[PD007] 中学生・高校生向けネット依存傾向尺度の作成および信頼性・妥当性の検討
SNS利用による日常生活への影響とネガティブな情動的反応に着目して
Keywords:インターネット依存傾向, SNS, 中学生・高校生
【目 的】
本研究は,ネット利用に依存する心理に焦点を当て,コミュニケーションを目的としたネット利用により,日常生活への影響とネガティブな情動的反応を呈する兆候が見られる状況を「ネット依存傾向」と命名し,概念を再構成し,同概念を測定できる生徒向けの尺度を作成すること,およびネット依存傾向の様相を捉えることを目的とした。
【方 法】
調査協力者:A県,B県内の中学校1~3年生,A県内の高校1~2年生の計4校,890名(男性431名,女性459名,中学1年生222名,中学2年生221名,中学3年生108名,高校1年生169名,高校2年生170名)。
調査時期:2014年12月。
調査内容:ネット利用状況(8項目),「日常生活への影響」と「ネガティブな情動的反応」の2つの観点を問うネット依存傾向尺度の項目候補(32項目),岡安・嶋田・坂野(1993)によるソーシャルサポート尺度 (16項目)。
【結果と考察】
中学生・高校生のネット利用状況: SNSは,中学生の65.5%,高校生の93.2%が利用していた。利用しているSNSのサービスは,SNS利用者の内,「LINE」が93.9%,「Twitter」が61.9%であった。
ネット依存傾向尺度の作成:「日常生活への影響」と「ネガティブな情動的反応」それぞれについて探索的因子分析(最尤法)を行ったところ,それぞれ1因子構造の解が得られた。また,両要因の関連を確認するために,確認的因子分析を行ったところ,モデルの適合度指標は,GFI=.894,AGFI=.868,CFI=.913,RMSEA=.073であり,概ね良好な値であった。したがって,これら2要因によって測定される様相を,本研究におけるネット依存傾向とした。また,このネット依存傾向とネット依存への自覚の有無,スマートフォン利用,ネット利用時間,フィルタリング利用といった要因との関連を検討した結果,懸念が予想される利用状況が見られるほどネット依存傾向の得点が高くなる関連が見られたため,ネット依存傾向尺度の妥当性が確認された。
ネット依存傾向の様相についての検討:ネット依存傾向について性差と学校種差を二要因分散分析により検討したところ,それぞれの間に有意な関連があることが明らかとなった(Figure1,2)。
さらに,SNS利用状況,ソーシャルサポート(以下,サポート)との関連を検討した結果,ネット依存傾向には,ハイリスク群,リスク群,ノーリスク群の3つの段階があることが考えられた。ハイリスク群は,学校外の人とのやり取りが多く,日常的に会うことができない人やネット上でのやり取りがコミュニケーションの中心になる人とのやり取りが多いことが明らかになった。また,ハイリスク群は,家族からのサポートの知覚が低いことが明らかになった。リスク群は,SNSの中でもLINEの利用時間が長く,一度は会ったことのある人とのやり取りが多いことが明らかになった。ノーリスク群は,SNS利用時間,やり取りする人数が2つの群に比べ少ないことが明らかになった。
今後は,ネット依存傾向尺度によるアセスメントへの利用の検討やメディアリテラシー教育への応用の検討が必要である。
本研究は,ネット利用に依存する心理に焦点を当て,コミュニケーションを目的としたネット利用により,日常生活への影響とネガティブな情動的反応を呈する兆候が見られる状況を「ネット依存傾向」と命名し,概念を再構成し,同概念を測定できる生徒向けの尺度を作成すること,およびネット依存傾向の様相を捉えることを目的とした。
【方 法】
調査協力者:A県,B県内の中学校1~3年生,A県内の高校1~2年生の計4校,890名(男性431名,女性459名,中学1年生222名,中学2年生221名,中学3年生108名,高校1年生169名,高校2年生170名)。
調査時期:2014年12月。
調査内容:ネット利用状況(8項目),「日常生活への影響」と「ネガティブな情動的反応」の2つの観点を問うネット依存傾向尺度の項目候補(32項目),岡安・嶋田・坂野(1993)によるソーシャルサポート尺度 (16項目)。
【結果と考察】
中学生・高校生のネット利用状況: SNSは,中学生の65.5%,高校生の93.2%が利用していた。利用しているSNSのサービスは,SNS利用者の内,「LINE」が93.9%,「Twitter」が61.9%であった。
ネット依存傾向尺度の作成:「日常生活への影響」と「ネガティブな情動的反応」それぞれについて探索的因子分析(最尤法)を行ったところ,それぞれ1因子構造の解が得られた。また,両要因の関連を確認するために,確認的因子分析を行ったところ,モデルの適合度指標は,GFI=.894,AGFI=.868,CFI=.913,RMSEA=.073であり,概ね良好な値であった。したがって,これら2要因によって測定される様相を,本研究におけるネット依存傾向とした。また,このネット依存傾向とネット依存への自覚の有無,スマートフォン利用,ネット利用時間,フィルタリング利用といった要因との関連を検討した結果,懸念が予想される利用状況が見られるほどネット依存傾向の得点が高くなる関連が見られたため,ネット依存傾向尺度の妥当性が確認された。
ネット依存傾向の様相についての検討:ネット依存傾向について性差と学校種差を二要因分散分析により検討したところ,それぞれの間に有意な関連があることが明らかとなった(Figure1,2)。
さらに,SNS利用状況,ソーシャルサポート(以下,サポート)との関連を検討した結果,ネット依存傾向には,ハイリスク群,リスク群,ノーリスク群の3つの段階があることが考えられた。ハイリスク群は,学校外の人とのやり取りが多く,日常的に会うことができない人やネット上でのやり取りがコミュニケーションの中心になる人とのやり取りが多いことが明らかになった。また,ハイリスク群は,家族からのサポートの知覚が低いことが明らかになった。リスク群は,SNSの中でもLINEの利用時間が長く,一度は会ったことのある人とのやり取りが多いことが明らかになった。ノーリスク群は,SNS利用時間,やり取りする人数が2つの群に比べ少ないことが明らかになった。
今後は,ネット依存傾向尺度によるアセスメントへの利用の検討やメディアリテラシー教育への応用の検討が必要である。