The 57th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表

ポスター発表 PA

Wed. Aug 26, 2015 10:00 AM - 12:00 PM メインホールA (2階)

[PA011] 中学生の班活動が学級集団アイデンティティと向社会的行動に与える影響

堀井和朗1, 越良子2 (1.上越教育大学, 2.上越教育大学)

Keywords:班活動, 集団アイデンティティ

問題と目的
中学生は仲間集団の結びつきを強める反面,仲間集団外との関わりは行われにくくなる。そうした傾向は,例えば向社会的行動にも反映される。しかし,学級で生活するうえでは,仲間集団外の級友とも協力できる関係であることが重要である。
Dovidio, Gaertner, & Validzic (1998)は,共通の上位集団をもつことで,外集団だった集団が,上位集団における内集団へと再カテゴリー化されるという共通内集団アイデンティティモデル(Common In-group Identity Model)を示した。上位集団にアイデンティティ(以下ID)をもつことができれば,もとの外集団成員に対して好意的態度が生じると考えられている。つまり上位集団である学級集団にIDをもつことができれば,仲間集団外成員にも向社会的行動を行うと考えられる。
集団IDは集団内の公平さ,集団成員からの尊重・信頼を感じることによって高まることが指摘されている(Tyler & Lind, 1992)。学級で仲間以外ともこうした相互作用を経験することができれば,学級集団IDは高まるだろう。そして,そのためには仲間集団外成員と関わる枠組みとして班活動が有効だと考えられる。
本研究は,班活動が学級集団ID,仲間集団外成員への向社会的行動に与える影響について検討することを目的とした。
方法
A県,B県,C県の3校の中学1,2年生663名を対象に,1学期末(7月上旬)に質問紙への回答を求めた。質問紙は,仲間集団ID・学級集団ID尺度(各7項目),仲間集団成員・仲間集団外成員への向社会的行動尺度(各6項目),班機能測定尺度(15項目)で構成された。
結果と考察
班機能が生徒の集団ID,向社会的行動に与える影響を検討するために,共分散構造分析を行った。
分析の結果,班機能得点から学級集団IDを経由し,仲間集団外成員への向社会的行動に影響することが示された(図1)。班活動で,仲間集団外成員との肯定的な相互作用を経験することで,学級を共通の内集団として認知し,学級成員が困っていれば,仲間か否かにかかわらず協力・援助をするようになると考えられる。
また,班機能得点が仲間集団IDを経由し,学級集団IDに影響することも示された。班活動で様々な級友と関わる中で,心のよりどころとなる仲間との関係も深まったものと考えられる。
以上より,班活動において生徒が班員との間に公平さを感じ,尊重・信頼される経験をすることで,仲間集団の一員でありながら,学級集団の一員でもあることを自覚し,学級の一員が困っていれば,協力・援助的な行動をとるようになるものと考えられる。