[PB011] 中学校への進学時不適応の予防に必要な能力(4)
登校状況に着目して
Keywords:中1ギャップ, 自己効力感, 学校適応
【目 的】
本研究は,中島・原田・大西(2014)により作成した,「進学時不適応を予防する能力尺度」を,原田・大西・中島(2014)および大西・中島・原田(2014)の結果に基づいて改訂し,中学進学後の適応を見据えての小学6年生時の指導において,教師が着目するとよい児童の能力を示し,その能力をアセスメントする尺度を作成することを目的とする。
【方 法】
調査協力者・調査時期:H県内の小学校6校の小学6年生361名を対象とし,小学校6年生時のX年9月と中学校(3校)に進学した中学1年生時のX+1年7月に質問紙調査を実施した(有効回答数279名)。
調査内容:⑴先行研究および教育関係者の意見に基づいて改訂を加えた,進学時不適応を予防する能力尺度(小学6年生時に実施)。(2)適応状況把握尺度。中学進学後に生徒の気になる様子として教育関係者があげる状態を中心に,中井・庄司(2006),鄭(2007),濱口•石川•三重野(2009)を参考にしつつ,53項目を作成し構成した(中学1年生時に実施)。(3)登校状況。欠席・遅刻・早退の実数を(2)の質問紙調査時に把握した。
【結果と考察】
尺度の作成:改訂を加えた「進学時不適応を予防する能力尺度」について因子分析(主因子法・プロマックス回転)を行ったところ,全15項目からなる5因子の解を得た。第1因子「自分を律する力」,第2因子「友人との信頼関係を結ぶ力」,第3因子「家族との信頼関係を結ぶ力」,第4因子「気持ちを伝える力」,第5因子「非行をしない力」である。
中学進学後の適応状況を見るための項目についても因子分析(主因子法・プロマックス回転)を行ったところ,全34項目からなる8因子の解を得た。第1因子「スマホ・ネットによる夜更かし」,第2因子「教師への信頼」,第3因子「いらいら・腹立ち」,第4因子「学業抵抗感」,第5因子「体調不良」,第6因子「無断外出・外泊」,第7因子「身だしなみ」,第8因子「対人緊張」である。
登校状況については,欠席の回数には1倍,遅刻と早退の回数には0.5倍の処理をして,合算した。欠席や遅刻などの回数が多くなるほど数値が大きくなる指標である。
影響過程の検討:小学6年生時に把握した5つの能力から,中学進学後の8つの適応状況,そして登校状況へと至る影響過程を共分散構造分析によって検討した。先行研究および要因間の相関関係を基に影響過程をモデル化し,適合度を参考に採用したものがFigure 1である。
中学1年生時の適応状況を見ると,「学業抵抗感」を起点として,「対人緊張」や「いらいら・腹立ち」「スマホ・ネットによる夜更かし」など,様々な不適応状態が促進されることが把握された。そして,「体調不良」「スマホ・ネットによる夜更かし」が強く見られるほど,欠席や遅刻・早退へとつながりやすいことが把握された。
小学6年生時の能力を見ると,「気持ちを伝える力」は対人緊張を抑制するという結果であった。「友人との信頼関係を結ぶ力」は「教師への信頼」を高め,「身だしなみ」を整えることにつながるという結果であった。「自分を律する力」は,「学業抵抗感」を抑制し,「身だしなみ」を整えることにつながるとともに,「登校状況」にも直接的に関連することが明らかとなった。「非行をしない力」は,「スマホ・ネットによる夜更かし」と「無断外出・外泊」を抑制し,「対人緊張」を高めることに関連するという結果であった。「家族との信頼関係を結ぶ力」は直接的には中学1年生時の適応状況には関連しなかったが,他の能力との相関関係から,間接的に中学生時の適応状況に関連している可能性がある。
以上の結果から,小学校段階でこれらの能力を高めることは,中学進学後の不適応を予防する効果があることが明らかとなった。
本研究は,中島・原田・大西(2014)により作成した,「進学時不適応を予防する能力尺度」を,原田・大西・中島(2014)および大西・中島・原田(2014)の結果に基づいて改訂し,中学進学後の適応を見据えての小学6年生時の指導において,教師が着目するとよい児童の能力を示し,その能力をアセスメントする尺度を作成することを目的とする。
【方 法】
調査協力者・調査時期:H県内の小学校6校の小学6年生361名を対象とし,小学校6年生時のX年9月と中学校(3校)に進学した中学1年生時のX+1年7月に質問紙調査を実施した(有効回答数279名)。
調査内容:⑴先行研究および教育関係者の意見に基づいて改訂を加えた,進学時不適応を予防する能力尺度(小学6年生時に実施)。(2)適応状況把握尺度。中学進学後に生徒の気になる様子として教育関係者があげる状態を中心に,中井・庄司(2006),鄭(2007),濱口•石川•三重野(2009)を参考にしつつ,53項目を作成し構成した(中学1年生時に実施)。(3)登校状況。欠席・遅刻・早退の実数を(2)の質問紙調査時に把握した。
【結果と考察】
尺度の作成:改訂を加えた「進学時不適応を予防する能力尺度」について因子分析(主因子法・プロマックス回転)を行ったところ,全15項目からなる5因子の解を得た。第1因子「自分を律する力」,第2因子「友人との信頼関係を結ぶ力」,第3因子「家族との信頼関係を結ぶ力」,第4因子「気持ちを伝える力」,第5因子「非行をしない力」である。
中学進学後の適応状況を見るための項目についても因子分析(主因子法・プロマックス回転)を行ったところ,全34項目からなる8因子の解を得た。第1因子「スマホ・ネットによる夜更かし」,第2因子「教師への信頼」,第3因子「いらいら・腹立ち」,第4因子「学業抵抗感」,第5因子「体調不良」,第6因子「無断外出・外泊」,第7因子「身だしなみ」,第8因子「対人緊張」である。
登校状況については,欠席の回数には1倍,遅刻と早退の回数には0.5倍の処理をして,合算した。欠席や遅刻などの回数が多くなるほど数値が大きくなる指標である。
影響過程の検討:小学6年生時に把握した5つの能力から,中学進学後の8つの適応状況,そして登校状況へと至る影響過程を共分散構造分析によって検討した。先行研究および要因間の相関関係を基に影響過程をモデル化し,適合度を参考に採用したものがFigure 1である。
中学1年生時の適応状況を見ると,「学業抵抗感」を起点として,「対人緊張」や「いらいら・腹立ち」「スマホ・ネットによる夜更かし」など,様々な不適応状態が促進されることが把握された。そして,「体調不良」「スマホ・ネットによる夜更かし」が強く見られるほど,欠席や遅刻・早退へとつながりやすいことが把握された。
小学6年生時の能力を見ると,「気持ちを伝える力」は対人緊張を抑制するという結果であった。「友人との信頼関係を結ぶ力」は「教師への信頼」を高め,「身だしなみ」を整えることにつながるという結果であった。「自分を律する力」は,「学業抵抗感」を抑制し,「身だしなみ」を整えることにつながるとともに,「登校状況」にも直接的に関連することが明らかとなった。「非行をしない力」は,「スマホ・ネットによる夜更かし」と「無断外出・外泊」を抑制し,「対人緊張」を高めることに関連するという結果であった。「家族との信頼関係を結ぶ力」は直接的には中学1年生時の適応状況には関連しなかったが,他の能力との相関関係から,間接的に中学生時の適応状況に関連している可能性がある。
以上の結果から,小学校段階でこれらの能力を高めることは,中学進学後の不適応を予防する効果があることが明らかとなった。