[PD014] テスト失敗経験にともなうネガティブ感情による動機づけ
学業場面における随伴経験に着目して
Keywords:ネガティブ感情, 達成目標動機づけ, 随伴経験
問題と目的
近年,感情的動機づけ研究が注目されている(Carver,2004;速水,2012)。本研究では,ネガティブ感情による動機づけの発生過程について,学業における随伴経験に着目し,どのように影響するかを検討する。
方法
調査対象と調査時期
私立高等学校1~3年生の6クラス,合計206名(男性135名,女性71名,平均年齢16.48歳,SD =1,04)の生徒を対象とした質問紙調査を実施した。2014年10月から12月にかけて3回の調査を行った。各調査は,中間テスト前(調査1),中間テスト後(調査2),期末テスト前(調査3)に行った。調査は匿名で行い,初回の調査で割り振った番号を用いてその後の質問紙を対応させた。
調査内容
学業場面における随伴経験(5項目) 豊田ら(2013)を参考に作成,5段階評定で回答を求めた(調査1で使用)。
中間テストの結果への認知(1項目) 英語(リーディング)の結果について聞く項目を作成,5段階評定で回答を求めた(調査2で使用)。
テスト後のネガティブ感情(10項目) Carver(2004)のネガティブ感情(怒り,悲しみ,失望感)を参考に,尺度項目を作成,6段階評定で回答を求めた(調査2で使用)。
達成目標動機づけ(18項目) Elliot(2011)の3×2 achievement goal modelを日本語訳し,教示を高校生向けに改変,5段階評定で回答を求めた(調査1~3で使用)。
結果と考察
まず,「学業場面における随伴経験」(以下,「学業随伴」と表記)のα係数を算出したところ一定の信頼性が示された(.73)。また,「テスト後のネガティブ感情」を当初想定していた因子に分類し,α係数を算出したところ高い信頼性が示された(.82~.89)。さらに,「達成目標動機づけ」の下位尺度ごとにα係数を算出したところ,一定の信頼性が示された(.74~.92)。
次に,各調査での「達成目標動機づけ」については,調査1の値を,調査2(「中間後」)・調査3(「期末前」)からそれぞれ引いた。また,「中間テストの結果への認知」に対して,1(「とても悪かった」)及び2(「悪かった」)を回答した者を,テスト失敗経験者とした(n =101)。さらに,「学業随伴」の中央値(3.60)を算出し,高群と低群に分類した。
その後,学業随伴高群と低群ごとに,「テスト後のネガティブ感情」と「達成目標動機づけ」の相関分析を行った(Table1)。その結果,学業随伴高群における「中間後」の「他者回避」以外すべての動機づけに有意な正の相関が示された(r =.30~.43)。一方,「期末前」では,課題接近目標動機づけの「怒り(r =.32)」「失望感(r =.32)」にのみ有意な正の相関が見られた。これは,課題接近は教科そのものへの動機づけであり,中間テスト後のネガティブ感情が,期末テストの前の動機づけに影響しやすかったためだと考えられる。また,期末前のその他の動機づけには,期間が空いているということもあり,ネガティブ感情の影響が弱まったのではないかと推測される。
なお,学業随伴低群においては有意な相関は示されなかった。これは,随伴経験が少ないと,否定的な出来事を乗り越えたいとする「ポジティブ感情を求める気持ち」(速水,2012)が持てず,ネガティブ感情と作用することがなく,動機づけに影響しなかったためであると考えられる。
近年,感情的動機づけ研究が注目されている(Carver,2004;速水,2012)。本研究では,ネガティブ感情による動機づけの発生過程について,学業における随伴経験に着目し,どのように影響するかを検討する。
方法
調査対象と調査時期
私立高等学校1~3年生の6クラス,合計206名(男性135名,女性71名,平均年齢16.48歳,SD =1,04)の生徒を対象とした質問紙調査を実施した。2014年10月から12月にかけて3回の調査を行った。各調査は,中間テスト前(調査1),中間テスト後(調査2),期末テスト前(調査3)に行った。調査は匿名で行い,初回の調査で割り振った番号を用いてその後の質問紙を対応させた。
調査内容
学業場面における随伴経験(5項目) 豊田ら(2013)を参考に作成,5段階評定で回答を求めた(調査1で使用)。
中間テストの結果への認知(1項目) 英語(リーディング)の結果について聞く項目を作成,5段階評定で回答を求めた(調査2で使用)。
テスト後のネガティブ感情(10項目) Carver(2004)のネガティブ感情(怒り,悲しみ,失望感)を参考に,尺度項目を作成,6段階評定で回答を求めた(調査2で使用)。
達成目標動機づけ(18項目) Elliot(2011)の3×2 achievement goal modelを日本語訳し,教示を高校生向けに改変,5段階評定で回答を求めた(調査1~3で使用)。
結果と考察
まず,「学業場面における随伴経験」(以下,「学業随伴」と表記)のα係数を算出したところ一定の信頼性が示された(.73)。また,「テスト後のネガティブ感情」を当初想定していた因子に分類し,α係数を算出したところ高い信頼性が示された(.82~.89)。さらに,「達成目標動機づけ」の下位尺度ごとにα係数を算出したところ,一定の信頼性が示された(.74~.92)。
次に,各調査での「達成目標動機づけ」については,調査1の値を,調査2(「中間後」)・調査3(「期末前」)からそれぞれ引いた。また,「中間テストの結果への認知」に対して,1(「とても悪かった」)及び2(「悪かった」)を回答した者を,テスト失敗経験者とした(n =101)。さらに,「学業随伴」の中央値(3.60)を算出し,高群と低群に分類した。
その後,学業随伴高群と低群ごとに,「テスト後のネガティブ感情」と「達成目標動機づけ」の相関分析を行った(Table1)。その結果,学業随伴高群における「中間後」の「他者回避」以外すべての動機づけに有意な正の相関が示された(r =.30~.43)。一方,「期末前」では,課題接近目標動機づけの「怒り(r =.32)」「失望感(r =.32)」にのみ有意な正の相関が見られた。これは,課題接近は教科そのものへの動機づけであり,中間テスト後のネガティブ感情が,期末テストの前の動機づけに影響しやすかったためだと考えられる。また,期末前のその他の動機づけには,期間が空いているということもあり,ネガティブ感情の影響が弱まったのではないかと推測される。
なお,学業随伴低群においては有意な相関は示されなかった。これは,随伴経験が少ないと,否定的な出来事を乗り越えたいとする「ポジティブ感情を求める気持ち」(速水,2012)が持てず,ネガティブ感情と作用することがなく,動機づけに影響しなかったためであると考えられる。