[PB037] 幼児の般化を促す学習時における反復検索の効果
キーワード:転移, 記憶方略, 検索
【問題と目的】
学習時に,記銘を繰り返すよりも,検索を挿入させると長期保持が促進されることが成人を中心とした研究において検証実験が成されてきた。それらの実験手続きを発展させる形で,著者らは,就学前の幼児においても検索の有用性について明らかにしてきた。
本報告では,検索が同時間記銘を繰り返すよりも,後続学習の転移を促す可能性について明らかにするべく,1週間後にターゲット学習とは異なるが,類似した学習課題を提示し,検索と記銘による長期保持,及び般化の影響について検討を行うこととする。
【方 法】
実験参加者
6歳児34名であり,半数ずつを反復記銘,反復検索条件にランダムに割り当て,すべて個別に実施した。なお,反復記銘条件は生活月齢が77.88 (言語年齢 77.35),反復検索条件は生活月齢が75.55(言語年齢79.18)であり,両群とも生活月齢,言語年齢ともに差がみられなかった。
実験計画
3×2の混合要因計画であった。第1要因は,習得群(検索/記銘)の参加者間計画であった。第2要因は,課題条件(事前条件,般化,訓練条件)の参加者内計画であった。
材料及び手続き
食物連鎖課題を用意した。大きい動物がより小さな動物を捕食するといった規則性に基づいて,陸地や海などの場面において5種類の動植物を提示し,上位4種類の動物が何を食べるかについて事前に尋ねた(事前条件)。その後,訓練段階において,事前条件とは異なる場面の食物連鎖について大きい動物がより小さな動物を捕食することについてすべての幼児に教示した。その後半数の検索群では,どの動物が何を捕食するか答えるように求め,もし回答を間違えた場合は正答を教えた。一方,記銘群では,どの植物が何を捕食するのか教示した。両群とも3回繰り返した。一週間後,再度事前条件と同じ課題を提示し(般化条件),その後,訓練条件の課題を実施した。
【結果と考察】
Fig 1に習得群及び課題条件による平均正答数の結果を示した。3×2の分散分析の結果,交互作用が有意であった(p<.05)。主な結果は,事前条件では,習得群において有意な差はみられないが,般化条件においては検索群が記銘群を上回った。また,3回訓練を実施した訓練条件においては一週間後の成績が両群で差がみられなかった。
以上の結果は,より大きな動物が小さな動物を捕食する関係について,特定の場面で得た知識については検索を挿入された場合と記銘においては一週間後の記憶保持には差を認めないものの,類似しているが別の場面においてその知識を活用せねばならない状況においては,検索群が記銘群よりも成績が高かった。
これらの結果は,学習時の反復検索が当該知識の般化を促すことを示した。今後は,遠転移課題を用意し,その効果の更なる検証を行うことが必要と考える。
学習時に,記銘を繰り返すよりも,検索を挿入させると長期保持が促進されることが成人を中心とした研究において検証実験が成されてきた。それらの実験手続きを発展させる形で,著者らは,就学前の幼児においても検索の有用性について明らかにしてきた。
本報告では,検索が同時間記銘を繰り返すよりも,後続学習の転移を促す可能性について明らかにするべく,1週間後にターゲット学習とは異なるが,類似した学習課題を提示し,検索と記銘による長期保持,及び般化の影響について検討を行うこととする。
【方 法】
実験参加者
6歳児34名であり,半数ずつを反復記銘,反復検索条件にランダムに割り当て,すべて個別に実施した。なお,反復記銘条件は生活月齢が77.88 (言語年齢 77.35),反復検索条件は生活月齢が75.55(言語年齢79.18)であり,両群とも生活月齢,言語年齢ともに差がみられなかった。
実験計画
3×2の混合要因計画であった。第1要因は,習得群(検索/記銘)の参加者間計画であった。第2要因は,課題条件(事前条件,般化,訓練条件)の参加者内計画であった。
材料及び手続き
食物連鎖課題を用意した。大きい動物がより小さな動物を捕食するといった規則性に基づいて,陸地や海などの場面において5種類の動植物を提示し,上位4種類の動物が何を食べるかについて事前に尋ねた(事前条件)。その後,訓練段階において,事前条件とは異なる場面の食物連鎖について大きい動物がより小さな動物を捕食することについてすべての幼児に教示した。その後半数の検索群では,どの動物が何を捕食するか答えるように求め,もし回答を間違えた場合は正答を教えた。一方,記銘群では,どの植物が何を捕食するのか教示した。両群とも3回繰り返した。一週間後,再度事前条件と同じ課題を提示し(般化条件),その後,訓練条件の課題を実施した。
【結果と考察】
Fig 1に習得群及び課題条件による平均正答数の結果を示した。3×2の分散分析の結果,交互作用が有意であった(p<.05)。主な結果は,事前条件では,習得群において有意な差はみられないが,般化条件においては検索群が記銘群を上回った。また,3回訓練を実施した訓練条件においては一週間後の成績が両群で差がみられなかった。
以上の結果は,より大きな動物が小さな動物を捕食する関係について,特定の場面で得た知識については検索を挿入された場合と記銘においては一週間後の記憶保持には差を認めないものの,類似しているが別の場面においてその知識を活用せねばならない状況においては,検索群が記銘群よりも成績が高かった。
これらの結果は,学習時の反復検索が当該知識の般化を促すことを示した。今後は,遠転移課題を用意し,その効果の更なる検証を行うことが必要と考える。