[PG097] 遊び場面における幼児の欲求と母親の行動
attachmentとbondingの視点から
Keywords:attachment, bonding, 文化
問題・目的
これまでの母子関係に関する研究においては、特定の場面や遊具を用いた方法が多く採用されてきたが、日常的な場面での研究はほとんどなされてこなかった。しかし母子関係は、日常生活の中で築かれるものなので、日常的な幼児の遊び場面の調査を行う必要がある。本研究では「公園」を研究場面に選び、幼児の欲求の内容、母親の反応や自発的な行動と幼児の欲求との関係を、母子の行動観察によって調査した。
方 法
調査は観察法を用いて、公園で遊ぶ1~5歳の幼児と、その母親の行動を記録する。記録用紙は、独自に作成した記録用紙を使用し、幼児の欲求行動を「行動欲求」「身体接触」「介入」「反応欲求」「共同注目」「共同行動」の6つに分類した。観察時間は1組あたり30分である。
母親の反応は、幼児の欲求に対する対応を4段階で評価し、母親の自発的な行動については幼児の欲求行動と同じ項目で回数を記録した。
結 果
母親の反応は「介入」や「共同欲求」に対して欲求を満たす反応がよく見られ、「行動欲求」「反応欲求」ではその反応が低く、「身体接触」と「共同注目」は中間程度であった。(Figure 1)
幼児の欲求行動は「行動欲求」「身体接触」「介入」「反応欲求」「共同注目」「共同行動」順にみられ幼児の欲求行動と母親の自発的な行動にはr=.94という強い正の相関があった。
母親の反応と幼児の欲求行動では、母親の積極的な関わりと共通体験の程度に応じて母親が、幼児の欲求に合致する反応を示す割合が異なることが分かった。
考 察
共同注目は母親からの働きかけの方の数値が多くなったが、矢藤(2000)と北山(2005)から、遊びの中で行われる母子のコミュニケーションとして予想外の要因が含まれていると考えられ、それを除いて再度相関を調べたところ、r=.96になりさらに相関が高くなることが判明した。(Figure 2)
グラフから見ると共同注目のみ他の項目とは異なった傾向を示している。共同注目は北山(2005)では共視という概念として扱われており、これは文化的要因によるものという。確かに幼児に比べて母親は日本文化の影響を長年受けてきているので、このような結果の差がでたものと考えられる。
このことから母子の愛着形成には、人間として共通な要因と、文化的に形成される要因があると考えられる。母子関係の研究においては、文化的要因も無視すべきではないだろう。
引用文献
北山修(2005). 共視論 講談社
矢藤優子(2000). 子どもの注意を共有するための母親の注意喚起行動:おもちゃ遊び場面の分析から 発達心理学研究, 12, 153-162.
これまでの母子関係に関する研究においては、特定の場面や遊具を用いた方法が多く採用されてきたが、日常的な場面での研究はほとんどなされてこなかった。しかし母子関係は、日常生活の中で築かれるものなので、日常的な幼児の遊び場面の調査を行う必要がある。本研究では「公園」を研究場面に選び、幼児の欲求の内容、母親の反応や自発的な行動と幼児の欲求との関係を、母子の行動観察によって調査した。
方 法
調査は観察法を用いて、公園で遊ぶ1~5歳の幼児と、その母親の行動を記録する。記録用紙は、独自に作成した記録用紙を使用し、幼児の欲求行動を「行動欲求」「身体接触」「介入」「反応欲求」「共同注目」「共同行動」の6つに分類した。観察時間は1組あたり30分である。
母親の反応は、幼児の欲求に対する対応を4段階で評価し、母親の自発的な行動については幼児の欲求行動と同じ項目で回数を記録した。
結 果
母親の反応は「介入」や「共同欲求」に対して欲求を満たす反応がよく見られ、「行動欲求」「反応欲求」ではその反応が低く、「身体接触」と「共同注目」は中間程度であった。(Figure 1)
幼児の欲求行動は「行動欲求」「身体接触」「介入」「反応欲求」「共同注目」「共同行動」順にみられ幼児の欲求行動と母親の自発的な行動にはr=.94という強い正の相関があった。
母親の反応と幼児の欲求行動では、母親の積極的な関わりと共通体験の程度に応じて母親が、幼児の欲求に合致する反応を示す割合が異なることが分かった。
考 察
共同注目は母親からの働きかけの方の数値が多くなったが、矢藤(2000)と北山(2005)から、遊びの中で行われる母子のコミュニケーションとして予想外の要因が含まれていると考えられ、それを除いて再度相関を調べたところ、r=.96になりさらに相関が高くなることが判明した。(Figure 2)
グラフから見ると共同注目のみ他の項目とは異なった傾向を示している。共同注目は北山(2005)では共視という概念として扱われており、これは文化的要因によるものという。確かに幼児に比べて母親は日本文化の影響を長年受けてきているので、このような結果の差がでたものと考えられる。
このことから母子の愛着形成には、人間として共通な要因と、文化的に形成される要因があると考えられる。母子関係の研究においては、文化的要因も無視すべきではないだろう。
引用文献
北山修(2005). 共視論 講談社
矢藤優子(2000). 子どもの注意を共有するための母親の注意喚起行動:おもちゃ遊び場面の分析から 発達心理学研究, 12, 153-162.