[PA033] 書くことによる言語的説得が自己効力感に及ぼす効果
グループ活動を活用して
Keywords:自己効力感, 言語的説得, メタ認知
目 的
先行研究では,学校生活に適応できて満足感を得るためには,自己効力感やコンピテンスが必要であると論じられている。Banduraのいう自己効力感の4つの情報源のうち,言語的説得を遂行行動の達成や代理的経験に補助的に付加させることで,セルフ・エフィカシーを上げたり下げたりでき(坂野,2008),グループで活動することでセルフ・エフィカシーを強化させることに役立つ(岡,2002)
と論じている。そこで,筆者は言語的説得の効果に着目する。しかし,言語的説得や文章による指導の効果を実証した先行研究は少なく,ロールレタリング(春口,1995)や認知的アプローチによる文書指導(根建,田上,1994)が,文字表現による思考の明確化,文書による認知の変容の効果を指摘するにとどまっている。したがって本研究の目的は,言語的説得の効果に着目し,グループ活動後の振り返り時に書くことによる言語的説得を行うことで,自己効力感が高まり,コンピテンスや学校生活の満足度に影響を及ぼすことを明らかにすることである。
方 法
調査対象 A県の公立中学校3年生2クラス50名
尺度 ①中学生自己効力感尺度 筆者が作成したもので,3因子を想定し,24項目,5件法で回答を求めた。②児童用コンピテンス尺度 桜井(1992)が作成した尺度で,「学習コンピテンス」「運動コンピテンス」「社会コンピテンス」「自己価値」の4因子からなり,20項目,5件法で回答を求めた。③学校生活に対する意識の尺度 久世・二宮(1990)が作成した尺度で(1)学校適応-脱学校,(2)仲間志向-孤立傾向の2尺度からなり,そのうち18項目を使用し5件法で回答を求めた。
内容 調査期間は4月から10月までで,Aクラスを言語的説得を行わない群,Bクラスを言語的説得を行う群とした。
言語的説得を行う前の4月と行った後の10月にA,Bクラスとも質問紙調査を実施した。4月から10月に毎月1回A,Bクラスともグループ活動を実施し,Bクラスのみ振り返り時に書くことによる言語的説得を行った。具体的にはグループ活動を振り返って「自分への手紙」を書き,それに対して学級担任が「教師からの手紙」という形式でコメントを書くという方法である。
結果・考察
尺度構成
「中学生自己効力感尺度」は主因子法でプロマックス回転を行った。共通性の低かった項目,十分な因子負荷量を示さなかった項目の10項目を除外してさらに因子分析した結果,3因子を抽出した。それぞれの質問項目の内容を検討して,第1因子を「努力克服」,第2因子を「失敗の不安のなさ」第3因子を「積極的行動」と命名した。「児童用コンピテンス尺度」の信頼性分析を行った結果,「学習コンピテンス」α=.65,「運動コンピテンス」α=.80,「社会コンピテンス」α=.81,「自己価値」α=.77と内的整合性は十分な値が得られた。「学校生活に対する意識の尺度」のうち(1)学校適応-脱学校の尺度9項目を使用した。信頼性分析を行った結果,α=.83と内的整合性は十分な値が得られた。
書くことによる言語的説得の自己効力感への効果
書くことによる言語的説得の実施前後に,「中学生自己効力感」の得点に上昇があったかを検討するために,その平均得点について4月と10月とを比較する対応のあるt検定を行った。結果は書くことによる言語的説得を行った群は,「積極的行動」因子では5%水準で有意な差があり,10月のほうが高いことが示された。しかし,「努力克服」「失敗の不安のなさ」は有意な差が見られなかった。「中学生自己効力感」では10%水準で有意な差の傾向があり,10月のほうが高いことが示された(Table 1)。「学校生活に対する意識の尺度」の4月と10月とを対応のあるt検定を行った結果,言語的説得を行った群は,5%水準で有意であり,10月に学校生活の満足度が高かったという結果になった。書くことによる言語的説得の効果が支持された。
