラーリング頻度と言語発達との関連: 6場面に
おけるミラーリング頻度と共同注意等の前言語期の発達,言語発達の時期との有意な相関として,18ヶ月齢児においては正の相関が,3ヶ月齢児,6ヶ月齢児,2歳児においては負の相関が示された。18ヶ月齢期の正の相関は,母親がこの時期に子どもの2語文が出現する等の言語発達の変化に敏感に反応し,ミラーリングをよく行う実態を表し,他の月年齢では子どもの言語発達が遅いためにミラーリングを熱心に行うという可能性が考えられる。
以上の年齢差,言語発達との関連より,母親は子どもの言語発達の変化に応じて関わりを調節し変化させている可能性が示唆された。また,18ヶ月齢児へのミラーリングの頻度と言語発達との正の相関の意味の検討が今後の課題である。
ミラーリングは,乳児の感情状態を映し返す情緒的交流として自己感の認識の発達に重要な役割を持つと言われ(Kohut,1971,Stern,1985),言語発達促進や自閉症児に対する関わりに利用されて久しいが,その機能や,言語発達との関連性の研究は希少である。そこで本研究は,ミラーリングの定義をLegerstee, & Varghese(2001)に準じ,1「注意維持・喚起行動」,2「模倣行動」,3「情緒的交流行動」とし,以下のように母親のミラーリングの実態を検討する。まず,母親が3ヶ月齢児から前言語期の乳児や言語発現期の2歳までの幼児に,場面によって,どのような頻度でミラーリングを行っているかを明らかにし,それと共に発達的な側面としての言語発達(共同注意)との関連について検討する。
■方法
調査期間:2013(平成25)年1月から2013(平成25)
年3月までである。
調査対象者:O市保健センターの定期健診に訪れ
た0ヶ月から2歳までの子どもを持つ保護者559名(回収率72.8%)である。
データ収集方法:健診(3ヶ月,6ヶ月,1歳半,2
歳3ヶ月)の案内書に依頼文と質問紙を同封して郵送し健診当日回収ポストに入れてもらった。
質問紙:以下の2種類の内容を示す項目を作成し
た。a生活の6場面(起床,食事,おむつ替え,着替え,入浴,遊び)で,4つの関わり「実況」「代弁」「注意」「模倣」の頻度を6件法で問うもの。b精神,言語発達を問うもので,それぞれの発達に応じた項目を設けた。3ヶ月健診では0~3ヶ月齢児用,6ヶ月健診では4~6ヶ月齢児用,1歳半健診では1歳児(16ヶ月~)用,2歳3ヶ月健診では2歳児用の4種類を使用した。
分析:a上記の4つの関わり得点の6場面合算
の平均値を「平均実況」「平均代弁」等とした。
b6場面ごとの関わり得点の平均値をそれぞれ算出したものを「起床実況」,「食事代弁」等と命名した。c4つの関わり得点について月年齢グループの差を見るため一元配置分散分析を行った。dミラーリング頻度を表す関わり得点と共同注意,指さし等,前言語期の発達,言語発達の時期との相関を分析した。
■結果と考察
ミラーリング頻度の年齢差(発達的差異):「平
均注意」「平均模倣」で有意差が示された(図1)。
ミラーリング頻度と言語発達との関連: 6場面に
おけるミラーリング頻度と共同注意等の前言語期の発達,言語発達の時期との有意な相関として,18ヶ月齢児においては正の相関が,3ヶ月齢児,6ヶ月齢児,2歳児においては負の相関が示された。18ヶ月齢期の正の相関は,母親がこの時期に子どもの2語文が出現する等の言語発達の変化に敏感に反応し,ミラーリングをよく行う実態を表し,他の月年齢では子どもの言語発達が遅いためにミラーリングを熱心に行うという可能性が考えられる。
以上の年齢差,言語発達との関連より,母親は子どもの言語発達の変化に応じて関わりを調節し変化させている可能性が示唆された。また,18ヶ月齢児へのミラーリングの頻度と言語発達との正の相関の意味の検討が今後の課題である。