[PH086] 大学生の経験する発達障害に類似した困難への有効な支援方法の検討
被援助志向性の観点からの一考察
Keywords:大学生, 発達障害, 被援助志向性
研究の目的
高等教育機関が組織として把握している発達障害のある学生および支援を受けている学生の数は,非常に少ない(日本学生支援機構, 2013)。その一方,支援の必要性がありながら,支援に結びついていない学生が多く在籍すると考えられている(山本・高橋, 2009)。そこで,本研究では,発達障害に類する大学生活上の困難を抱える学生を対象とした二つの調査を実施し,大学生活での具体的な困難や,それに対する支援ニーズや対処プロセス,そして,学生が求めている具体的な支援方法について検討する。
研究I:発達障害に類似した困難を経験する学生への支援ニーズと他者に望むサポート形態の検討
方 法 調査対象者:首都圏の4年生私立大学に在籍する大学1年生から4年生までの学生128名(平均年齢 18.68±0.90歳,男性46名,女性82名)
調査材料:(1)フェースシート,(2)自己困難認知尺度(佐藤・相澤・郷間, 2012),(3)状態被援助志向性尺度(田村・石隈, 2006),(4)日本語版GHQ精神健康調査票12項目版(GHQ-12)(土井・尾方, 2000)
結果と考察 自己困難認知尺度の因子構造: 因子分析の結果,自己困難認知尺度は,『ADHD(注意欠陥多動性障害)傾向』,『ASD(自閉症スペクトラム)傾向』,『読字困難傾向』,『情緒不安定』の4因子構造であると判断した。
発達障害に類似した困難と精神健康度の関連:GHQ-12との関連についてみると,『情緒不安定』(r=.658, p<.01)および『ADHD傾向』(r=.297, p<.01),『ASD傾向』(r=.315, p<.01)との間で有意な相関がみられた。一方,『読字困難傾向』に関しては,有意な相関はみられなかったが,当該の困難を特に多く経験する群とそうではない群をt検定により比較すると,両群間で有意差が見られた(t(126)=2.109, p<.05)。
発達障害に類似した困難と被援助志向性の関連:『ASD傾向』は「一緒に対処してくれる人が欲しい」(r=.237, p<.01),『読字困難傾向』は「一緒に対処してくれる人が欲しい」(r=.197, p<.05)と「他者からの励ましが欲しい」(r=.184, p<.05),『情緒不安定』は「誰かに話を聞いて欲しい」(r=.268, p<.01)と「適切な他者からの助言が欲しい」(r=.227, p<.01),「一緒に対処してくれる人が欲しい」,「対処の仕方について,他者からのきちんとした評価が欲しい」(r=.242, p<.01)との間で関連がみられ,『ADHD傾向』に関しては,どの形態のサポート希求とも関連がみられなかった。
研究II:大学生の経験する発達障害に類似した困難への対処方法及び必要とされる支援方法の検討
方 法 調査対象者及び手続き:大学生8名(平均年齢19.00±0.71歳)に対して,半構造化面接調査を実施した。分析方法:逐語データを,修正版グラウンデッドセオリーアプローチ(M-GTA)(木下, 2007)を用いて分析した。
結果と考察 大学生が経験する具体的な困難や困難への対処方法,学生が他者に望むサポート,環境等に対する改善希望,援助要請を阻害する要因に関して,計110個の概念,37個のカテゴリー,13個のコアカテゴリーが生成された。本研究で挙げられた対処方法は,同様の困難を経験する学生を支援する際にモデルとして利用できる可能性がある。しかし,まずは困難を軽減する,または,当該の困難を抱える学生を支援につなげることを目的とした合理的な範囲での支援環境の改善を図っていく必要があるのではないかと考えられた。
高等教育機関が組織として把握している発達障害のある学生および支援を受けている学生の数は,非常に少ない(日本学生支援機構, 2013)。その一方,支援の必要性がありながら,支援に結びついていない学生が多く在籍すると考えられている(山本・高橋, 2009)。そこで,本研究では,発達障害に類する大学生活上の困難を抱える学生を対象とした二つの調査を実施し,大学生活での具体的な困難や,それに対する支援ニーズや対処プロセス,そして,学生が求めている具体的な支援方法について検討する。
研究I:発達障害に類似した困難を経験する学生への支援ニーズと他者に望むサポート形態の検討
方 法 調査対象者:首都圏の4年生私立大学に在籍する大学1年生から4年生までの学生128名(平均年齢 18.68±0.90歳,男性46名,女性82名)
調査材料:(1)フェースシート,(2)自己困難認知尺度(佐藤・相澤・郷間, 2012),(3)状態被援助志向性尺度(田村・石隈, 2006),(4)日本語版GHQ精神健康調査票12項目版(GHQ-12)(土井・尾方, 2000)
結果と考察 自己困難認知尺度の因子構造: 因子分析の結果,自己困難認知尺度は,『ADHD(注意欠陥多動性障害)傾向』,『ASD(自閉症スペクトラム)傾向』,『読字困難傾向』,『情緒不安定』の4因子構造であると判断した。
発達障害に類似した困難と精神健康度の関連:GHQ-12との関連についてみると,『情緒不安定』(r=.658, p<.01)および『ADHD傾向』(r=.297, p<.01),『ASD傾向』(r=.315, p<.01)との間で有意な相関がみられた。一方,『読字困難傾向』に関しては,有意な相関はみられなかったが,当該の困難を特に多く経験する群とそうではない群をt検定により比較すると,両群間で有意差が見られた(t(126)=2.109, p<.05)。
発達障害に類似した困難と被援助志向性の関連:『ASD傾向』は「一緒に対処してくれる人が欲しい」(r=.237, p<.01),『読字困難傾向』は「一緒に対処してくれる人が欲しい」(r=.197, p<.05)と「他者からの励ましが欲しい」(r=.184, p<.05),『情緒不安定』は「誰かに話を聞いて欲しい」(r=.268, p<.01)と「適切な他者からの助言が欲しい」(r=.227, p<.01),「一緒に対処してくれる人が欲しい」,「対処の仕方について,他者からのきちんとした評価が欲しい」(r=.242, p<.01)との間で関連がみられ,『ADHD傾向』に関しては,どの形態のサポート希求とも関連がみられなかった。
研究II:大学生の経験する発達障害に類似した困難への対処方法及び必要とされる支援方法の検討
方 法 調査対象者及び手続き:大学生8名(平均年齢19.00±0.71歳)に対して,半構造化面接調査を実施した。分析方法:逐語データを,修正版グラウンデッドセオリーアプローチ(M-GTA)(木下, 2007)を用いて分析した。
結果と考察 大学生が経験する具体的な困難や困難への対処方法,学生が他者に望むサポート,環境等に対する改善希望,援助要請を阻害する要因に関して,計110個の概念,37個のカテゴリー,13個のコアカテゴリーが生成された。本研究で挙げられた対処方法は,同様の困難を経験する学生を支援する際にモデルとして利用できる可能性がある。しかし,まずは困難を軽減する,または,当該の困難を抱える学生を支援につなげることを目的とした合理的な範囲での支援環境の改善を図っていく必要があるのではないかと考えられた。