[PC011] 意見文の説得力を規定する要因の検討(1)
文章構造の影響
Keywords:意見文, 説得力, 混合効果モデル
問題と目的
本研究の目的は,文章構造が意見文の説得力評価に与える影響について検討することである。先行研究において,「説得的な意見文」とは,自分の主張に有利な賛成論だけを示すのではなく,自分の主張に対する反論を提示し,さらにそれに対する再反論を行っている意見文だとされてきた。それは,意見文評価に関する研究(e.g., O'Keefe, 1999; Wolfe, Britt, & Butler, 2009)のみならず,意見文産出に関する研究(e.g., Nussbaum & Kardash, 2005; 小野田,印刷中)においても同様である。
しかし,このような文章構造が意見文の説得力評価にどのような影響を与えているかというメカニズムについては十分に検討されてこなかった。そのため,反論に再反論さえしていれば説得力は高まるのか,あるいは意見文の内容(テーマ)によって影響が異なるのかなどの基礎的な問題は,十分に明らかにされていない。そこで本研究では,文章構造が説得力評価に与える影響について検討することを目的とする。
方 法
参加者 国立大学1校,私立大学2校の大学生123名(男性68名,女性55名)が参加した。各参加者は,賛成論だけの文章を読む「反論なし条件」,反論を含む文章を読む「反論条件」,反論とそれに対する再反論を含む文章を読む「再反論条件」のいずれかにランダムに割り当てられた。
ターゲット文章 Wolfe et al. (2009) で使用された35個のテーマから,予備調査を通して18個のテーマを選定して使用した。各文章は,反論なし条件では「○○だ。なぜなら…。だから○○だ」,反論条件では「○○だ。なぜなら…。たしかに△△という意見もある。それでも○○だ」,再反論条件では「○○だ。なぜなら…。たしかに△△という意見もある。しかし□□だ。だから○○だ」という構造で提示された。
評価項目 まず,18のターゲット文章の主張部分を提示し,各文章の主張に対する賛成度を4件法(1:反対だ~4:賛成だ)で求めた。次に,各文章に対して,「論理性(この意見は論理的だ)」,「一貫性(この意見には一貫性がある)」,「反論困難性(この意見に対して反論するのは困難だ)」,「公平感(この意見は公平だ)」,「興味(この意見は興味深い)」,「嫌悪感(この意見には嫌悪感をもつ)」,「説得力(この意見は説得的だ)」の7項目について,5件法(1:まったくそう思わない~5:とてもそう思う)で回答を求めた。
結果と考察
本研究では文章構造が説得力評価に与える影響について,混合効果モデル(mixed-effects model; Baayen, Davidson, & Bates, 2008)によって分析を行った。具体的には,参加者jのテーマiの文章に対する説得力得点をYijとすると,分析モデルは下記のように表すことができる。なお,文章構造の影響について検討する際には,「反論ダミー」(反論条件=1,その他の条件=0)と,「再反論ダミー」(再反論条件=1,その他の条件=0)の2つのダミー変数を用いた。
分析はR 3.1.1上で行い,lme4パッケージの関数lmer()を利用した。まず,文章構造の影響にテーマ間差があるかを検討するために,u1iとu2iの値が0であるという制約を課したモデルと,これらの値を自由推定するモデルのデータに対する当てはまりの良さを,尤度比検定によって比較した。その結果,後者のモデルの方が当てはまりが良く,文章構造の影響は文章のテーマによって異なることが示唆された。そこで,後者のモデルの下で推定を行った結果,説得力評価に対して文章構造は影響を与えないことが示された(Table 1)。
本研究の目的は,文章構造が意見文の説得力評価に与える影響について検討することである。先行研究において,「説得的な意見文」とは,自分の主張に有利な賛成論だけを示すのではなく,自分の主張に対する反論を提示し,さらにそれに対する再反論を行っている意見文だとされてきた。それは,意見文評価に関する研究(e.g., O'Keefe, 1999; Wolfe, Britt, & Butler, 2009)のみならず,意見文産出に関する研究(e.g., Nussbaum & Kardash, 2005; 小野田,印刷中)においても同様である。
しかし,このような文章構造が意見文の説得力評価にどのような影響を与えているかというメカニズムについては十分に検討されてこなかった。そのため,反論に再反論さえしていれば説得力は高まるのか,あるいは意見文の内容(テーマ)によって影響が異なるのかなどの基礎的な問題は,十分に明らかにされていない。そこで本研究では,文章構造が説得力評価に与える影響について検討することを目的とする。
方 法
参加者 国立大学1校,私立大学2校の大学生123名(男性68名,女性55名)が参加した。各参加者は,賛成論だけの文章を読む「反論なし条件」,反論を含む文章を読む「反論条件」,反論とそれに対する再反論を含む文章を読む「再反論条件」のいずれかにランダムに割り当てられた。
ターゲット文章 Wolfe et al. (2009) で使用された35個のテーマから,予備調査を通して18個のテーマを選定して使用した。各文章は,反論なし条件では「○○だ。なぜなら…。だから○○だ」,反論条件では「○○だ。なぜなら…。たしかに△△という意見もある。それでも○○だ」,再反論条件では「○○だ。なぜなら…。たしかに△△という意見もある。しかし□□だ。だから○○だ」という構造で提示された。
評価項目 まず,18のターゲット文章の主張部分を提示し,各文章の主張に対する賛成度を4件法(1:反対だ~4:賛成だ)で求めた。次に,各文章に対して,「論理性(この意見は論理的だ)」,「一貫性(この意見には一貫性がある)」,「反論困難性(この意見に対して反論するのは困難だ)」,「公平感(この意見は公平だ)」,「興味(この意見は興味深い)」,「嫌悪感(この意見には嫌悪感をもつ)」,「説得力(この意見は説得的だ)」の7項目について,5件法(1:まったくそう思わない~5:とてもそう思う)で回答を求めた。
結果と考察
本研究では文章構造が説得力評価に与える影響について,混合効果モデル(mixed-effects model; Baayen, Davidson, & Bates, 2008)によって分析を行った。具体的には,参加者jのテーマiの文章に対する説得力得点をYijとすると,分析モデルは下記のように表すことができる。なお,文章構造の影響について検討する際には,「反論ダミー」(反論条件=1,その他の条件=0)と,「再反論ダミー」(再反論条件=1,その他の条件=0)の2つのダミー変数を用いた。
分析はR 3.1.1上で行い,lme4パッケージの関数lmer()を利用した。まず,文章構造の影響にテーマ間差があるかを検討するために,u1iとu2iの値が0であるという制約を課したモデルと,これらの値を自由推定するモデルのデータに対する当てはまりの良さを,尤度比検定によって比較した。その結果,後者のモデルの方が当てはまりが良く,文章構造の影響は文章のテーマによって異なることが示唆された。そこで,後者のモデルの下で推定を行った結果,説得力評価に対して文章構造は影響を与えないことが示された(Table 1)。