日本教育心理学会第57回総会

講演情報

ポスター発表

ポスター発表 PA

2015年8月26日(水) 10:00 〜 12:00 メインホールA (2階)

[PA028] 「単位量あたりの大きさ」の文章題におけるメタ認知的気づきを促す支援(2)

つまずきのある児童への対話的支援

東原文子1, 櫻井憲子2 (1.聖徳大学, 2.聖徳大学大学院)

キーワード:算数文章題, メタ認知的気づき, 学習の転移

1.問題と目的
櫻井・東原(2015)では,「単位量あたりの大きさ」の算数文章題において,ベース問題(○mのリボンの値段から△mの値段を求める),転移問題1(2種のリボンの1mあたりの値段を比較),転移問題2(予算内で何m買えるかを計算)を実施した。そのうち,ベース問題のみ,「メタ認知的気づき」を促す教示を含むPC教材による自己学習を行った。その結果,ポストテストで全問正答でない児童が88名中30名残った。そこで,本研究では,これらの児童を対象に個別インタビューを行い,メタ認知的気づきを促す対話的支援の有効性を検討することを目的とした。
2.方法
2-1 対象
櫻井・東原(2015)で対象とした,私立小学校5年生で,PC自己学習の結果ポストテストで誤答が残った児童30名。
2-2 時期・場所
平成26年10月~12月に小学校のコンピュータ室において,休み時間を利用し,筆者2名で分担して数分間程度の個別インタビューによるフォローを行った。
2-3 手続き・分析方法
まず,ベース問題ができていなかった児童に,櫻井・東原(2015)のPC教材を介して対話を通して指導した。ベース問題はできたものの転移問題ができていなかった児童には,ベース問題と転移問題の類似点や相違点を問い,必要に応じて支援した。後者の場合,東原・櫻井(2014)の分析方法と同様,児童とのインタビューのやりとりを録画し,最初の質問後,児童が次のR1~R4のポイントで正答するまでの時間を5秒単位で測定した。
・「(ベース問題と転移問題の)同じところはどこか」と問われて,「1mあたりのリボンの値段を出すところ」ということに言及する(R1)。なお,「わり算をするところ」と答えた児童は,さらに「わり算は何をすることか」と問われて,「1mあたりの値段を出すところ」と答えた時点で正答とする。
・同様に「違うところはどこか」と問われて,相違点を正しく言う(R2)。
・正しい式を書き(R3)正しい答を出す(R4)。
3.結果及び考察
30名のうち転移問題1・2ともインタビューに参加したのは11名(転移問題1・2の順で継続実施)であり,より時間を要した6名(左)と,より短い時間で終了した5名(右)の各問の時間経過を図1に示した。これを見ると,左の群は右の群よりもR1やR2が遅いだけではなく,R2からR3への移行段階で時間を要していた。櫻井・東原(2015)の「スキーマに関するメタ認知的気づき」の支援に加え「問題間の関係に関するメタ認知的気づき」の支援の追加が有効であったが,より基礎の部分である「スキーマから立式への移行」に習熟しておくべき児童が見いだされた。
文献
東原文子・櫻井憲子(2014)教心56.櫻井憲子・東原文子(2015)教心57.