[PA008] 女子大学生の学習に対する考えと日常的精神健康との関連
キーワード:女子大学生, 学習観, 日常的精神健康
問題と目的
時代の変化に伴い大学進学率が高くなっている一方,大学生の学習生活に対する意識にも変化が起こり,キャリア形成との関連性が考えられる。女性の社会での活躍への期待が高くなっている中,現学びの段階での学習に対する考え方とメンタル的側面を理解することが重要と考えられる。
本研究では,現代の女子大学生の基本的学習観がどのようになっているのかを把握し,日常的精神健康との関連も含めて検討することを目的とした。
方法
調査の時期:平成26年の7月~9月
調査の対象:福岡県内の女子大学生326名を対象に無記名形式を用いて質問紙調査を行った(有効回答293名,有効回答率90%)。平均年齢19.17(SD=1.25)歳であった。
調査の内容:①フェイスシート ②学習成績に関する考えについての自由記述法による調査 ③学習観尺度:市川(2001)と當山(2010)が作成した学習の動機づけ尺度を参考に本研究用に適切と思われる30項目を選んで構成されたものを使用し,5件法で調査を行った。 ④日常的精神健康尺度:鄭(2008)が作成した「生活充実感」「神経質傾向」「体調不良」「ストレス性」「怒り性」の5因子で構成されたものを使用し,5件法で調査を行った。
結果と考察
1.フェイスシートにて「授業時間外週間学習時間」を「全くない」から「21時間以上」と10段階で尋ねたところ,1時間以内から1時間~2時間内との答えが52.90%で半数を占め,溝上が2007年に実施した調査と類似した結果が得られた。また,28.33%の学生からは「全くしない」との答えが得られていることから3割の女子大学生は授業外の学びの少なさが示されている。「授業外時間」の学び方,効果的な過ごし方,キャリア教育との連携教育の工夫が必要であることが示された。
2.「学習成績についての考え」では,KJ法に基づいて分析を行った。有効回答者から889枚のラベルが得られ,分類した結果,「努力と関係するもの」(231枚,25.98%),「自分自身の諸側面を表すもの」(117枚,13.16%),「結果を示すもの」(96枚,10.80%)の比率が高く,ほか,「将来に係わるもの」「成績はすべてではない」「変動するもの」「評価につながるもの」などがあった。多くの女子大学生が「成績」は内的統制の努力とやり方に関係するもので変動的であると認識していることが明らかになった。しかし,外的要因として認識する場合は,少なからずネガティブなものとして考えている心理的要素もみられた。
3.次に,293名のデータを対象とし,学習観尺度について主因子法・プロマックス回転による因子分析を行い,「外発自尊」「外発報酬」「内発動機」「実用性」「関係性」「訓練性」の6つの因子が得られα=.74~.87が確認された。「日常的精神健康尺度」について鄭(2008)の先行研究同様の5つの因子構造が得られ,α=.76~.90により信頼性が確認された。次に,日常的精神健康との関連性を検討した結果,r=.217,P<.001で強い相関が見られ,関連性が示された。
さらに,因果関係を検討するため,「学習観」を目的変数とし重回帰分析を行った結果,「充実感」(β=.35,P<.001)と「神経質傾向」(β=.37,P<.001)が学習観に強く影響を与えることが明らかとなった。
時代の変化に伴い大学進学率が高くなっている一方,大学生の学習生活に対する意識にも変化が起こり,キャリア形成との関連性が考えられる。女性の社会での活躍への期待が高くなっている中,現学びの段階での学習に対する考え方とメンタル的側面を理解することが重要と考えられる。
本研究では,現代の女子大学生の基本的学習観がどのようになっているのかを把握し,日常的精神健康との関連も含めて検討することを目的とした。
方法
調査の時期:平成26年の7月~9月
調査の対象:福岡県内の女子大学生326名を対象に無記名形式を用いて質問紙調査を行った(有効回答293名,有効回答率90%)。平均年齢19.17(SD=1.25)歳であった。
調査の内容:①フェイスシート ②学習成績に関する考えについての自由記述法による調査 ③学習観尺度:市川(2001)と當山(2010)が作成した学習の動機づけ尺度を参考に本研究用に適切と思われる30項目を選んで構成されたものを使用し,5件法で調査を行った。 ④日常的精神健康尺度:鄭(2008)が作成した「生活充実感」「神経質傾向」「体調不良」「ストレス性」「怒り性」の5因子で構成されたものを使用し,5件法で調査を行った。
結果と考察
1.フェイスシートにて「授業時間外週間学習時間」を「全くない」から「21時間以上」と10段階で尋ねたところ,1時間以内から1時間~2時間内との答えが52.90%で半数を占め,溝上が2007年に実施した調査と類似した結果が得られた。また,28.33%の学生からは「全くしない」との答えが得られていることから3割の女子大学生は授業外の学びの少なさが示されている。「授業外時間」の学び方,効果的な過ごし方,キャリア教育との連携教育の工夫が必要であることが示された。
2.「学習成績についての考え」では,KJ法に基づいて分析を行った。有効回答者から889枚のラベルが得られ,分類した結果,「努力と関係するもの」(231枚,25.98%),「自分自身の諸側面を表すもの」(117枚,13.16%),「結果を示すもの」(96枚,10.80%)の比率が高く,ほか,「将来に係わるもの」「成績はすべてではない」「変動するもの」「評価につながるもの」などがあった。多くの女子大学生が「成績」は内的統制の努力とやり方に関係するもので変動的であると認識していることが明らかになった。しかし,外的要因として認識する場合は,少なからずネガティブなものとして考えている心理的要素もみられた。
3.次に,293名のデータを対象とし,学習観尺度について主因子法・プロマックス回転による因子分析を行い,「外発自尊」「外発報酬」「内発動機」「実用性」「関係性」「訓練性」の6つの因子が得られα=.74~.87が確認された。「日常的精神健康尺度」について鄭(2008)の先行研究同様の5つの因子構造が得られ,α=.76~.90により信頼性が確認された。次に,日常的精神健康との関連性を検討した結果,r=.217,P<.001で強い相関が見られ,関連性が示された。
さらに,因果関係を検討するため,「学習観」を目的変数とし重回帰分析を行った結果,「充実感」(β=.35,P<.001)と「神経質傾向」(β=.37,P<.001)が学習観に強く影響を与えることが明らかとなった。