日本教育心理学会第57回総会

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ポスター発表

ポスター発表 PA

2015年8月26日(水) 10:00 〜 12:00 メインホールA (2階)

[PA054] 女子大学生における死への態度と抑うつ耐性

増田公男 (金城学院大学)

キーワード:死への態度, 抑うつ耐性, 大学生

目 的
最近では,死別経験や死への意識が,人格的な成長に関係するといった報告がなされており(渡邉ら,2005など),死の肯定的な側面に焦点が当てられるようになってきた。
ここでは抑うつ耐性に着目し,研究を計画した。抑うつ的な傾向は,死を意識した際に不安や恐怖を生じさせ不適応行動をまねくことが予想される。本研究は,日頃の死に対する態度のうち「死の恐怖」の強さや重要な他者との死別経験が,抑うつ耐性を形成する可能性について検討することを目的として実施された。
方 法
調査対象-入学年度の異なる女子大学生1年生に対して,一方は入学直後(4月)に他方は1年次の終盤(1月)に質問紙調査を実施した。回収数は,221部であったが,一部未記入部分のある資料を除いた結果,4月群が102名,1月群が114名の合計216名であった。全体の平均年齢は18.5歳で,標準偏差は0.51であった。
質問紙-死を意識した経験と死別経験を発達段階別に記入させた。死別経験は,強い悲しみや不安をもたらした身内や親戚,友人・知人,ペットなどごとに回答させた。また,「抑うつに耐える尺度(以下,抑うつ耐性)」(5件法で14項目,近藤ら,2008)と「死に対する態度尺度改訂版」(5件法で27項目,隈部ら,2003)の2つの質問紙を用いた。前者には,「孤独に耐える力(以下,孤独耐性)」,「不安に向き合う力(以下,不安対向)」,「強がらずに自己開示する態度(以下,自己開示」の下位3尺度が,後者には「死の恐怖」,「死の回避」,「逃避的受容」,「接近型受容」の下位4尺度が各々あった。
結果と考察
1.死別経験について
これまでに強い悲しみや苦痛をもたらした死別経験をしたものの割合は,身内や親戚で62.0%,友人・知人で69.4%,ペットで46.3%であった。ペットの種類に関して記述のあった132件では,全発達段階を含めイヌが最も多く26.5%で,つぎにハムスターが24.2%で,金魚(14.4%),ウサギ(10.6%),ネコ(9.8%)と続いた。
2.死への態度と死別経験の抑うつ耐性への影響
死への態度のうち下位尺度である「死の恐怖」得点の高低により2群に分け,重要な身内等との死別経験の有無による2要因の分散分析を抑うつ耐性に関する全体得点,下位の3尺度について実施した。その結果,平均値をTable 1に示したように「死の恐怖」の高低の効果が「孤独耐性」で示され,高群の方が高かった(p<.01)。これは死へ恐怖が,孤独をのり越えるものなっていることを意味しているかも知れない。また,死別経験の有無の効果が「不安対向」で認められ(p<.05),死別経験により不安への耐性が形成された可能性を示唆している。
つぎに質問項目ごとの統計結果については,「誰かがそばにいないと不安」や「一人でいると不安で落ち着かなくなる(逆転項目)」等4項目で,「死への恐怖(逆転項目)」の高低による差が認められ,いずれも高い方が耐性が強かった。また,「強がらずに自分の弱さも人に見せる」や「気が滅入ることでも大切なことなら考える」等4項目で身内との死別経験による差異が示された。これらも,死別経験のある方が,耐性が強くなっていた。
また,「死の恐怖」と「死別経験」の2要因の交互作用が全体と「孤独耐性」で認められ,5つの質問項目でも認められた。全体での交互作用は,死別経験のないもので高群が高かったことによる。
3.死への意識経験と死に対する態度の関係
高校・大学時代に死を意識した経験(有:いずれかまたはいずれも-123名,無-84名)と死に対する態度の下位尺度との関係を検討したところ,「逃避型受容」において経験のないものの方が高くなっていた(有-17.6,無-19.1:p<.05)。本尺度は「苦悩からの解放」,「苦しみから逃れる」等からなり,死を意識した経験のあるものは,やや安易とも考えられる逃避という死に対する態度は低かった。