日本教育心理学会第57回総会

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ポスター発表

ポスター発表 PC

2015年8月26日(水) 16:00 〜 18:00 メインホールA (2階)

[PC065] 小中一貫校・非一貫校における子どもの適応・発達(4)

中学校生活に対する期待・不安に着目して

高坂康雅1, 都筑学2, 岡田有司3 (1.和光大学, 2.中央大学, 3.高千穂大学)

キーワード:小中一貫校, 中学校生活に対する期待, 中学校生活に対する不安

問題と目的
近年,全国的に公立小中一貫校の設置が行われている。その目的は,小・中学校間の連携・連続性を高め,また,普段の学校生活のなかで,中学校の生活を目にし,接することで,「中1ギャップ」を解消し,児童生徒の学校適応感や精神的健康を向上させることにある。しかし,小学生が中学校生活への期待と不安を同時に持つことは,将来への希望や目標を持ちたいという欲求を高めることにつながることが指摘されており(都筑, 2008),施設一体型小中一貫校は,そのような期待と不安をもつ機会をなくし,発達するきっかけを減じている可能性がある。
そこで,本研究では,小学生がもつ中学校生活への期待と不安について,施設一体型一貫校,施設分離型一貫校,非一貫校の小学生を比較することを目的とする。
方 法
調査対象者 公立施設一体型小中一貫校7校に在籍する4年生から6年生711名,施設分離型小中一貫校3校に在籍する4年生から6年生346名,非一貫の小学校40校に在籍する4年生から6年生3587名を調査対象者とした。
調査時期 2013年5月~2014年1月に調査を実施した。
調査内容 中学校生活への期待に関する項目2項目と不安に関する項目2項目を独自に作成して,使用した。
結果と考察
中学校生活への期待2項目の平均を期待得点,中学校生活への不安2項目の平均を不安得点として,学校形態(3;施設一体型・施設分離型・非一貫)×学年(3;4年・5年・6年)の2要因分散分析を行った。
期待得点(Figure 1)では,学校形態の主効果が有意であり(F (2, 4495)=53.88, p<.001),多重比較の結果,非一貫校や施設分離型一貫校の小学生は,施設一体型一貫校の小学生に比べ,中学校生活への期待をもっていることが明らかになった。
不安得点(Figure 2)では,学校形態の主効果(F (2, 4439)=5.20, p<.01)と,学年の主効果(F (2, 4493)=12.63, p<.001)が有意であった。単純比較の結果,非一貫校の小学生は,施設一体型および施設分離型一貫校の小学生よりも,中学校生活への不安を感じており,また,4年生よりも5年生,5年生よりも6年生の方が不安を感じていた。
ここから,非一貫校の小学生は中学校生活への期待も不安も高く,施設分離型一貫校の小学生は期待のみが高く,施設一体型一貫校の小学生は期待も不安も低いことが明らかになった。中学校生活への期待や不安が子どもの心理的発達や中学校生活での適応に,実際にどのように(どの程度)影響しているかは,今後さらに検討する必要がある。
付 記
本研究は,科学研究費助成事業(基盤研究(B)課題番号24330858:代表・梅原利夫)の助成を受けたものである。