[PA031] 「学士力」に対する意識の変化
入学時と卒業時のパネル調査による比較検討
Keywords:学士力, パネル調査, 大学生
【問題および目的】
学士力とは,平成20年に中央教育審議会の答申において「各専攻分野を通じて培う学士力~学士課程共通の学習成果に関する参考指針~」において打ち出されたものである。「知識・理解」,「汎用的技能」,「態度・志向性」,「統合的な学習経験と創造的思考力」の4分野13項目に分かれている。
本研究では,この学士力に対する入学時と卒業時の意識を比較,検討し,大学生はどの程度学士力に対して関心をもって大学に入学するのか,また卒業時にどの程度身についたと感じているのかを明らかにする。なお,本研究は入学時と卒業時に同じ集団に調査しているが,無記名のパネル調査であるため,全体的な変化の傾向を明らかにすることが主たる目的である。
【方 法】
1.調査協力者:A大学に2010年度入学した大学生2,122名(男子1,328名,女子781名,不明13名)とその4年後の2014年度卒業した1,706名(男子1,083名,女子621名,不明2名)。2.調査時期:入学時は2010年4月の入学直後,卒業時は2014年3月の卒業直前。3.質問項目:中央教育審議会の答申を参考に作成した学士力自己評価尺度から12項目(「知識・理解」,「汎用的技能」,「態度・志向性」の3分野)についてたずねた。入学時は「あてはまる」「どちらともいえない」「あてはまならい」の3件法,卒業時は「とてもあてはまる」から「まったくあてはまらない」までの5件法でたずねた。入学時は「大学に進学した理由」として質問した。卒業時はそれぞれの質問項目を過去形にし,「大学4年間の学生生活を振り返って,あてはまる番号に1つ○印をつけてください」と質問した。なお,卒業時は5件法で質問しているため,3件法に変換して分析を行った。
【結果および考察】
表中で入学時に「あてはまる」と回答した者の割合が半数を超えている項目は,「問題を解決する能力を身につけたいから」,「知識や情報を利用して問題を解決する能力を身につけたいから」,など「態度・志向性」の4項目であった。全体的には「どちらともいえない」という回答が多かった。一方,卒業時ではほとんどの項目で,「あてはまる」という回答が半数を超えていた。多くの学生が学士力は身についたと自己評価し,卒業していくといえる。「自然や社会的事象について数量を用いて表現することができるようになりたいから」といった「汎用的技能」のうち,数量的スキルや情報リテラシーについては「どちらともいえない」と回答する割合が高い。この結果は調査協力者が文系学生であるということが関係している可能性がある。
以上のことから「学士力を身につけることが直接の進学理由でない」,「態度・志向性分野に対しての意欲が高い」,「卒業時には学士力が身についたと自己評価する学生が多い」という点を指摘することができる。この傾向は杉山・二宮(2013)が2009年入学/2013年卒業のコホートで調査した結果と同様であった。したがって,この傾向はA大学学生の一般的傾向であるといえる。
今後は在籍する学科による違い,さらに別のコホートでの検討も必要となろう。
学士力とは,平成20年に中央教育審議会の答申において「各専攻分野を通じて培う学士力~学士課程共通の学習成果に関する参考指針~」において打ち出されたものである。「知識・理解」,「汎用的技能」,「態度・志向性」,「統合的な学習経験と創造的思考力」の4分野13項目に分かれている。
本研究では,この学士力に対する入学時と卒業時の意識を比較,検討し,大学生はどの程度学士力に対して関心をもって大学に入学するのか,また卒業時にどの程度身についたと感じているのかを明らかにする。なお,本研究は入学時と卒業時に同じ集団に調査しているが,無記名のパネル調査であるため,全体的な変化の傾向を明らかにすることが主たる目的である。
【方 法】
1.調査協力者:A大学に2010年度入学した大学生2,122名(男子1,328名,女子781名,不明13名)とその4年後の2014年度卒業した1,706名(男子1,083名,女子621名,不明2名)。2.調査時期:入学時は2010年4月の入学直後,卒業時は2014年3月の卒業直前。3.質問項目:中央教育審議会の答申を参考に作成した学士力自己評価尺度から12項目(「知識・理解」,「汎用的技能」,「態度・志向性」の3分野)についてたずねた。入学時は「あてはまる」「どちらともいえない」「あてはまならい」の3件法,卒業時は「とてもあてはまる」から「まったくあてはまらない」までの5件法でたずねた。入学時は「大学に進学した理由」として質問した。卒業時はそれぞれの質問項目を過去形にし,「大学4年間の学生生活を振り返って,あてはまる番号に1つ○印をつけてください」と質問した。なお,卒業時は5件法で質問しているため,3件法に変換して分析を行った。
【結果および考察】
表中で入学時に「あてはまる」と回答した者の割合が半数を超えている項目は,「問題を解決する能力を身につけたいから」,「知識や情報を利用して問題を解決する能力を身につけたいから」,など「態度・志向性」の4項目であった。全体的には「どちらともいえない」という回答が多かった。一方,卒業時ではほとんどの項目で,「あてはまる」という回答が半数を超えていた。多くの学生が学士力は身についたと自己評価し,卒業していくといえる。「自然や社会的事象について数量を用いて表現することができるようになりたいから」といった「汎用的技能」のうち,数量的スキルや情報リテラシーについては「どちらともいえない」と回答する割合が高い。この結果は調査協力者が文系学生であるということが関係している可能性がある。
以上のことから「学士力を身につけることが直接の進学理由でない」,「態度・志向性分野に対しての意欲が高い」,「卒業時には学士力が身についたと自己評価する学生が多い」という点を指摘することができる。この傾向は杉山・二宮(2013)が2009年入学/2013年卒業のコホートで調査した結果と同様であった。したがって,この傾向はA大学学生の一般的傾向であるといえる。
今後は在籍する学科による違い,さらに別のコホートでの検討も必要となろう。