日本教育心理学会第57回総会

講演情報

ポスター発表

ポスター発表 PB

2015年8月26日(水) 13:30 〜 15:30 メインホールA (2階)

[PB038] 導入的概念地図法における諸要素と実験参加者の理解構造

連想課題による検討

皆川順1, 伴浩美2 (1.山陽学園短期大学, 2.長岡技術科学大学)

キーワード:概念地図法, 体制化, 連想課題

キーワード:概念地図法 体制化 連想課題
はじめに
概念地図法が教科教育のみならず幅広い領域で活用されるようになって久しい。しかしそれが何ゆえに,知識に際体制化に効果があるのか,またそれはどのような条件下でどのように生じるのか,については未解決の問題は多いと言わざるを得ない。
皆川(2009)は,Novakらの主張するような,初期の学習者向けの導入的な概念地図法を用いて学習者が概念地図のどのような要素に依存して認知構造の再構成を行っているのかを検討した。そこに於いては概念分岐とクロスリンク生成が,重回帰分析の結果,重要な要素であることが示された。
しかしながらこの種の実験は①材料とする単元内容,②学習者の概念構成化能力,③学習の進捗状況等,広範な変数の影響を受けると考えられる。
今回,皆川は,「発達心理学」授業内容自体を教材として,比較的学習が進捗していない実験参加者の場合について検討した。
方 法
実験日時 平成26年11月
実験参加者 S短期大学学生53名。
実験場所 S短期大学教室内
手続き
同年8月に1回のみ,概念を構造的に配列する方法として「効果的な学習法」の紹介として「哺乳類の分類課題」を概念地図法として実験参加者に提示した。リンクラベル,クロスリンクについては一通り紹介したのみであり,概念を階層的・体系的に学ぶことの重要性を述べた。その後,「乗り物」課題で1回,練習を行った。
実験当日は発達心理学の講義の日であり,実験は講義の中で,講義理解促進のために行われた。
教示
『これから真ん中に「発達心理学」と書かれている1枚のA4の紙を配ります。皆さんは,授業や自分の勉強で学んだ発達心理学の内容で,覚えている者を順序よく発達心理学という字から線を引いて書いてください。その時,書かれた言葉からまた別の言葉が思い浮かんだら,そこからまた線を引いて書いてください。なお,すべての言葉に思い出した順番を数字で書き添えて下さい。時間は25分です』
25分経過後回収し,参加者一人一人の連想語彙数,誤連想数,概念分岐数,階層化数,クロスリンク数とを数えた。
次に2ヶ月後の1月,発達心理学に関する知識問題9問,概念間関連問題11問を実施し,これらの関係を求めた。
結果
概念関係テスト得点を従属変数として,各変数間の関連を求めた。
まず概念関連テスト得点をもとに3群に分け群ごとに比較をしてみると連想数では上位2群に有意差が無く,上群と下群,中群と下群に有意差があった(Tukey法)。知識テスト得点は,上群と中群との間に有意差が無かった。有意差は種々の点で見られたが,予想おどおりクロスリンクは全体的に少なく,統計的に有意ではなかった。
考察
概念間関係問題に於きな差があるが,連想数やテストでの知識問題にそれほどの差が見えない。
これは実験参加者が,概念間関連を考えるよりも,与えられた課題を暗記して試験に臨んだことによるものと考えられる。
参考文献
Novak,J.D & Gowin,D.B.(1984) Learning how to Learn. Cambridge University Press
皆川順(2009)導入的概念地図法の諸要素と択一的テスト成績との関係 東京未来大学研究紀要2, pp.33-39