[PC055] 総合的な学習の時間を活用した視覚障害理解教育の実践4
小学6年生を対象に
キーワード:小学校, 障害理解教育, 視覚障害
1.はじめに
筆者はこれまで,同じ対象に1年に2コマずつ,3年で計6コマの視覚障害理解教育を実施してきた。対象が小学3年生の時には触察体験を通して,目が見えなくても多くの情報を得られることを,4年生の時には視覚障害者の日常生活を描いた紙芝居の読み聞かせを通して,視覚障害者が自分たちと同じように生活していることを,5年生の時には屋外を移動する際に視覚障害者が困ることと,それを解消するための工夫や対策を伝えてきた(西館・永田・石田・松井,2012;西館・阿久津・萩中,2013;西館・阿久津・鼎,2014)。
水野・徳田(2014)は,障害理解教育を効果的に進めるために,どの段階でいかなる内容を扱うかを整理する必要があるとし,身体障害については「工夫をすれば健常者と同じ生活ができること」「日常生活で困ること」「生活上の工夫」を伝え,その次に「援助方法」を扱うことを提案している。
そこで本研究では,これまでの実践の対象であり,小学6年生となった子どもたちに,視覚障害者への具体的な援助方法を知ることを目的とした授業の実践を行い,授業前後の子どもたちの認識の変化から,その効果を検証することにした。
2.授業の実践
⑴ 対象児と時間
2015年2月にT県内の小学校に通う第6学年2クラスの子ども78名に対し,総合的な学習の時間2コマ(1コマ45分)を用いて,1クラスずつ,教室内で大学教員1名が授業を行った。
⑵ 授業の概要
1コマ目の最初に授業前アンケートを実施した。授業の導入では子どもたちに,助けてよいかどうか迷った経験や,助けたい気持ちはあったが行動に移せなかった経験はあるかを尋ねた。また,援助の抑制要因にはどのようなものがあるかを説明し,他者を援助するためには,その人が援助を必要としているかどうかを判断できる知識と,正しく援助するための知識が必要であることを伝えた。
次に,視覚障害者が困っている場面や困っていない場面を絵や写真で見せ,「視覚障害者は困っているか」「どのような援助が必要か」について子どもたちとやりとりをした。さらに,視覚障害者を手引きする方法について4択のクイズを出した。
2コマ目には「視覚障害者に物の特徴を伝える」というテーマで,目隠しをした子どもに対して,アニメ番組やキャラクタの名前を出さずにあるキャラクタの特徴を説明し,目隠しをした子どもにそのキャラクタの名前を当ててもらうというゲームをした。言葉だけでは伝わらない場合に子どもたちは,そのキャラクタの人形を,目隠しをした子どもに触らせながら説明を行った。
3.子どもの認識の変化
⑴ 方法
授業を受けた第6学年2クラスの子ども78名に対し,自記式の質問紙調査を授業前と授業後に行った。授業前後の回答について個の対応を図るため,質問紙には好きな言葉と動物を組み合わせたニックネームを記入させた。
質問紙では,徳田(1990;1991)が開発した多次元態度尺度のうち,「交流の当惑」に含まれる9項目についてどの程度そう思うかを,5件法を用いて尋ねた。また,「目に障害のある人のために今の自分ができることはたくさんある」と思うかどうかを5件法で尋ねた。さらに,「目に障害のある人を手伝う自信」がどの程度あるかについても5件法で尋ねた。
⑵ 結果
「交流の当惑」について尋ねた9項目の得点の合計について平均値を算出し,対応のあるt検定を行った。その結果,授業後に「交流の当惑」は有意に低まっていた(t(77)=7.57, p<0.01)。項目ごとにみると,「視覚障害者も自分と同じ世界に生きている」は授業前からそのように考える子どもが多く,授業前後で有意差はなかった。これ以外の項目「気軽に声をかけられる」「ためらいなく物を尋ねられる」「迷わず手を貸せる」「困っている時に迷わず援助できる」「コミュニケーションをとれる」「あまり気を使いすぎない」「変な遠慮はしない」「関心がある」については「そう思う」と答えた子どもが授業後に有意に増えた。
また,視覚障害者のために,今の自分ができることはたくさんあると思うかについて,授業前の平均は3.58,授業後は4.23であり,授業後に有意に高まっていた(t(77)=5.48, p<0.01)。
さらに,視覚障害者を手伝う自信がどの程度あるかについて,授業前の平均は2.73であったのに対し,授業後は3.79であり,授業後に有意に高まった(t(77)=8.39, p<0.01)。
