日本教育心理学会第57回総会

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ポスター発表

ポスター発表 PA

2015年8月26日(水) 10:00 〜 12:00 メインホールA (2階)

[PA005] 中学生の食生活と学校における居場所感との関連について

織田栄子 (聖霊女子短期大学)

キーワード:中学生, 食生活, 居場所感

Ⅰ 目的
心身の著しい変化に伴い不安定になりやすい中学生の時期には,食生活においても変化が見られる。例えば,家族や同年代との食事を急に拒むようになったり,自分の身体への関心が強過ぎて食べる量を気にするなどが挙げられる。
この中学生の時期に,家族や同年代と食事を楽しむことや,自分の身体にあった食事をすることは,自己形成や人間関係作りに繋がると考え,心身の安定化も図るものと考える。学校でも自分らしい生活を送り,学校の自分の居場所を見つけ,楽しく過ごせる要因となるのではないかと考える。
そこで本研究では,中学生の食生活と学校の居場所感との関連を検討し,学校における食育のあり方についての知見を得ることを目的とする。
Ⅱ 方法
1 調査対象:A県内の中学校2校,計573名
2 調査時期・方法:2015年1月に,質問紙法により無記名方式で集団的に実施した。
3 調査内容:⑵~⑷は4段階評定で作成。
⑴ フェイスシート:学年,性別,家族構成
⑵ 毎日の食事に関する項目(16項目)
朝食,給食,夕食で「楽しいと感じるか」など,食事における感情について問うもの。
⑶ 身体に関する項目(8項目)
畑中(2013)の「食行動の偏り尺度」を基に,身体を気にした食事をしているか問うもの。
⑷ 学校における居場所感(14項目)
斎藤(2007)の「高校生における学校の居場所尺度」を基に,学校における自分のクラスや部活動で居場所を感じているかどうかを問うもの。
⑸ 自由記述:食事について思っていること。
Ⅲ 結果及び考察
1 学年差,性差について:χ2検定の結果,学年差は自由記述のみに現れたため,性差の結果のみ記す(χ2検定の結果は,全てdf=3,p<.001)。
⑴ 食事について:朝食では「一人で食べてさみしい」(χ2=22.576),「家族で一緒に食べたい」(χ2=18.788),夕食では「家族で一緒に食べて楽しい」(χ2=16.230),「一人で食べてさみしい」(χ2=23.287),「家族で一緒に食べたい」(χ2=27.406)の項目で,男子が女子より「全く思わない」の回答が多く,男子は家族と一緒の食事を望まず,一人でも孤独を感じない傾向が窺われた。
⑵ 身体について:全項目で性差が見られ,「太っていることが気になる」(χ2=116.011),「太っていて食べる量を減らしたい」(χ2=92.693)の項目で,男子より女子が「毎日思った」の回答が多く,「やせていて気になる」(χ2=23.239),「やせていて食べる量を増やしたい」(χ2=35.760)の項目で,男子が女子より「毎日思った」の回答が多かった。他者と比較した身体の悩みは,女子は太っていること,男子はやせていることと性差があり,そのことが食行動の違いにも現れていた。
⑶ 学校における居場所感では,「クラスで気にかけてくれる人がいる」項目のみ性差が見られた。
2 食事と学校における居場所感との関連
ほとんどの項目間で有意な相関が見られ,特に,「給食をクラスの人と食べるのは楽しい」の項目に現れた。高い順に「クラスにいる時は楽しい」(r=.560,p<.001),「協力して取り組むことができる」(r=.406,p<.001)となり,中学生は給食が楽しく感じられると,クラスも楽しく感じ,協力しようと思えるものと推測され,この点から,給食を皆で楽しく食べるための工夫を目的にした食育により,クラスでの居場所作りが期待できる。
【主な文献】
畑中麻子,大学生女子の食行動の偏りについての基礎的研究―摂食障害スクリーニングスケールの適用可能性についての検討―,関西心理学会第125回大会,2013年