[PD013] 子どもの認知する家族関係がレジリエンスに与える影響
保護者の認知との比較の観点から
Keywords:家族関係, レジリエンス
問題
近年,適応にかかわる概念として,レジリエンが注目され,子どものレジリエンスに影響する要因として,良好な家族コミュニケーション(下川・室田,2007)が指摘されている。
しかし,良好な家族コミュニケーションとは,本来,それによって良好な家族関係が構築されるということを意味しており,家族関係から子どものレジリエンスへの影響を検討する必要性がある。
また,日常の家族関係の多くは,子どもと保護者の相互作用によって成り立っている。そのため,子どもと保護者,両者の視点から,家族関係がどうであるかを検討することも重要であろう。
そこで本研究では,家族関係が子どものレジリエンスに与える影響について,子どもおよびその保護者の認知の比較の観点から検討することを目的とした。
方法
調査対象はA県6校の中学1年生512名とその保護者512名。5月中旬に質問紙への回答を求めた。協力の得られた313名の回答を分析対象とした。測定尺度は,草田・岡堂(1993)のFACESⅢを参考に作成した家族関係尺度14項目,石毛・無藤(2005)を参考に作成したレジリエンス尺度23項目を用いた。レジリエンス尺度については,子どものみ回答を求めた。
結果と考察
はじめに,因子分析を行った。家族関係尺度は2因子構造を示し,情緒的つながりを表す因子を“凝集性”,柔軟な構造を表す因子を“適応性”と命名した。レジリエンス尺度は4因子構造を示し,それぞれ“自己志向力”“関係志向力”“忍耐力”“楽観的思考力”と命名した。
次に,子どもの認知する家族の凝集性因子得点・適応性因子得点から,保護者のそれぞれの因子得点を減じ,差得点を算出した。その平均は凝集性因子-.0025(SD=.92),適応性因子-.0029(SD=.87)であった。まず,差得点の有無(子どもと保護者の認知が一致している程度)がレジリエンスに及ぼす影響を検討するため,差得点を2乗し,その得点を高中低の3群に分けた。凝集性および適応性ごとに1要因3水準の分散分析を行った結果,各群間のレジリエンス各下位概念の得点に有意な差は見られなかった。そこで,子どもが保護者よりも肯定的に家族関係を認知しているほどレジリエンス得点が高いことを検討するため,先に求めた差得点を独立変数,レジリエンス各下位概念の得点を従属変数として重回帰分析を行った。その結果をFigure1に示す。凝集性の差得点においてのみ,自己志向力・関係志向力・忍耐力への有意な標準偏回帰係数が得られた。
以上の結果から,子どもが保護者よりも家族の凝集性を高く肯定的に認知しているほど,レジリエンスが高くなることが示された。すなわち,保護者が家族の凝集性を低く認知していても子どもが高く認知していれば,子どもにとって,家族コミュニケーションは適切で,そのことがレジリエンスを高める。また,保護者が凝集性を高く認知し子どもが低いと認知している場合,保護者は満足して子どもへの言動を適切に変化させず,子どもにとって家族コミュニケーションは不十分であり,レジリエンスは低くなるものと考えられる。
家族関係の,特に凝集性が子どもにとって十分であるのかどうかが,子どものレジリエンスに影響をもつことが示されたといえる。
近年,適応にかかわる概念として,レジリエンが注目され,子どものレジリエンスに影響する要因として,良好な家族コミュニケーション(下川・室田,2007)が指摘されている。
しかし,良好な家族コミュニケーションとは,本来,それによって良好な家族関係が構築されるということを意味しており,家族関係から子どものレジリエンスへの影響を検討する必要性がある。
また,日常の家族関係の多くは,子どもと保護者の相互作用によって成り立っている。そのため,子どもと保護者,両者の視点から,家族関係がどうであるかを検討することも重要であろう。
そこで本研究では,家族関係が子どものレジリエンスに与える影響について,子どもおよびその保護者の認知の比較の観点から検討することを目的とした。
方法
調査対象はA県6校の中学1年生512名とその保護者512名。5月中旬に質問紙への回答を求めた。協力の得られた313名の回答を分析対象とした。測定尺度は,草田・岡堂(1993)のFACESⅢを参考に作成した家族関係尺度14項目,石毛・無藤(2005)を参考に作成したレジリエンス尺度23項目を用いた。レジリエンス尺度については,子どものみ回答を求めた。
結果と考察
はじめに,因子分析を行った。家族関係尺度は2因子構造を示し,情緒的つながりを表す因子を“凝集性”,柔軟な構造を表す因子を“適応性”と命名した。レジリエンス尺度は4因子構造を示し,それぞれ“自己志向力”“関係志向力”“忍耐力”“楽観的思考力”と命名した。
次に,子どもの認知する家族の凝集性因子得点・適応性因子得点から,保護者のそれぞれの因子得点を減じ,差得点を算出した。その平均は凝集性因子-.0025(SD=.92),適応性因子-.0029(SD=.87)であった。まず,差得点の有無(子どもと保護者の認知が一致している程度)がレジリエンスに及ぼす影響を検討するため,差得点を2乗し,その得点を高中低の3群に分けた。凝集性および適応性ごとに1要因3水準の分散分析を行った結果,各群間のレジリエンス各下位概念の得点に有意な差は見られなかった。そこで,子どもが保護者よりも肯定的に家族関係を認知しているほどレジリエンス得点が高いことを検討するため,先に求めた差得点を独立変数,レジリエンス各下位概念の得点を従属変数として重回帰分析を行った。その結果をFigure1に示す。凝集性の差得点においてのみ,自己志向力・関係志向力・忍耐力への有意な標準偏回帰係数が得られた。
以上の結果から,子どもが保護者よりも家族の凝集性を高く肯定的に認知しているほど,レジリエンスが高くなることが示された。すなわち,保護者が家族の凝集性を低く認知していても子どもが高く認知していれば,子どもにとって,家族コミュニケーションは適切で,そのことがレジリエンスを高める。また,保護者が凝集性を高く認知し子どもが低いと認知している場合,保護者は満足して子どもへの言動を適切に変化させず,子どもにとって家族コミュニケーションは不十分であり,レジリエンスは低くなるものと考えられる。
家族関係の,特に凝集性が子どもにとって十分であるのかどうかが,子どものレジリエンスに影響をもつことが示されたといえる。