[PA002] 中学生の登校状況によるレジリエンスの違い
Keywords:レジリエンス, 登校状況
目的
レジリエンスは,ストレスフルな状況に直面しても,個人が環境にうまく適応する能力,過程,結果のことを指し(Masten, Best & Garmezy, 1990),予防的支援に重要な概念として注目されている。学校教育段階にある中学生においても,レジリエンスが高ければ精神的健康が比較的高いことが知られており(石毛・無藤,2005),レジリエンスは学校臨床的課題への予防的支援に有効な概念であると予測される。しかし,具体的な学校臨床的課題の一つである不登校については,レジリエンスとの関連性が指摘されながら(石毛・無藤,2006),その実証的検討は少ない。そこで,本研究では,中学生の登校状況とレジリエンスとの関連を検討することとした。
方法
【対象者】6つの公立中学校,1~2年生,1,392名(男子725名, 女子667名)。
【調査内容】登校状況:各学校の調査協力者である教師により,年間の欠席・遅刻・早退回数が報告された。レジリエンス:石毛・無藤(2006)を用いた。「意欲的活動性」「内面共有性」「楽観性」の計19項目。4件法。
【調査時期と手続】2013年11月に,各学級で学級担任が一斉に実施し,その場で回収された。なお,登校状況については,2013年4月~2014年2月末分が報告された。
結果
⑴ 登校状況について
まず,対象者のうち,年間を通じて欠席・遅刻・早退回数が0であった者を皆勤群とした。また,遅刻・早退回数に関わらず,年間の欠席回数が30日を超える者を不登校群とした。その他の生徒については,全対象者の欠席(M=2.38)回数ならびに遅刻と早退の合計(M=2.66)回数の平均値を基準として高低群分けし,その組み合わせから4群分けした。
その結果,皆勤群は398名(28.6%),不登校群は12名(.9%),欠席L遅刻早退L群は582名(41.8%),欠席H遅刻早退L群は209名(15.0%),欠席L遅刻早退H群は95名(6.8%),欠席H遅刻早退H群は96名(6.9%)であった。
⑵ 登校状況によるレジリエンスの違い(Table1)
以上の群分けによる登校状況によって,レジリエンスに違いがみられるかを検討するため,群分けを要因とする一要因分散分析を行った。
その結果, 意欲的活動性に有意差が認められ(F[5/1391]=4.00, p<.01),Tukey法による多重比較の結果,欠席L遅刻早退L群>欠席H遅刻早退H群であった。また,内面共有性にも有意差が認められ(F[5/1391]=5.56, p<.001),Tukey法による多重比較の結果,皆勤群・欠席L遅刻早退L群>欠席H遅刻早退H群・不登校群,ならびに欠席H遅刻早退L群>不登校群であった。
考察
不登校の状況にある者,ならびに不登校の状況に近い者(欠席が多く遅刻早退も多い者)は,ネガティブな心理状態を立て直すために他者との内面の共有を求める傾向(内面共有性)や,ねばり強く問題を解決しようとする傾向(意欲的活動性)が低いことが明らかとなった。困難状況から逃避することを求め,またその際に他者へ援助を希求できないことが,登校状況を悪化させていると考えられる。
*本研究は,平成26年度・日本教育大学協会研究助成(代表:小林朋子)を受けた。
レジリエンスは,ストレスフルな状況に直面しても,個人が環境にうまく適応する能力,過程,結果のことを指し(Masten, Best & Garmezy, 1990),予防的支援に重要な概念として注目されている。学校教育段階にある中学生においても,レジリエンスが高ければ精神的健康が比較的高いことが知られており(石毛・無藤,2005),レジリエンスは学校臨床的課題への予防的支援に有効な概念であると予測される。しかし,具体的な学校臨床的課題の一つである不登校については,レジリエンスとの関連性が指摘されながら(石毛・無藤,2006),その実証的検討は少ない。そこで,本研究では,中学生の登校状況とレジリエンスとの関連を検討することとした。
方法
【対象者】6つの公立中学校,1~2年生,1,392名(男子725名, 女子667名)。
【調査内容】登校状況:各学校の調査協力者である教師により,年間の欠席・遅刻・早退回数が報告された。レジリエンス:石毛・無藤(2006)を用いた。「意欲的活動性」「内面共有性」「楽観性」の計19項目。4件法。
【調査時期と手続】2013年11月に,各学級で学級担任が一斉に実施し,その場で回収された。なお,登校状況については,2013年4月~2014年2月末分が報告された。
結果
⑴ 登校状況について
まず,対象者のうち,年間を通じて欠席・遅刻・早退回数が0であった者を皆勤群とした。また,遅刻・早退回数に関わらず,年間の欠席回数が30日を超える者を不登校群とした。その他の生徒については,全対象者の欠席(M=2.38)回数ならびに遅刻と早退の合計(M=2.66)回数の平均値を基準として高低群分けし,その組み合わせから4群分けした。
その結果,皆勤群は398名(28.6%),不登校群は12名(.9%),欠席L遅刻早退L群は582名(41.8%),欠席H遅刻早退L群は209名(15.0%),欠席L遅刻早退H群は95名(6.8%),欠席H遅刻早退H群は96名(6.9%)であった。
⑵ 登校状況によるレジリエンスの違い(Table1)
以上の群分けによる登校状況によって,レジリエンスに違いがみられるかを検討するため,群分けを要因とする一要因分散分析を行った。
その結果, 意欲的活動性に有意差が認められ(F[5/1391]=4.00, p<.01),Tukey法による多重比較の結果,欠席L遅刻早退L群>欠席H遅刻早退H群であった。また,内面共有性にも有意差が認められ(F[5/1391]=5.56, p<.001),Tukey法による多重比較の結果,皆勤群・欠席L遅刻早退L群>欠席H遅刻早退H群・不登校群,ならびに欠席H遅刻早退L群>不登校群であった。
考察
不登校の状況にある者,ならびに不登校の状況に近い者(欠席が多く遅刻早退も多い者)は,ネガティブな心理状態を立て直すために他者との内面の共有を求める傾向(内面共有性)や,ねばり強く問題を解決しようとする傾向(意欲的活動性)が低いことが明らかとなった。困難状況から逃避することを求め,またその際に他者へ援助を希求できないことが,登校状況を悪化させていると考えられる。
*本研究は,平成26年度・日本教育大学協会研究助成(代表:小林朋子)を受けた。