The 57th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表

ポスター発表 PE

Thu. Aug 27, 2015 1:30 PM - 3:30 PM メインホールA (2階)

[PE010] 私立中学校において心理教育を根づかせるための工夫と課題

5年間の実践を経た教師からの評価に焦点を当てて

中根由香子1, 鈴木水季2, 南光秀人#3 (1.お茶の水女子大学大学院, 2.郁文館夢学園, 3.郁文館夢学園)

Keywords:心理教育, 教師, 評価

問題と目的
中学生を対象にした対人関係等に関する心理教育プログラムが実践されており(荒木・窪田・小田,2010),スクールカウンセラー(以下,SC)が提供するサービスの一つとしても要請が高まっている(亀田ら,1999)。しかし,心理教育実践を学校現場でいかに根づかせながら継続していくかは課題である。筆者らは,私立中高一貫校の中学部において5年間実践を継続してきた。実践を積み重ねるにあたり,毎年課題を検討し,それに対して工夫を行ってきた(表1)。本稿では5年間の実践を振り返って,心理教育を学校現場に根づかせるための工夫と課題について,教師からの評価に焦点を当てて検討する。
方法
対象 私立中高一貫校の中学部で心理教育実施経験のある教師
アンケート 心理教育導入4年目の年度末実施。15名(平均45.4歳,平均教師歴19.6年,平均心理教育経験1.8年)に次の項目,1)心理教育を実施したタイミング・時期,2)年間の頻度・回数,3)SCから教師への説明会,4)心理教育のねらいは教師にとってわかりやすかったか,5)内容は生徒の実態と合っていたか,6)内容は日頃の指導に活かせたか,7)実施の必要性,8)自分が実施できそうかについて1)~7)が「非常に満足」「満足」「課題あり」「不満」の4件法,8)は「できる」「課題あり」「できない」の3件法でたずねた。
インタビュー 心理教育導入5年目の年度末実施。11名(平均43.9歳,平均教師歴16.6年,平均心理教育経験2.4年)に半構造化面接により以下の質問を行った。1)心理教育を行うことで,教師や生徒にとって何か良いこと,あるいは良くないことがあったか,2)あった場合どんなことか,3)道徳や特別活動等でどのような内容の授業があると良いか。アンケートとインタビューから,教師からの評価を基に5年間の実践について検討した。
結果と考察
アンケートによる評価 回収率60%。質問項目1)4)6)7)で100%,2)3)で93%,5)で64%の教師が「非常に満足」「満足」と回答した。8)は53%が「できる」,47%が「課題あり」と回答したが,いずれの教師からも「担任でもできると思うが普段生徒と接していないSCからの指導も有効と感じる」という回答が得られた。多くの教師が心理教育の実践を肯定的に評価したと考えられる。一方で,生徒の実態に即していること,担任でもできる内容かどうかには課題があることが示唆された。
インタビューによる評価 インタビューから以下のカテゴリーが得られた,「肯定的な評価」の下位カテゴリーとして〈生徒への良い影響〉〈実態との適合〉〈生徒理解の促進〉〈道徳授業活用のサポート〉等,「課題」の下位カテゴリーとして〈実態との不適合〉〈教師の意識との不一致〉等。心理教育により相手のことを気遣う機会の増加など生徒への良い影響を感じ,道徳授業で教えたいことの具体策として心理教育を使えた等があったことがわかった。課題としては,日々変化する生徒の実態に合わせる工夫が必要であることが示唆された。
総合考察
本実践において,導入3年目まではSCと教育相談担当教員が評価を行ってきた。しかし,心理教育についての教師の認識は様々であり,アンケートやインタビュー等による,現場の教師の評価をふまえた課題検討が真の意味で心理教育を根づかせることにつながると考えられる。本研究ではアンケートとインタビューにより5年間の実践を経た教師からの評価を検討した。結果,心理教育実践に肯定的な評価が得られたと考えられる。特に,生徒への良い影響,普段の教科指導では見られない生徒の様子が見られたこと,生徒理解の促進,心理教育の提案により道徳授業の活用につながること等が挙げられた。一方,心理教育が生徒の実態に即しているかについては教師によって意見が分かれた。この違いは教師の考え方や担当クラスの状況により生じたと考えられる。教師と協働しながら,生徒の実態に即した内容にするための工夫が今後も必要である。また,今後は心理教育の受け手である生徒自身による評価も含めた検証が必要である。