[PH001] 大学の心理教育相談室における学習支援に関する研究(8)
集団を対象とした学習支援
Keywords:学習支援, 教訓帰納, 集団
広島大学大学院教育学研究科附属教育実践総合センターでは,心理教育相談室(にこにこルーム)の支援活動として地域の子どもに対し,学習支援を行いながら,教職を目指す大学生の学習支援の力量育成に取り組んでいる。この学習支援は,市川(1993)が提唱する認知カウンセリングの手法に基づき行っている。本研究では集団を対象とした学習支援の効果について検討を試みる。そして,主に「教訓帰納」に焦点を当てて,集団を対象に学習支援を実施する際の課題を明らかにする。
方 法
調査対象者 平成25年度に実施した集団(小学5年生9名)を対象とした学習支援である,にこにこサマースクールに参加した大学生に調査を実施した。大学生は計8名(男性1名,女性7名)から回答を得た。彼らを対象にサマースクール実施後に,質問紙による調査を実施した。
調査内容 ①a)個別の学習支援と,b)集団での学習支援における「教訓帰納」を子どもに促す力量・留意点等に関する質問と,②「にこにこサマースクール」に参加した子どもへの成果に関する質問から成っていた。
個別の学習支援における「教訓帰納」促進に関する力量については,①その支援がどの程度実施できるかについて,「かなりうまくできる」(4点)から「全くうまくできない」(1点)までの4段階で評定を求めた。また②「教訓帰納」を促す際に留意していることについて自由記述で回答を求めた。集団の学習支援における「教訓帰納」促進に関する力量については,①その支援がどの程度実施できるかについて,「かなりうまくできた」(4点)から「全くうまくできなかった」(1点)までの4段階で評定を求めた。次に②「教訓帰納」を促す際に留意したことについて,③個別の学習支援と比べ,集団の学習支援で「教訓帰納」を促す際には特に留意する必要があると感じたこと,困難だと感じたことについて,自由記述で回答を求めた。「にこにこサマースクール」に参加した子どもへの成果に関する質問は,①授業を行った算数,理科のそれぞれについての興味・理解の程度について(各2問,計4問。)と②「教訓帰納」の修得についての質問(1項目)に対して,「非常にそう思う」(4点)から「全くそう思わない」(1点)の4段階で評定を求めた。
結果と考察
「教訓帰納」を子どもに促す力量(個別,集団のそれぞれ)と,子どもへの成果(算数,理科,教訓帰納のそれぞれ)に関する大学生の認知について,平均および標準偏差を算出した。「教訓帰納」を促す力量について,個別に対しての力量の認知(M=2.75, SD=.46)と集団に対しての認知(M=1.86, SD=.64)について,対応のあるt検定を行ったところ,個別に対しての力量認知が集団に対してのそれと比べ有意に高かった(t(7)=6.93, p<.001)。
子どもに「教訓帰納」を促す力量の評価と,その際の留意点や難しかったこと等の自由記述を分析したところ,個別に「教訓帰納」を促す力量については6名が「ややうまくできる」と回答しており,その際の留意点としては「間違いに自分で気付かせ,その間違いについて書かせる」「どんなことが分かったことを振り返らせて,それを書かせる」など,市川(1993)の「教訓帰納」の定義と合致する内容が挙がっていた。一方で,集団に「教訓帰納」を促す力量について,「ややうまくできた」と回答した者は1名,これに対して「あまりうまくできなかった」(4名),「全くうまくできなかった」(2名)が多かった。集団では,一人一人の理解度や間違いの原因等の違いへの対処が困難であることが読み取れる。学習方略として教訓帰納を学ばせるという視点もふまえながら,集団に対する学習支援について,さらに検討が必要であろう。
方 法
調査対象者 平成25年度に実施した集団(小学5年生9名)を対象とした学習支援である,にこにこサマースクールに参加した大学生に調査を実施した。大学生は計8名(男性1名,女性7名)から回答を得た。彼らを対象にサマースクール実施後に,質問紙による調査を実施した。
調査内容 ①a)個別の学習支援と,b)集団での学習支援における「教訓帰納」を子どもに促す力量・留意点等に関する質問と,②「にこにこサマースクール」に参加した子どもへの成果に関する質問から成っていた。
個別の学習支援における「教訓帰納」促進に関する力量については,①その支援がどの程度実施できるかについて,「かなりうまくできる」(4点)から「全くうまくできない」(1点)までの4段階で評定を求めた。また②「教訓帰納」を促す際に留意していることについて自由記述で回答を求めた。集団の学習支援における「教訓帰納」促進に関する力量については,①その支援がどの程度実施できるかについて,「かなりうまくできた」(4点)から「全くうまくできなかった」(1点)までの4段階で評定を求めた。次に②「教訓帰納」を促す際に留意したことについて,③個別の学習支援と比べ,集団の学習支援で「教訓帰納」を促す際には特に留意する必要があると感じたこと,困難だと感じたことについて,自由記述で回答を求めた。「にこにこサマースクール」に参加した子どもへの成果に関する質問は,①授業を行った算数,理科のそれぞれについての興味・理解の程度について(各2問,計4問。)と②「教訓帰納」の修得についての質問(1項目)に対して,「非常にそう思う」(4点)から「全くそう思わない」(1点)の4段階で評定を求めた。
結果と考察
「教訓帰納」を子どもに促す力量(個別,集団のそれぞれ)と,子どもへの成果(算数,理科,教訓帰納のそれぞれ)に関する大学生の認知について,平均および標準偏差を算出した。「教訓帰納」を促す力量について,個別に対しての力量の認知(M=2.75, SD=.46)と集団に対しての認知(M=1.86, SD=.64)について,対応のあるt検定を行ったところ,個別に対しての力量認知が集団に対してのそれと比べ有意に高かった(t(7)=6.93, p<.001)。
子どもに「教訓帰納」を促す力量の評価と,その際の留意点や難しかったこと等の自由記述を分析したところ,個別に「教訓帰納」を促す力量については6名が「ややうまくできる」と回答しており,その際の留意点としては「間違いに自分で気付かせ,その間違いについて書かせる」「どんなことが分かったことを振り返らせて,それを書かせる」など,市川(1993)の「教訓帰納」の定義と合致する内容が挙がっていた。一方で,集団に「教訓帰納」を促す力量について,「ややうまくできた」と回答した者は1名,これに対して「あまりうまくできなかった」(4名),「全くうまくできなかった」(2名)が多かった。集団では,一人一人の理解度や間違いの原因等の違いへの対処が困難であることが読み取れる。学習方略として教訓帰納を学ばせるという視点もふまえながら,集団に対する学習支援について,さらに検討が必要であろう。