The 57th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表

ポスター発表 PC

Wed. Aug 26, 2015 4:00 PM - 6:00 PM メインホールA (2階)

[PC030] 世代間交流による患児への遊び・学びプログラムの実践的研究

学びプログラムの作成と課題

山田理惠子 (芦屋学園短期大学)

Keywords:患児, ボランティア, 学びのプログラム

はじめに
本報告は平成23年度科研研究「世代間交流による患児の遊び・学び支援プログラムの実践的研究」(課題番号23531319)の成果の一部である。
研究分担者として,また,同じく協力者のボランティアとともに,さらには,授業を通して学生とともに,直接また,間接的にボランティア活動を実践してきた。
それは遊び・学び支援プログラムの考案から実践にいたるまで参加するなかで,年齢に合った絵本や折り紙・紙芝居・パネルシアターの紹介をはじめ,これらの児童文化財の制作や学びのドリル作成にも関わることであった。
本報告ではこのなかの学びのプログラムについて取り上げるものである。
1.本研究の目的
患児は一時的または長期にわたる入院のため,学校生活や友だち関係,そして家庭・家族からも切り離されることになる。学校での学習や友人たちとの関わり,遊びの機会を失われた患児に,少しでもそれに近い時間を提供することがボランティアの役割の1つと考えられる。
身体のケアと同時に,不安やあせり,無力感などの緩和などの精神面のサポートも当然必要となる。遊び・学びプログラムはその点,有効な手段で効果的であると思われる。
その際,学びのプログラムは患児の状況に応じて慎重に実施し,治療の妨げや余計なストレスになってはいけないことは言うまでもない。
これらのプログラムは,ボランティアと患児にとってのコミュニケーションの手段としての取り組みと言えよう。
2.学びのプログラムの作成過程
作成にあたり,目的や内容について,大まかな説明はしたが,ボランティアには先生というより,保護者の視点から,計画立案に臨み,進めていくよう促した。
対象は就学前後で,4~7・8歳位としたが,
これは,学習や学力の基礎能力3R'sを身につける時期とされているからである。
親の思いはまず,患児の治癒であり,その間も痛みや苦しみが少なく,できれば子どもらしい生活を送らせたいことであろう。自分の子も本来なら学校生活を送り,さまざまな学びのなかで成長しているはずという思いである。
ボランティアの役割は親・教師・友だち・きょうだいの代わりに,患児に寄り添い,学びのプログラムを通して,患児の成長を図るという視点に立つことを共通認識とした。
しかし,ボランティア間に,「学び」の定義,とらえ方に差があり,その時点で大きく2つに分かれてしまったが,方向をしぼる際も,あえてボランティアに任せた。
結果的にプログラムの対となっている「遊び」とは異なるものとすべきという意見が支持された。
しかし,対象が4~7・8歳の患児ということから,「学び」のなかに遊びの要素が入ったもので,楽しく遊びの感覚で進める必要があるのではないかという意見も同じ位,説得力があり,このことも反映させることとした。
3.学びのプログラムの構成
かず・ことば・せいかつの三分野から成っているが,これは小学校の教科と必ずしも対応していない。問題プリントにはそこで必要とされる能力たとえば,ひらがなが読めるかどうかというような設定がなされている。
能力の獲得も目的ではあるが,どのような能力があり,また,何が欠けているか,不十分なのかもチェックできるものである。
問題プリントに必要とされる能力は就学前に獲得しておくのが望ましい能力と言い換えてもよい。
4.学びのプログラムの課題
学びのプログラム実施後のアンケート調査によると,実施にあたり保育士か看護師が付き添う必要があり,時間的に困難で負担がかかるという意見が大半であった。保護者も可能であるが,原則,ボランティアが実施するのが望ましいと言える。また,ドリルの一部は遊びがあり,患児たちでゲームのように楽しめたとの感想も得た。ドリルはカラ-にこだわらず,白黒でも患児が色をつけることでそれ自体楽しめるので,ウォーミングアップによいとか,もっと患児が楽しめるような絵・デザインが望ましいなどであった。また,1日ドリルは何枚程度などのように,実施に際しての注意事項や方法の説明も求められ,さらに改善に努めているところである。
参考文献
栗山昭子・山田理惠子:世代間交流による患児への遊び・学びプログラムの実践的研究―支援ボランティアと医療関係者との連携―,日本世代間交流学会誌,2013