日本教育心理学会第57回総会

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ポスター発表

ポスター発表 PA

2015年8月26日(水) 10:00 〜 12:00 メインホールA (2階)

[PA012] 新任教師の教科指導学習動機と健康状態および教職有能感の関連の検討

三和秀平1, 外山美樹2 (1.筑波大学大学院, 2.筑波大学)

キーワード:教師, 動機づけ, 教科指導

問題と目的
中央審議会(2012)では,これからの教師に求められる資質能力として“学び続ける教員像”の確立が挙げられている。近年では,教育環境の変化により,教師の学びが重要視されている。しかし,子どもが勉強する理由が様々なように,教師が学ぶ理由も多様であると考えられる。本研究では,どのような学習動機で学ぶ教師が,より適応的であるのかを検討することを目的とする。
教師の動機づけ研究では,教師の教授行動に関する自律的な動機づけは,疲労感などの不適応的な指標と負の相関が,達成感などの適応的な指標と正の相関が示されている(e.g.,Roth,Assor,Kanat-Maymon,& Kaplan,2007)。
本研究では,新任教師を対象に“教師の教科指導学習動機→授業力→教師が認知する子どもの注視・傾聴の態度→健康状態および教職有能感”の仮説モデルに従って,教師の教科指導学習動機と教師の健康状態および教職有能感との関連を検討する。分析にあたっては,全ての教科を担当する小学校教師と,専門科目を担当する中学校および高等学校教師(以下,中高教師)の違いに関しても検討する。
方法
時期・調査協力者 2014年6月に関東地方で実施された初任者研修に参加した教師245名(小学校教師143名,中高教師100名)であった。
手続き 初任者研修の開始前に質問紙を配布し,空き時間を利用して回答を求めた。
調査内容 教科指導学習動機尺度(三和,2015),授業力自己診断シート(東京都教職員研修センター,2005)。授業における積極的授業参加行動のうち注視・傾聴(布施・小平・安藤,2006)。教職に対する自己評価のうち教職有能感(山内・小林,2000)。GHQ28のうち,“社会的活動障害”,“不安・不眠”,“身体的症状”(中川・大坊,1985)。全て4件法で回答を求めた。
結果
仮説モデルに従って多母集団同時分析を行った。その際,10%水準で有意となったパスと共分散以外に等値制約を置いたモデルを採用した(Figure1)。
その結果,小学校教師および中高教師ともに“内発的動機づけ”,“子ども志向”が,中高教師のみにおいて“熟達志向”が,授業力と注視・傾聴を媒介して健康状態や教職有能感と関連していた。また,“内発的動機づけ”は直接的にも健康状態や教職有能感と関連していた。このことから,教師の学びにおいて,教科指導に関して興味や関心を持って学ぶこと,子どものためを思って学ぶことが有効であることが明らかになった。さらに,中高教師は専門性が高い内容を教えるため,教師自身の知識獲得やレベルアップを目標に学ぶことが重要であることが考えられる。
一方で,“承認・比較志向”は社会的活動障害と正の関連がみられた。また,中高教師のみにおいて“義務感”と社会的活動障害が負の関連がみられた。さらに,“無動機づけ”は,注視・傾聴と負の関連がみられた。