[PD016] 教員の自己形成を支援する熟達化モデルの開発(5)
キーワード:教員養成, 研修, 教職キャリア発達
問題と目的
本研究では,これまでに教諭を対象とした職務上の葛藤・困難感や教職に対する満足度についての数量調査を行ってきた(石上,2011,2012,2013,2014)。その結果,各コホートそれぞれに課題があること,それを改善するためには,具体的な教員の職務上のニーズに合致した,養成・採用・研修のあり方について,質的に検討する必要があることが明らかになった。そこで,本研究では,1)教員イメージおよび学習観に関する認識,2)職務上の葛藤・困難認識や問題解決手法,3)問題解決リソース水準と活用・転用可能スキルなど職務スキル,の3点について小学校教諭を対象に行った質的調査の一部を紹介する。
方法
○調査対象者:関東地方・近畿地方に勤務する小学校教諭18名(初任者6名,若手5名,中堅5名,ベテラン2名)
○調査・分析方法:半構造化面接法による個別インタビュー調査,1件あたり60分,調査協力者の職場などプライバシーの確保された個室で実施した。インタビューはICレコーダーで録音し,それを文字化した逐語記録を作成した。その後,ある特定の話題について繰り返される発話群を抽出して取り出し,音声的な抑揚や間を加筆した。これを質的コード化の技法(Coffey & Atkinson. 1996;メイナード. 1993),および質的分析ソフト(IBM SPSS Text Analytics for Surveys)で分類した。
○質問項目:数量調査結果と白井(1998)を基に,以下5項目を設定した。1)過去の葛藤・困難事例の中で最も印象に残った事例,2)1)についての対応および解決リソース,3)過去の葛藤・困難事例からの学びとその転用可能性,4)今後自分が教員として熟達化するために必要なもの,5)これからの教員養成・採用・研修における改善点
結果と考察
今後,自分が教員として熟達化するために必要なものについて,AさんとBさんの発話事例を以下に示す。両者に共通していることは,日々の多忙感であり,物理的・精神的な余裕のなさである。彼らにとっては,今,ここで起こっている事象に対応することが最優先であり,その仕事量・質も,インタビュアーの予想をはるかに上回るものであった。このような状況ストレス要因から,心身に不調をきたす教員も近年増加傾向にある。これらの課題は,教員個々人の努力によって改善できるものではない。特に研修については,学校現場での加配など,一部に弊害もあることをふまえて,研修機会・内容には教員の職務上のニーズに合致したものを取り入れる必要があるだろう。
※本研究の進捗状況は,以下URLで公開している
http://kyoto-seika.org/kaken-manabi/index.html
本研究では,これまでに教諭を対象とした職務上の葛藤・困難感や教職に対する満足度についての数量調査を行ってきた(石上,2011,2012,2013,2014)。その結果,各コホートそれぞれに課題があること,それを改善するためには,具体的な教員の職務上のニーズに合致した,養成・採用・研修のあり方について,質的に検討する必要があることが明らかになった。そこで,本研究では,1)教員イメージおよび学習観に関する認識,2)職務上の葛藤・困難認識や問題解決手法,3)問題解決リソース水準と活用・転用可能スキルなど職務スキル,の3点について小学校教諭を対象に行った質的調査の一部を紹介する。
方法
○調査対象者:関東地方・近畿地方に勤務する小学校教諭18名(初任者6名,若手5名,中堅5名,ベテラン2名)
○調査・分析方法:半構造化面接法による個別インタビュー調査,1件あたり60分,調査協力者の職場などプライバシーの確保された個室で実施した。インタビューはICレコーダーで録音し,それを文字化した逐語記録を作成した。その後,ある特定の話題について繰り返される発話群を抽出して取り出し,音声的な抑揚や間を加筆した。これを質的コード化の技法(Coffey & Atkinson. 1996;メイナード. 1993),および質的分析ソフト(IBM SPSS Text Analytics for Surveys)で分類した。
○質問項目:数量調査結果と白井(1998)を基に,以下5項目を設定した。1)過去の葛藤・困難事例の中で最も印象に残った事例,2)1)についての対応および解決リソース,3)過去の葛藤・困難事例からの学びとその転用可能性,4)今後自分が教員として熟達化するために必要なもの,5)これからの教員養成・採用・研修における改善点
結果と考察
今後,自分が教員として熟達化するために必要なものについて,AさんとBさんの発話事例を以下に示す。両者に共通していることは,日々の多忙感であり,物理的・精神的な余裕のなさである。彼らにとっては,今,ここで起こっている事象に対応することが最優先であり,その仕事量・質も,インタビュアーの予想をはるかに上回るものであった。このような状況ストレス要因から,心身に不調をきたす教員も近年増加傾向にある。これらの課題は,教員個々人の努力によって改善できるものではない。特に研修については,学校現場での加配など,一部に弊害もあることをふまえて,研修機会・内容には教員の職務上のニーズに合致したものを取り入れる必要があるだろう。
※本研究の進捗状況は,以下URLで公開している
http://kyoto-seika.org/kaken-manabi/index.html