日本教育心理学会第57回総会

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ポスター発表

ポスター発表 PC

2015年8月26日(水) 16:00 〜 18:00 メインホールA (2階)

[PC057] 社会性の発達に困難を抱える子どもの早期徴候と支援(1)

1歳6か月児健診の「ままごと遊び」観察をもとに

別府悦子1, 宮本正一2, 別府哲3, 新村津代子#4, 山田典子#5, 北川小有里#6 (1.中部学院大学, 2.中部学院大学, 3.岐阜大学, 4.本巣市健康増進課, 5.本巣市健康増進課, 6.本巣市健康増進課)

キーワード:社会性の発達, 早期支援, 乳幼児検診

Ⅰ.問題
わが国の乳幼児健診は障害の早期発見に大きな役割を果たしてきたが,自閉症スペクトラムなどの社会性の発達の問題については発見が遅れることが指摘されてきた。神尾ら(2006)は早期発見のためのアセスメントとしてM-CHAT日本語版(The Japanese version of the M-CHAT)を作成し,有効性を検証している。
岐阜県本巣市では,これをもとに表1のように,健診場面でおもちゃグッズを用いた「ままごと遊び」を保健師が問診時に実際に提示して子どもの行動観察を行っている。そして,子どもの社会性の発達に保護者が関心を持ち,家庭生活の中で社会性を促すかかわりを増やすことへの支援に結び付けている。今回,この有効性を検証することを目的に,健診データの分析を行ったので報告する。
Ⅱ.方法
岐阜県本巣市の1歳6か月児健診を受診した平成22年10月~平成24年3月生まれの435名の乳幼児健診カルテ(母子支援票)に記載されている項目の通過状況をExcelに入力し分析を行った。
Ⅲ.結果と考察
表1のままごと遊び観察で,各項目の「芽生え」(不通過だが反応は見られる)および「不通過」の反応を示さなかったのは297名であった。これ以外の138名は10項目のうち,何らかの項目で「芽生え(1点)」「不通過(1点)」の反応が見られた。10項目の合計点をWilcoxonの順位和検定によって,男女の差を分析したところ,表2のように男児が女児より,支援得点が高いことがわかった(P < 0.01)。
さらに,全てのdataが揃った子どもの分析を行ったところ,「芽生え」を1点,「不通過」を2点と得点化してもよいと判断された。そのため,この138名は,「ままごと遊び」観察において,支援が必要な子どもととらえた。次に,この138名のうち,表1の10項目の中で測定人数の多い6項目を使ってパターン分類の数量化3類を実施した。図1は,138名のままごと遊びにおける10項目の通過状況である。これによれば,②呼名反応,⑤模倣,⑥指さし追従,⑧社会的参照,⑩ことばの理解で,支援度が高いことがわかり,「ままごと遊び」観察において支援のために重要な項目になると示唆された。
※本研究は2013年~2015年度科学研究費補助金(基盤C:25381327)の助成を受けた。また,M-CHAT日本語版の使用については神尾陽子の許可を得ている。