[PC059] 発達障害傾向のある幼児の保護者との座談会の効果
保護者の障害受容の視点から
Keywords:発達障害, 保護者, 障害受容
はじめに
発達障害傾向のある幼児を持つ保護者がわが子の障害傾向を受容する際には多くの葛藤がある。「わが子は周囲の子どもと比べて少し違う」と感じながらも「気のせい」と考える保護者,無理な訓練をして周囲の子どもに追いつかせようとする保護者は多い(本橋・沢崎,2008;西館・徳田,2011)。わが子の発達障害傾向を受容できない保護者の中には,「子どもに障害があることを自分が認めることは,子どもの将来を否定することになる」と考えているケースがある(水野・西館・徳田,2014)。発達障害があると「今後,成長・発達をすることができない」「人生をあきらめなければならない」等と誤解しているのである。
しかし,保護者がわが子の状態に目を向けられず,適正な受容を進めなければ,子どもは常に「何をどうすればよいのかがわからない」状況に置かれることになる。その上,保護者からは叱責を受け続けるために,子どもは自尊心を低めてしまったり,何事にもやる気を持てなくなったりする等の二次障害を引き起こすことになる。それを避けるために,子どもが幼児の頃から,保護者が適正な障害受容を進められる環境を作ることが重要であると言える。
そこで,1)保護者自身が発達障害に関する知識を持ち,障害に対する偏見を解消すること,2)障害受容の各段階において周囲のサポートを受けながら自身がそれを乗り越えるための力をつけることが必要であると考えた。そのために,筆者らは,現在,発達障害傾向のある幼児を持つ保護者との座談会を企画し,全国各地で開催している。本稿では,その座談会が発達障害傾向のある幼児を持つ保護者にどのような効果があったのかについて報告したい。
座談会の方法
参加者を募集する際には,「育てにくいと感じる幼児を持つ保護者」ならば誰でも参加ができること,子育て支援を専門にしている専門家がコーディネーターとなり,参加者が専門家に相談したり,参加者同士で子育ての体験談を自由に話せる場であることを伝えた。なお,筆者らが巡回相談で訪問する幼稚園や保育所の園長あるいは講師を務めた保護者対象の子育て講演会の開催主催者を通して保護者に座談会の開催案内を配布してもらった。
当日は,6,7名の参加者を1グループとして,1グループに1人以上の専門家を配置するようにした。1回の座談会はおよそ2時間程度であった。
座談会の効果
① わが子の発達障害傾向への気づき
参加者の中には,わが子に発達障害傾向があることに気づかずに参加している場合が多かった。しかし,そのような保護者は,わが子と似た特徴がある他の参加者の子どもが発達障害の診断を受けていることを知り,「わが子が育てにくいのは,自分の育て方のせいではなく,発達障害の傾向に原因があるのだ」と気づくきっかけとなった。
② 支援の方法を具体的に知る
専門家から育て方のアドバイスを聞いたり,参加者同士が,自分たちが普段している子育ての工夫を話すのを聞いたりすることによって,具体的に自分の子どもの問題行動に対して,どのように対応したらよいのかを知ることができた。また,子どもにさまざまな対応をしている他の参加者の話を聞くことによって,工夫をすれば子どもが問題行動を減らし,成長していくことができるという子育ての見通しを持つことができた。
③ 仲間を得る
座談会に参加するまでは,「なぜうちの子だけが」と悩んでいた保護者が「発達障害の傾向のある子どもがいるのは自分だけではない」という思いを持つことができていた。また,参加者同士で,座談会の終了後に連絡先を交換し,その後も定期的に相談をしあったり,対応の方法を教え合ったりする仲間となった。
発達障害傾向のある幼児を持つ保護者がわが子の障害傾向を受容する際には多くの葛藤がある。「わが子は周囲の子どもと比べて少し違う」と感じながらも「気のせい」と考える保護者,無理な訓練をして周囲の子どもに追いつかせようとする保護者は多い(本橋・沢崎,2008;西館・徳田,2011)。わが子の発達障害傾向を受容できない保護者の中には,「子どもに障害があることを自分が認めることは,子どもの将来を否定することになる」と考えているケースがある(水野・西館・徳田,2014)。発達障害があると「今後,成長・発達をすることができない」「人生をあきらめなければならない」等と誤解しているのである。
しかし,保護者がわが子の状態に目を向けられず,適正な受容を進めなければ,子どもは常に「何をどうすればよいのかがわからない」状況に置かれることになる。その上,保護者からは叱責を受け続けるために,子どもは自尊心を低めてしまったり,何事にもやる気を持てなくなったりする等の二次障害を引き起こすことになる。それを避けるために,子どもが幼児の頃から,保護者が適正な障害受容を進められる環境を作ることが重要であると言える。
そこで,1)保護者自身が発達障害に関する知識を持ち,障害に対する偏見を解消すること,2)障害受容の各段階において周囲のサポートを受けながら自身がそれを乗り越えるための力をつけることが必要であると考えた。そのために,筆者らは,現在,発達障害傾向のある幼児を持つ保護者との座談会を企画し,全国各地で開催している。本稿では,その座談会が発達障害傾向のある幼児を持つ保護者にどのような効果があったのかについて報告したい。
座談会の方法
参加者を募集する際には,「育てにくいと感じる幼児を持つ保護者」ならば誰でも参加ができること,子育て支援を専門にしている専門家がコーディネーターとなり,参加者が専門家に相談したり,参加者同士で子育ての体験談を自由に話せる場であることを伝えた。なお,筆者らが巡回相談で訪問する幼稚園や保育所の園長あるいは講師を務めた保護者対象の子育て講演会の開催主催者を通して保護者に座談会の開催案内を配布してもらった。
当日は,6,7名の参加者を1グループとして,1グループに1人以上の専門家を配置するようにした。1回の座談会はおよそ2時間程度であった。
座談会の効果
① わが子の発達障害傾向への気づき
参加者の中には,わが子に発達障害傾向があることに気づかずに参加している場合が多かった。しかし,そのような保護者は,わが子と似た特徴がある他の参加者の子どもが発達障害の診断を受けていることを知り,「わが子が育てにくいのは,自分の育て方のせいではなく,発達障害の傾向に原因があるのだ」と気づくきっかけとなった。
② 支援の方法を具体的に知る
専門家から育て方のアドバイスを聞いたり,参加者同士が,自分たちが普段している子育ての工夫を話すのを聞いたりすることによって,具体的に自分の子どもの問題行動に対して,どのように対応したらよいのかを知ることができた。また,子どもにさまざまな対応をしている他の参加者の話を聞くことによって,工夫をすれば子どもが問題行動を減らし,成長していくことができるという子育ての見通しを持つことができた。
③ 仲間を得る
座談会に参加するまでは,「なぜうちの子だけが」と悩んでいた保護者が「発達障害の傾向のある子どもがいるのは自分だけではない」という思いを持つことができていた。また,参加者同士で,座談会の終了後に連絡先を交換し,その後も定期的に相談をしあったり,対応の方法を教え合ったりする仲間となった。