日本教育心理学会第57回総会

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ポスター発表

ポスター発表 PD

2015年8月27日(木) 10:00 〜 12:00 メインホールA (2階)

[PD053] 学級集団状態と生徒の学級適応との関連Ⅲ

学級機能因子がQ-U 因子に及ぼす影響

松崎学1, 折笠国康2, 新館啓一#3 (1.山形大学, 2.郡山女子大学短期大学部, 3.酒田市教育委員会)

キーワード:学級機能, 学級適応, 中学生Q-U

【問題と目的】
学級集団システムは,主に教師-生徒関係および生徒-生徒関係からなる。アドラーの個人心理学の立場から,生徒間の関係性に影響を与えているのは,教師-生徒関係であると考えられる。
前研究Ⅰ(松﨑・折笠・新館,2015)において,中学校での学級機能因子は,「生徒の主体性を尊重した教師のかかわり(以下,教師のかかわりと略する)」・「集団凝集性」・「有能感・貢献感」および「相互尊重の問題解決」の4因子から構成されることがわかった。小学校における3因子構造(松﨑,2006,2013)とは異なり,上記第3因子と第4因子が構成されたことを意味する。
そして,小学校において,それらの学級機能因子は,その集団で育つ児童の個人特性に影響を与えていることもわかっている(松﨑,2007,2013)。さらに,STEP受講群と非受講群の間で,その影響が異なることもわかっている。
本研究では,中学校での学級機能因子が,Q-U因子にどのような影響を与えているのか,とりあえず重回帰分析で検討することを目的とする。
【方 法】
対象者等,すべて研究Ⅰと同様である。
【結 果】
学級機能因子がQ-U因子に及ぼす影響を検討するために,ステップワイズ法による重回帰分析を実施した。その結果を,表6に示す。
学級機能因子がQ-U「友人関係」に及ぼす影響
Q-U因子「友人関係」には,「有能感・貢献感」と「凝集性」因子がある程度の強さで正の影響を与えていることがわかった。
学級機能因子がQ-U「学習意欲」に及ぼす影響
Q-U因子「学習意欲」には,「教師のかかわり」と「有能感・貢献感」因子がある程度の強さで正の影響を与えていること,「問題解決」因子が非常に弱いが負の影響を与えていることがわかった。
学級機能因子がQ-U「教師との関係」に及ぼす影響
Q-U因子「教師との関係」には,「教師のかかわり」因子が中程度の強さで正の影響を与えていること,「有能感・貢献感」と「問題解決」因子が弱い正の影響を与えていることがわかった。
学級機能因子がQ-U「学級との関係」に及ぼす影響
Q-U因子「学級との関係」には,「凝集性」因子が中程度の強さで正の影響を与えていること,「有能感・貢献感」と「教師との関係」因子が弱い正の影響を与えていることがわかった。
学級機能因子がQ-U「進路意識」に及ぼす影響
Q-U因子「進路意識」には,「教師のかかわり」と「有能感・貢献感」因子がある程度の強さで正の影響を与えていることがわかった。
学級機能因子がQ-U「承認得点」に及ぼす影響
Q-U因子「承認得点」には,「有能感・貢献感」因子が中程度の強さで正の影響を与えていること,「教師との関係」と「凝集性」因子が弱い正の影響を与えていることがわかった。
学級機能因子がQ-U「被侵害得点」に及ぼす影響
Q-U因子「被侵害得点」には,「有能感・貢献感」と「凝集性」因子がある程度の強さで負の影響を与えていることがわかった。
【考 察】
学級機能因子のQ-U因子への影響に関しては,全体的にはほぼ妥当な影響が見出されたと言える。
他方,「進路意識」などの低い説明率に関しても妥当なものと言える。ただ,「被侵害得点」および「友人関係」に関しては,学級機能因子がそれほどの影響を与えていないことについては,標本集団の学級状態との関係によるものと考えられる。
なお,「教師のかかわり」の直接的な影響が見られたのは,「学習意欲」・「教師との関係」・「学級との関係」・「進路意識」・「承認得点」であり,「友人関係」および「被侵害得点」には有意なパスが見出されなかった。ただ,今後の分析である共分散構造分析を通して,「凝集性」ないしは「有能感・貢献感」を介しての間接効果として検討することができるかもしれない。
そのほか考えられることは,本研究における「教師のかかわり」因子は民主的な関係性の意味合いを込めた項目内容なので,そういった側面よりもむしろ,管理的なアプローチなどが生徒同士の関係に影響を与えている可能性が大きい。したがって,生徒の主体性を尊重した教師のかかわりの影響があればQ-U因子「教師との関係」に効果的であることを意味するものであると言える。