日本教育心理学会第57回総会

講演情報

ポスター発表

ポスター発表 PB

2015年8月26日(水) 13:30 〜 15:30 メインホールA (2階)

[PB031] 現職教員および教員志望学生の児童・生徒観および指導行動に関する研究(3)

教員経験者に関する比較検討

林龍平1, 崎濱秀行2, 藤田正3 (1.大阪教育大学, 2.阪南大学, 3.奈良教育大学)

キーワード:児童・生徒観, 学習指導行動, 小学校教員・中学校教員

【問題と目的】
研究(1)では,現職教員および教員志望学生の児童・生徒観および指導行動の様相を検討するための尺度作成を行った。研究(2)では,現職教員と教員志望学生間での児童・生徒観および指導行動の違いを検討した。その結果,現職教員は教員志望学生に比べ,学習指導観ではより児童・生徒中心的な,自己統制性ではより教師中心的な考え方を有していた。
しかしながら,本研究の現職教員は,小学校教員と中学校教員が混在していた。藤田(2000)は,小学校教員であっても,高学年担当の方がより児童の自発性や自己統制感を重視する指導意識を有していることを明らかにした。この研究結果を踏まえると,本研究における児童・生徒観ならびに学習指導行動においても,小学校教員と中学校教員との間には何らかの違いが見られると考えられる。そこで,本研究では,現職教員に焦点を当て,小学校教員と中学校教員とでは児童・生徒観や指導行動にどのような違いがみられるのかを検討した。
【方 法】
調査参加者 現職教員26名(小学校19名,中学校7名,平均年齢は,小学校40.19歳,中学校40.50 歳)であった。教員経験の平均年数は,小学校が17.05年,中学校が19.14年であった。
材 料 研究(1)で作成された,児童・生徒観尺度および学習指導行動尺度を用いた。
手続き 研究(1)の手続きと同じであった。
【結果と考察】
参加者から得られたデータについて,PASW Ver.18.0を用いて以下の事項のt検定を行った。
1)平均年齢および教員経験平均年数の比較検討
平均年齢および教員経験平均年数について比較検討を行った。その結果,t値は有意ではなかった。したがって,以下の点について検討を進める。
2)児童・生徒観の比較検討
研究(1)において確認された下位尺度の構造に基づき,児童・生徒観について,小学校教員―中学校教員間の違いを検討した。その結果,「学習指導観」および「自己統制性」因子において,小学校教員<中学校教員だったことから,本研究の参加者の場合,小学校教員の方がより児童・生徒中心の学習指導観を有していたといえる。
3)学習指導行動の比較検討
自分が教師としてどのような指導行動を重視するかについて回答を求めた。その結果,下位尺度全体として評定値に有意差が見られ,小学校教員の方がより児童・生徒中心的な学習指導行動を重視 していることが明らかになった。中でも項目4「授業では生徒が問題を解く(考える)時間を十分にとる―授業では教師の説明の時間を十分にとる」においてはt24=-3.42となり,1%水準で有意であった。
以上を踏まえると,小学校教員の方が中学校教員に比べ,児童・生徒中心的な学習指導観を持ち,かつ,学習指導行動についても児童・生徒中心的であると言える。