日本教育心理学会第57回総会

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ポスター発表

ポスター発表 PA

2015年8月26日(水) 10:00 〜 12:00 メインホールA (2階)

[PA017] 小学1年生のかなの読み書き発達における認知的規定因

井上知洋1, 室谷直子2, 大城貴子#3, 今中博章4, 北村博幸#5, 前川久男6 (1.聖学院大学, 2.常磐短期大学, 3.沖縄中部療育医療センター, 4.福山市立大学, 5.北海道教育大学函館校, 6.いわき短期大学)

キーワード:かな文字, 読み書き発達, 認知的規定因

目 的
読み書き発達のプロセスは,個別言語における文字と音の対応関係の一貫性(以下,一貫性)によって異なる様相を呈することが,主にアルファベット語間の比較研究から明らかとなっている。本研究では,日本語を母語とする小学1年生の児童を対象に,かなの読み書き発達における認知的規定因を検討した。日本語のかなは,一貫性が比較的高いことで知られる。このような特徴が読み書き発達の規定因に及ぼす影響について,アルファベット語での先行研究(Georgiou et al., 2008)との比較を通して明らかにすることを目的とした。
方 法
調査参加者 小学1年生169名(女児83名,男児86名;調査開始時の平均月齢80.1ヶ月)。
調査時期 第1時点(2014年5,6月)と第2時点(同年11,12月)の2時点。
調査内容 以下の1. と2. の課題を統制変数,3. から6. の課題を説明変数,7. から9. の課題を目標変数として実施した。1. 積木模様,2. 単語:それぞれWISC-IVを使用。3. 音韻削除:単語または非単語から指定された音を除いた残りを答える。4. 数唱:WISC-IVの順唱。5. 呼称速度(数字):配列された数字をできるだけ速く命名する。6. 長音表記判断:長音を含む単語の表記の正誤を判断する。7. 非単語解読:非単語をできるだけ正確に読む。8. 単語認識:単語をできるだけ速く読む。9. 書字:単音または単語を聴写する。なお,第1時点には1. から9. の課題を,第2時点には7. から9. の課題のみを実施した。
結 果
読み書き課題のそれぞれを目標変数とするパス解析を行った(図1)。その結果,非単語解読のモデルでは音韻削除と長音表記判断から第1時点へのパスが,単語認識のモデルでは音韻削除,呼称速度,長音表記判断から第1時点へのパスが,書字のモデルでは音韻削除,呼称速度,長音表記判断から第1時点へのパスが,また音韻削除と呼称速度から第2時点へのパスが有意であった。

考 察
今回の規定因のパターンは文字と音の対応関係の一貫性が極めて低い英語の結果(Georgiou et al., 2008)に類似した。本研究の参加者における読み書き課題の得点の分散が主に特殊音の項目によるものであったことを考慮すると,特殊音を含むかなの読み書き発達の認知的規定因は,一貫性が低い言語の規定因に近いものであると推測された。