日本教育心理学会第57回総会

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ポスター発表

ポスター発表 PA

2015年8月26日(水) 10:00 〜 12:00 メインホールA (2階)

[PA049] ものづくりPBLチームワーク測定尺度の作成

竹下浩1, 奥秋清次#2, 前田晃穂#3, 千葉正伸#4, 山口裕幸#5 (1.職業能力開発総合大学校, 2.職業能力開発総合大学校, 3.職業能力開発総合大学校, 4.職業能力開発総合大学校, 5.九州大学)

キーワード:ものづくり, チームワーク, 尺度開発

近年,学習者主体の学びや即戦力型人材育成の重要性から,高等教育機関における“ものづくり”PBL(Project Based Learning)の先駆的な取り組みが行われている。教育システムの質保証や改善のためには評価手法の充実が急務だが,“ものづくり”に不可欠なチームワークを測定するための尺度はまだ存在していない。
そこで本稿は,他領域の先行研究と予備調査で得られた質的データに基づいて“ものづくり”特有のチームワークを測定する尺度を作成する。
方法
回答者 2014年4月からA大学校における開発課題(企画から製作まで専攻科を越えた集団で取り組むPBL)を学び終えた学生44名(電子情報科26名,機械科18名)に回答を依頼した。
質問紙 ⑴チームワーク 三沢・佐相・山口(2009)の看護師チームのチームワーク測定尺度(チームの志向性,チーム・リーダーシップ,チーム・プロセス3要素で構成される)をもとに学生への半構造化インタビュー(N=6)から追加項目を抽出,学生(N=7)及び指導教員2名との個別検討作業により検討・修正した。「全くそう思わない=1」から「非常にそう思う=5」の5件法で回答を求めた。
⑵PBL満足感 岡本(2012)の9項目を用いた。同様の5件法で回答を求めた。
⑶パフォーマンス指標 全グループ製作物について6項目(企画力,設計力,技術力,価値付加,表現力,授業応用)を10点満点で評価を求めた。
結果と考察
チームワーク測定尺度の構成
3要素ごとに因子分析(最小二乗法,プロマックス回転)を行った。
⑴チームの志向性 天井効果の見られた6項目を除外した。2因子解を採用し(説明率61.5%),5項目を削除した。第1因子は「作業志向性」,第2因子は「集団規範性」と命名した。対人関係は,作業へのコミットメントを要求する形で認知されていた。
⑵チーム・リーダーシップ 天井効果の見られた1項目を除外した。2因子解を採用し(説明率52.2%),3項目を削除した。第1因子は「作業遂行上の指示」,第2因子は「情報・知識の提供」と命名した。ものづくり特有の教え導くリーダーシップが見られる。
⑶チーム・プロセス 4因子解を採用し(説明率68.3%),5項目を削除した。第1因子は「支援行動」,第2因子は「フィードバック」,第3因子は「モニタリングと相互調整」,第4因子は「コミュニケーション」と命名した。これらは三沢ら(2009),Dickinson & McIntyre(1997)のモデルと一致していたが,第4因子は2項目だったため,以降の分析からは除外することとした。フィードバックは相互学習的側面を有している。
信頼性の検討
下位尺度の尺度得点(単純合計を項目数で除した得点)と信頼性係数を算出した。α係数は,「モニタリングと相互調整」(.64)以外は全て.75を超えていた。
妥当性の検討
⑴PBL満足感との関係 天井効果の見られた3項目を除外した。2因子解を採用した(説明率65.5%)。第1因子は「作業の充実感」(α=.79),第2因子は「使命感・能力発揮」と命名した(第2因子は2項目のため除外)。「集団規範性」以外の下位尺度はPBL満足感と中程度の正の相関を示した(.31-62)。
⑵パフォーマンス指標との関係
「集団規範」を除く全要素に成果指標との正の相関が見られた(.36-.62)。リーダーシップ2因子(.45-.56)とプロセス2因子(相互学習と相互調整)(.39-.46)は2つの成果指標のいずれも1%水準で有意だった。
チームワーク要素間関係の検討
チームの志向性とチーム・リーダーシップを独立変数,チーム・プロセスを従属変数とする重回帰分析を行った。結果はFigure 1に示す通りであった。
これらの結果から,ものづくり特有の尺度の必要性と,本尺度の妥当性が,ともに確認できたと考える。今後は,データ追加収集による精緻化とチームレベルの変数への集約,成果指標の追加が課題である。