筆者はこれまで,同じ対象に1年に2コマずつ,3年で計6コマの視覚障害理解教育を実施してきた。対象が小学3年生の時には触察体験を通して,目が見えなくても多くの情報を得られることを,4年生の時には視覚障害者の日常生活を描いた紙芝居の読み聞かせを通して,視覚障害者が自分たちと同じように生活していることを,5年生の時には屋外を移動する際に視覚障害者が困ることと,それを解消するための工夫や対策を伝えてきた(西館・永田・石田・松井,2012;西館・阿久津・萩中,2013;西館・阿久津・鼎,2014)。
水野・徳田(2014)は,障害理解教育を効果的に進めるために,どの段階でいかなる内容を扱うかを整理する必要があるとし,身体障害については「工夫をすれば健常者と同じ生活ができること」「日常生活で困ること」「生活上の工夫」を伝え,その次に「援助方法」を扱うことを提案している。
そこで本研究では,これまでの実践の対象であり,小学6年生となった子どもたちに,視覚障害者への具体的な援助方法を知ることを目的とした授業の実践を行い,授業前後の子どもたちの認識の変化から,その効果を検証することにした。
2.授業の実践
⑴ 対象児と時間
2015年2月にT県内の小学校に通う第6学年2クラスの子ども78名に対し,総合的な学習の時間2コマ(1コマ45分)を用いて,1クラスずつ,教室内で大学教員1名が授業を行った。
⑵ 授業の概要
1コマ目の最初に授業前アンケートを実施した。授業の導入では子どもたちに,助けてよいかどうか迷った経験や,助けたい気持ちはあったが行動に移せなかった経験はあるかを尋ねた。また,援助の抑制要因にはどのようなものがあるかを説明し,他者を援助するためには,その人が援助を必要としているかどうかを判断できる知識と,正しく援助するための知識が必要であることを伝えた。
次に,視覚障害者が困っている場面や困っていない場面を絵や写真で見せ,「視覚障害者は困っているか」「どのような援助が必要か」について子どもたちとやりとりをした。さらに,視覚障害者を手引きする方法について4択のクイズを出した。
2コマ目には「視覚障害者に物の特徴を伝える」というテーマで,目隠しをした子どもに対して,アニメ番組やキャラクタの名前を出さずにあるキャラクタの特徴を説明し,目隠しをした子どもにそのキャラクタの名前を当ててもらうというゲームをした。言葉だけでは伝わらない場合に子どもたちは,そのキャラクタの人形を,目隠しをした子どもに触らせながら説明を行った。
3.子どもの認識の変化
⑴ 方法
授業を受けた第6学年2クラスの子ども78名に対し,自記式の質問紙調査を授業前と授業後に行った。授業前後の回答について個の対応を図るため,質問紙には好きな言葉と動物を組み合わせたニックネームを記入させた。
質問紙では,徳田(1990;1991)が開発した多次元態度尺度のうち,「交流の当惑」に含まれる9項目についてどの程度そう思うかを,5件法を用いて尋ねた。また,「目に障害のある人のために今の自分ができることはたくさんある」と思うかどうかを5件法で尋ねた。さらに,「目に障害のある人を手伝う自信」がどの程度あるかについても5件法で尋ねた。
⑵ 結果
「交流の当惑」について尋ねた9項目の得点の合計について平均値を算出し,対応のあるt検定を行った。その結果,授業後に「交流の当惑」は有意に低まっていた(t(77)=7.57, p<0.01)。項目ごとにみると,「視覚障害者も自分と同じ世界に生きている」は授業前からそのように考える子どもが多く,授業前後で有意差はなかった。これ以外の項目「気軽に声をかけられる」「ためらいなく物を尋ねられる」「迷わず手を貸せる」「困っている時に迷わず援助できる」「コミュニケーションをとれる」「あまり気を使いすぎない」「変な遠慮はしない」「関心がある」については「そう思う」と答えた子どもが授業後に有意に増えた。
また,視覚障害者のために,今の自分ができることはたくさんあると思うかについて,授業前の平均は3.58,授業後は4.23であり,授業後に有意に高まっていた(t(77)=5.48, p<0.01)。
さらに,視覚障害者を手伝う自信がどの程度あるかについて,授業前の平均は2.73であったのに対し,授業後は3.79であり,授業後に有意に高まった(t(77)=8.39, p<0.01)。