[PC041] キャリアレジリエンスとリアリティショック経験の関係
入社1年目の正社員を対象として
Keywords:キャリアレジリエンス, リアリティショック, 入社1年目
問題と目的
キャリアレジリエンスとは,キャリア形成を脅かすリスクに直面した時,それに対処してキャリア形成を促す働きをする心理的特性である(児玉,印刷中)。キャリア形成を脅かすリスクの一つとして,リアリティショックが考えられる。リアリティショックとは,就職した後に自分の理想・期待と職場の現実とのギャップを感じることから生じるショックを指す(e.g. Schein, 1978)。本研究では,キャリアレジリエンスの保有度合とリアリティショック経験との関係の検討を通し,キャリアレジリエンスを構成する5つの下位概念のうちいずれが,リアリティショック経験の回避と関連があるのかを明らかにすることを目的とする。
方法
調査手続きと対象者 2015年1月に,Webによる調査法で,入社1年目の正社員233名分(男性89名,女性144名;平均年齢23.11歳)のデータを得た。
調査項目 キャリアレジリエンスについてはキャリアレジリエンス尺度(児玉,印刷中)を用いて測定した(34項目)。4段階評定で回答を求めた。リアリティショックについては,小川(2005),原田他(2009),児玉(2012)を基に,入社前のイメージと現実とのギャップの認知に関する質問項目を作成した(10項目)。各質問項目に関して,入社以降の経験を尋ね,経験した場合はその経験が回答者自身にとってどの程度ショックなものであったかについて4段階評定で回答を求めた。
結果と考察
キャリアレジリエンスの各因子のα係数 児玉(印刷中)の因子構造を基に,α係数を算出したところ,チャレンジ・問題解決・適応力因子(以下チャレンジ因子)は.86,ソーシャルスキル因子は.83,新奇性・興味関心の多様性因子(以下,新奇多様性因子)は.80,未来志向因子は.78,援助志向因子は.66となった。
リアリティショックの経験別にみたキャリアレジリエンスの状態 入社前のイメージと現実とのギャップの認知を経験し,かつそれにショックを受けたと認識している場合,リアリティショックを経験した者と判断した。全10項目のうち,1項目でもリアリティショックを経験している者をリアリティショック群(以下RS群,n=186),全くリアリティショックを経験していない者を非リアリティショック群(以下NRS群,n=47)に分類した。群別に,キャリアレジリエンスの各因子の得点の平均と標準偏差を算出したところTable 1のとおりとなった。t検定を行ったところ,チャレンジ因子(t(231)=-2.61, p<.01)と未来志向因子(t(89)=-4.34, p<.001)において群による有意差がみられ,いずれの得点もNRS群がRS群に比べ高かった。このうちチャレンジ因子については,企業就業者(入社1年目に限定しない)を対象とし,仕事に関するネガティブライフイベントとキャリアレジリエンスとの関係をみた児玉(印刷中)においても,同様の結果がみられた。チャレンジ因子の得点が高い者は,物事を前向きにとらえ,困難なことにチャレンジする意欲の高い者である。そのため,児玉(印刷中)で扱った仕事上の種々のトラブルのみならず,本研究で扱った,入社して直面する現実に対しても,ネガティブに解釈しない,もしくはショックを受けにくい傾向があると考えられる。また,未来志向因子の得点が高い者は,将来を前向きに捉えており,入社して新たな現実に直面しても,その現実に対して前向きに捉え,ショックを受けにくい傾向があると考えられる。そのため,これらの因子の得点が高い者は,リアリティショックを経験しない傾向が生じると考えられる。
(本研究は科学研究費助成事業 基盤研究(C)課題番号2680887の助成を受けています)
キャリアレジリエンスとは,キャリア形成を脅かすリスクに直面した時,それに対処してキャリア形成を促す働きをする心理的特性である(児玉,印刷中)。キャリア形成を脅かすリスクの一つとして,リアリティショックが考えられる。リアリティショックとは,就職した後に自分の理想・期待と職場の現実とのギャップを感じることから生じるショックを指す(e.g. Schein, 1978)。本研究では,キャリアレジリエンスの保有度合とリアリティショック経験との関係の検討を通し,キャリアレジリエンスを構成する5つの下位概念のうちいずれが,リアリティショック経験の回避と関連があるのかを明らかにすることを目的とする。
方法
調査手続きと対象者 2015年1月に,Webによる調査法で,入社1年目の正社員233名分(男性89名,女性144名;平均年齢23.11歳)のデータを得た。
調査項目 キャリアレジリエンスについてはキャリアレジリエンス尺度(児玉,印刷中)を用いて測定した(34項目)。4段階評定で回答を求めた。リアリティショックについては,小川(2005),原田他(2009),児玉(2012)を基に,入社前のイメージと現実とのギャップの認知に関する質問項目を作成した(10項目)。各質問項目に関して,入社以降の経験を尋ね,経験した場合はその経験が回答者自身にとってどの程度ショックなものであったかについて4段階評定で回答を求めた。
結果と考察
キャリアレジリエンスの各因子のα係数 児玉(印刷中)の因子構造を基に,α係数を算出したところ,チャレンジ・問題解決・適応力因子(以下チャレンジ因子)は.86,ソーシャルスキル因子は.83,新奇性・興味関心の多様性因子(以下,新奇多様性因子)は.80,未来志向因子は.78,援助志向因子は.66となった。
リアリティショックの経験別にみたキャリアレジリエンスの状態 入社前のイメージと現実とのギャップの認知を経験し,かつそれにショックを受けたと認識している場合,リアリティショックを経験した者と判断した。全10項目のうち,1項目でもリアリティショックを経験している者をリアリティショック群(以下RS群,n=186),全くリアリティショックを経験していない者を非リアリティショック群(以下NRS群,n=47)に分類した。群別に,キャリアレジリエンスの各因子の得点の平均と標準偏差を算出したところTable 1のとおりとなった。t検定を行ったところ,チャレンジ因子(t(231)=-2.61, p<.01)と未来志向因子(t(89)=-4.34, p<.001)において群による有意差がみられ,いずれの得点もNRS群がRS群に比べ高かった。このうちチャレンジ因子については,企業就業者(入社1年目に限定しない)を対象とし,仕事に関するネガティブライフイベントとキャリアレジリエンスとの関係をみた児玉(印刷中)においても,同様の結果がみられた。チャレンジ因子の得点が高い者は,物事を前向きにとらえ,困難なことにチャレンジする意欲の高い者である。そのため,児玉(印刷中)で扱った仕事上の種々のトラブルのみならず,本研究で扱った,入社して直面する現実に対しても,ネガティブに解釈しない,もしくはショックを受けにくい傾向があると考えられる。また,未来志向因子の得点が高い者は,将来を前向きに捉えており,入社して新たな現実に直面しても,その現実に対して前向きに捉え,ショックを受けにくい傾向があると考えられる。そのため,これらの因子の得点が高い者は,リアリティショックを経験しない傾向が生じると考えられる。
(本研究は科学研究費助成事業 基盤研究(C)課題番号2680887の助成を受けています)