先行研究では,学校生活に適応できて満足感を得るためには,自己効力感やコンピテンスが必要であると論じられている。Banduraのいう自己効力感の4つの情報源のうち,言語的説得を遂行行動の達成や代理的経験に補助的に付加させることで,セルフ・エフィカシーを上げたり下げたりでき(坂野,2008),グループで活動することでセルフ・エフィカシーを強化させることに役立つ(岡,2002)
と論じている。そこで,筆者は言語的説得の効果に着目する。しかし,言語的説得や文章による指導の効果を実証した先行研究は少なく,ロールレタリング(春口,1995)や認知的アプローチによる文書指導(根建,田上,1994)が,文字表現による思考の明確化,文書による認知の変容の効果を指摘するにとどまっている。したがって本研究の目的は,言語的説得の効果に着目し,グループ活動後の振り返り時に書くことによる言語的説得を行うことで,自己効力感が高まり,コンピテンスや学校生活の満足度に影響を及ぼすことを明らかにすることである。
方 法
調査対象 A県の公立中学校3年生2クラス50名
尺度 ①中学生自己効力感尺度 筆者が作成したもので,3因子を想定し,24項目,5件法で回答を求めた。②児童用コンピテンス尺度 桜井(1992)が作成した尺度で,「学習コンピテンス」「運動コンピテンス」「社会コンピテンス」「自己価値」の4因子からなり,20項目,5件法で回答を求めた。③学校生活に対する意識の尺度 久世・二宮(1990)が作成した尺度で(1)学校適応-脱学校,(2)仲間志向-孤立傾向の2尺度からなり,そのうち18項目を使用し5件法で回答を求めた。
内容 調査期間は4月から10月までで,Aクラスを言語的説得を行わない群,Bクラスを言語的説得を行う群とした。
言語的説得を行う前の4月と行った後の10月にA,Bクラスとも質問紙調査を実施した。4月から10月に毎月1回A,Bクラスともグループ活動を実施し,Bクラスのみ振り返り時に書くことによる言語的説得を行った。具体的にはグループ活動を振り返って「自分への手紙」を書き,それに対して学級担任が「教師からの手紙」という形式でコメントを書くという方法である。
結果・考察
尺度構成
「中学生自己効力感尺度」は主因子法でプロマックス回転を行った。共通性の低かった項目,十分な因子負荷量を示さなかった項目の10項目を除外してさらに因子分析した結果,3因子を抽出した。それぞれの質問項目の内容を検討して,第1因子を「努力克服」,第2因子を「失敗の不安のなさ」第3因子を「積極的行動」と命名した。「児童用コンピテンス尺度」の信頼性分析を行った結果,「学習コンピテンス」α=.65,「運動コンピテンス」α=.80,「社会コンピテンス」α=.81,「自己価値」α=.77と内的整合性は十分な値が得られた。「学校生活に対する意識の尺度」のうち(1)学校適応-脱学校の尺度9項目を使用した。信頼性分析を行った結果,α=.83と内的整合性は十分な値が得られた。
書くことによる言語的説得の自己効力感への効果
書くことによる言語的説得の実施前後に,「中学生自己効力感」の得点に上昇があったかを検討するために,その平均得点について4月と10月とを比較する対応のあるt検定を行った。結果は書くことによる言語的説得を行った群は,「積極的行動」因子では5%水準で有意な差があり,10月のほうが高いことが示された。しかし,「努力克服」「失敗の不安のなさ」は有意な差が見られなかった。「中学生自己効力感」では10%水準で有意な差の傾向があり,10月のほうが高いことが示された(Table 1)。「学校生活に対する意識の尺度」の4月と10月とを対応のあるt検定を行った結果,言語的説得を行った群は,5%水準で有意であり,10月に学校生活の満足度が高かったという結果になった。書くことによる言語的説得の効果が支持された。