日本教育心理学会第57回総会

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ポスター発表

ポスター発表 PC

2015年8月26日(水) 16:00 〜 18:00 メインホールA (2階)

[PC050] 通常学級に在籍する特別な教育的支援が必要であると思われる生徒の現状の検討Ⅱ

中学校教員へのアンケート調査から

山田淳子1, 石井恵子2, 芳賀明子3, 佐々木葉子4 (1.小金井市立小金井第一中学校, 2.東京都三鷹市立第六中学校, 3.公立学校スクールカウンセラー, 4.公立学校スクールカウンセラー)

キーワード:特別支援教育, 通常学級での支援

Ⅰ 目的
通常学級に在籍する特別な教育的支援が必要であると思われる生徒の現状の検討Ⅰでは,教員の直面する困難が明らかになったが,本研究では,その困難がどのように解決に至るかを検討することを目的とした。
Ⅱ 方法
1.対象:公立中学校教員12名。そのうち9名は通常学級の担任と副担任,3名は通級制支援学級の担任で,部活動顧問として通常学級の生徒にかかわっている。
2.実施期間:2014年1月~3月
3.分析方法:Ⅰで作成したトランスクリプトを更にカテゴリー化,精緻化を図り,仮説の生成と流れ図の作成の順に分析した。
Ⅲ 結果と考察
Ⅰで作成したトランスクリプトの分類について更に検討した結果,「声掛けと話を聞く」「具体的な指示」「多動・不注意」「コミュニケーション」など47のカテゴリーが生成された。それらのカテゴリーは,更に,「生徒に対する教員の取り組み」「LD傾向」「給食指導時の困難」「予測困難な行動」「組織的連携」「保護者との連携」など13の上位カテゴリーにまとめられ,更に,「授業運営上の問題」「集団運営上の問題」「校内外の連携」の三つに分類することができた。分類したことを基に分析・検討したところ,図1のような結果が得られた。教員は,生徒が安定した学校生活を送っていないことを問題と考えており,①授業運営上の問題と②集団運営上の問題に二分された。①に関しては,「書くことに時間がかかる」「板書等ノートをとることに手間取る」等の「書く力」に関する課題が挙げられており,②に関しては,「場の空気が読めない」「単語による会話である」など,生徒同士の関係が成立しにくいことが挙げられている。もう一点挙げられている課題に③「予測困難な行動」があり,「校外学習ではぐれてしまった」「物や人に当たってしまう」など,その場で個別に対応する必要に迫られる事態に直面していることがうかがわれる。
問題解決に向かうためには,教員自身が適切に対応することや保護者の心情を理解していることが必要であり,これが欠けると問題は繰り返すことになる。教員自身が対応できる力量を備えていくこが必要ではあるが,保護者および校内体制の支えが重要であることも把握された。
Ⅳ 今後の課題
特別支援教育の充実が重要であることは言うまでもないが,現段階において,教室では教員が単独で指導を行うことが求められている。通常学級に在籍する特別な教育的支援が必要であると思われる生徒の適応を図るためには,集団内での具体的な支援あるいは集団適応に必要なスキルの指導などについて,担任が担うべき内容と担任を支える内容の両面からの検討が課題である。
文 献
文部科学省(2004).小・中学校におけるLD,ADHD,高機能自閉症の児童生徒への教育支援体制の整備のためのガイドライン(試案)
文部科学省(2012).通常の学級に在籍する発達障害の可能性のある特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する調査結果について