The 57th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表

ポスター発表 PE

Thu. Aug 27, 2015 1:30 PM - 3:30 PM メインホールA (2階)

[PE020] 動機づけ調整方略が学習行動に及ぼす影響

高校生を対象とした縦断的検討

遠藤志乃1, 中谷素之2 (1.名古屋大学大学院, 2.名古屋大学大学院)

Keywords:自己調整学習方略, 学習の持続性, 高校生

問題と目的
自律的学習者の育成を考える時,やる気が一時的になくなっても「自分でやる気を高め,学習に向かうことができるかどうか」は重要なポイントとなる。やる気が出ないとき自分のやる気を調整して学習に向かわせるためのやり方は「動機づけ調整方略」と呼ばれ(Wolters, 1998, 2003),自己調整学習の枠組みにおいて検討されてきた。
動機づけ調整方略は学業課題に対する努力や粘り強さを促進し,先延ばし行動動機づけ調整方略は学業課題に対する努力や粘り強さを促進し,先延ばし行動のような不適応的学習行動を防ぐことが示されている(伊藤・神藤2003b; 梅本・田中, 2012; Wolters, Pintrich, & Karabenick, 2005)。しかし,これらの先行研究では一時点の調査による測定であるため,厳密な因果関係を特定することはできない。従って,本研究では,縦断的な調査によって動機づけ調整方略が学習の持続性に与える影響を検討することを目的とする。
方 法
調査対象者 三重県内の高校生2,3年生512名を対象とした。分析には2時点で対応のついた412名を対象とした。
調査時期 Time1: 2014年7月中旬
Time 2: 2014年12月上旬
質問紙 ①動機づけ調整方略尺度 伊藤・神藤(2003)と梅本・田中(2013)を参考に作成した(26項目)。②持続性の欠如 山下(1985)の持続性欠如5項目を用いた。
結果と考察
尺度構成 Time1において動機づけ調整方略尺度26項目に対して,探索的因子分析と信頼性の検討を行い,将来の大学進学などのことを考えてやる気を高める達成想像方略,課題を面白くしようと工夫することでやる気を高める興味高揚方略,成績を考えることでやる気を高める成績重視方略,友人などと一緒に勉強することでやる気を高める協同方略の4因子を採用した。α係数の値は順にα=.78, .74, .76, .72であった。Time 2において確認的因子分析を行ったところ,概ね満足できる値が得られ(GFI=.922, AGFI=.880, CFI=.909, RMSEA=.077),各因子のα係数もTime 1とほぼ同様の値が得られたため,Time 2においてもTime 1で得られた因子構造を用いて分析を行った。
因果モデルの検討 Time 1における動機づけ調整方略がTime 2における持続性の欠如にどのように影響を与えているのか明らかにするため,交差遅延効果モデルを用いた共分散構造分析を行った。
その結果,Time 1の持続性の欠如はTime 2の興味高揚方略に影響を与えておらず,Time 1の興味高揚方略はTime 2の持続性の欠如に抑制的影響を与えていた(Figure 1)。また,Time 1の持続性の欠如はTime 2の達成想像方略に影響を与えておらず,Time 1の達成想像方略はTime 2の持続性の欠如に抑制的影響を与えていた(Figure 2)。つまり,将来の大学進学について考えたり,課題を面白くしようと工夫してやる気を高めることは,後の学習に対する持続性の欠如を抑制する効果があることが示され,先行研究を支持する結果となった。