[PC047] 漢字に親しむアプリ「かんじダス」の開発(1)
ディスレクシアのための教材アプリの技術的検討
Keywords:発達性ディスレクシア, 漢字, アプリ
問題と目的
発達性読み書き障害(ディスレクシア)は,全般的な知的発達に遅れはないが,単語認識の正確かつ(または)流暢さの難しさと,綴りや文字記号音声化の拙劣さがある。出現頻度は言語体系の特性に影響を受け,英語圏では7~15%,日本語ではひらがなで1~2%,漢字で6%と言われている。ディスレクシア児は,従来の訓練による漢字学習が苦手であることが多い。障害されていない認知特性に視点をあて,漢字に親しみ,楽しく自然に漢字を読むことができる支援ツールの研究開発を目的として,タブレット端末で実行できるゲーム性のあるアプリケーション「かんじダス」の開発を行った。「かんじダス」では,最初の課題として,漢字が表意文字であることを体感できるように,主に象形文字からなる「絵合わせ」を作成した。漢字と絵の例はFigure 1に示した。「絵合わせ」では,絵を指で移動(ドラッグ)させ,適切な漢字に合わせる。漢字と絵の組み合わせは24種類作成し,1回のゲームでは4組をランダムに呈示する。
方 法
Ⅰ.開発技術の検討 教育支援ツールに必要な機能と,これを実現するための技術を検討する。特に,端末や技術仕様の栄枯盛衰に耐え,メンテナンス性に優れた技術を採用する。
Ⅱ.アプリの検証 6ゲーム1セットで全24組の絵と漢字が出現する検証用プログラムを作成した。「絵合わせ」課題の実行前に,より単純な図形による練習を行った。検証用プログラムは,主に児童を対象として22名に体験してもらった。タブレット端末はApple社のiPad Air 2を用いた。
結 果
Ⅰ.開発技術の検討
a.アプリ形式 クロスプラットフォームなWebアプリとして開発した。Webアプリは,開発環境の構築,公開や修正などが非常に容易である。
b.画像形式 さまざまな画面サイズや拡大縮小表示に対応させるためScalable Vector Graphics(SVG)形式の画像を用いた。SVGは画像の複雑さに比例して容量や描画処理の負担が増えるため,単純な画像を用いる場合に適している。
c.データの記録 実行データを記録するために,Web Storageを用いた。Web Storageは端末にデータを保持するため,外部出力が困難な反面,流出の心配がない。なお,Web Storageは文字データで,保存容量はインターネットブラウザによって2.5MB(半角250万文字)から5MB程度となる。
d.オフライン対応 インターネットが使えない環境でも実行できるように,Application cashを用いた。データ取得のため,初回1度だけインターネットに接続して動作させる必要がある。
Ⅱ.アプリの検証
a.アプリ内記録項目 Web Storageに記録する項目として,ユーザー名,実行日付,タッチ情報(タッチ開始位置やドロップ位置,時間など),選んだ絵と合わせた漢字などを記録した。記録は1タッチごとに,パラメータをカンマ区切り(CSV形式)で保存した。
b.動作の安定性 ドラッグ時間0.3秒以下の選択は全体の1.7%であり,意図しないドロップはほとんど起きず,安定して操作できていた。
c.実行成績 記録したデータから,ゲームの成績(ドラッグ時間や速度,達成時間,判断の正誤,選択順など)を分析することもできる。アプリを終了してもデータを保持しているので,日毎の成績の推移をグラフ化することも可能である。
考 察
Webアプリは,特定端末の専用アプリに比べて機能や速度は劣るが,対応端末が多く管理が容易なため,学習支援ツールの開発・提供に適していると考えられる。開発した「かんじダス」は実用に足る機能を備え,安定して動作する事が示された。アンケートによる詳しい使用感の評価は,別発表「アプリの使用感の検証」で詳しく述べる。
発達性読み書き障害(ディスレクシア)は,全般的な知的発達に遅れはないが,単語認識の正確かつ(または)流暢さの難しさと,綴りや文字記号音声化の拙劣さがある。出現頻度は言語体系の特性に影響を受け,英語圏では7~15%,日本語ではひらがなで1~2%,漢字で6%と言われている。ディスレクシア児は,従来の訓練による漢字学習が苦手であることが多い。障害されていない認知特性に視点をあて,漢字に親しみ,楽しく自然に漢字を読むことができる支援ツールの研究開発を目的として,タブレット端末で実行できるゲーム性のあるアプリケーション「かんじダス」の開発を行った。「かんじダス」では,最初の課題として,漢字が表意文字であることを体感できるように,主に象形文字からなる「絵合わせ」を作成した。漢字と絵の例はFigure 1に示した。「絵合わせ」では,絵を指で移動(ドラッグ)させ,適切な漢字に合わせる。漢字と絵の組み合わせは24種類作成し,1回のゲームでは4組をランダムに呈示する。
方 法
Ⅰ.開発技術の検討 教育支援ツールに必要な機能と,これを実現するための技術を検討する。特に,端末や技術仕様の栄枯盛衰に耐え,メンテナンス性に優れた技術を採用する。
Ⅱ.アプリの検証 6ゲーム1セットで全24組の絵と漢字が出現する検証用プログラムを作成した。「絵合わせ」課題の実行前に,より単純な図形による練習を行った。検証用プログラムは,主に児童を対象として22名に体験してもらった。タブレット端末はApple社のiPad Air 2を用いた。
結 果
Ⅰ.開発技術の検討
a.アプリ形式 クロスプラットフォームなWebアプリとして開発した。Webアプリは,開発環境の構築,公開や修正などが非常に容易である。
b.画像形式 さまざまな画面サイズや拡大縮小表示に対応させるためScalable Vector Graphics(SVG)形式の画像を用いた。SVGは画像の複雑さに比例して容量や描画処理の負担が増えるため,単純な画像を用いる場合に適している。
c.データの記録 実行データを記録するために,Web Storageを用いた。Web Storageは端末にデータを保持するため,外部出力が困難な反面,流出の心配がない。なお,Web Storageは文字データで,保存容量はインターネットブラウザによって2.5MB(半角250万文字)から5MB程度となる。
d.オフライン対応 インターネットが使えない環境でも実行できるように,Application cashを用いた。データ取得のため,初回1度だけインターネットに接続して動作させる必要がある。
Ⅱ.アプリの検証
a.アプリ内記録項目 Web Storageに記録する項目として,ユーザー名,実行日付,タッチ情報(タッチ開始位置やドロップ位置,時間など),選んだ絵と合わせた漢字などを記録した。記録は1タッチごとに,パラメータをカンマ区切り(CSV形式)で保存した。
b.動作の安定性 ドラッグ時間0.3秒以下の選択は全体の1.7%であり,意図しないドロップはほとんど起きず,安定して操作できていた。
c.実行成績 記録したデータから,ゲームの成績(ドラッグ時間や速度,達成時間,判断の正誤,選択順など)を分析することもできる。アプリを終了してもデータを保持しているので,日毎の成績の推移をグラフ化することも可能である。
考 察
Webアプリは,特定端末の専用アプリに比べて機能や速度は劣るが,対応端末が多く管理が容易なため,学習支援ツールの開発・提供に適していると考えられる。開発した「かんじダス」は実用に足る機能を備え,安定して動作する事が示された。アンケートによる詳しい使用感の評価は,別発表「アプリの使用感の検証」で詳しく述べる。