[PE024] 口頭による状況説明におけるわかりやすさの規定要因について
Keywords:口頭説明, 状況説明
状況や出来事を口頭で説明することは,面接や日常会話など数多く行われている。
口頭での状況説明については,目撃証言などの研究分野において,証言の信憑性や記憶の観点から,情報をいかに“正確に”伝えるかについて盛んに検証されている(菊野(1995),高木,辻(2009)など)。しかし,証言のわかりやすさ,すなわち,状況を相手にいかに“わかりやすく”説明するかについて検証した例は少ない。
そこで本研究では,大学生を対象として,状況をわかりやすく伝えるための話し手の要因について検討する。具体的には,わかりやすさの規定要因として「話の順序(話の結論的な内容の位置)」「代名詞,指示語の多少」「言葉の繰り返しの量の多少」を取り上げ,これらが実際にわかりやすさに影響を与えるかどうかを検証する。
【実 験】
対象:大学生56名
要因:話の順序(段落内キーセンテンス後・段落内キーセンテンス前(以下,KS後・前))×代名詞・指示語の量(少・多)×言葉の繰り返し(少・多)の3要因で,いずれも参加者内要因である。
材料:ボイスレコーダー,練習用音声,本番用音声(事前に収録した「高校生活で印象に残っている出来事」の発話から2つ(話題1「サンタクロースについて」,話題2「応援団について」)を選んだ。この2つについて,各要因の組合せごとに「話の順序」「代名詞・指示語の量」「言葉の繰り返しの量」を改変したものを収録し直し,本番用音声とした。1つの話題につき8種類,計16種類を用意した),評定用紙,評定理由回答用紙,質問紙
手続き:実験は,呈示された音声(各話題について8個ずつ,合計16個)の評定を行った。評定は「話のわかりやすさ」「話の聴きやすさ」「話の好感度」の3項目について7段階評定で回答した。その後,各話題(8個)の中で最も評定の良くなかったものについての理由について評定理由回答用紙に回答した。最後に,実験参加者自身の話し方における「話す順序」「代名詞・指示語の量」「話の繰り返しの量」についての質問紙に5段階評定で回答した。
【結果と考察】
「話のわかりやすさ」の評定結果について,話の順序×代名詞・指示語の量×話の繰り返しの量を3要因とし,分散分析を行った結果,話の順序において話題1,2共に1%水準で有意な主効果が見られ(話題1:: F (1.55)=43.33, p<.01 話題2:F (1.55)=40.13, p<.01),いずれもKS後の方が平均値が高かった(表1)。これは,「話の聞きやすさ」「好感度」においても同様の結果であった。このことから,口頭で状況説明を行う際は,付属的な説明や細かい描写をはじめに行い,文末に重要な説明(KS)を持ってくる方が聴き手にわかりやすく,聴きやすく伝わり,好感が持てることが示された。
また,評定理由課題の結果について各項目の回答率を集計した結果,良くないと評定した理由に「話の順序がバラバラである」と回答した割合が,話題1は全体の45%,話題2は28%であったことから,KSを言った後に付属的な説明をすると,聴き手は順序が逆転していると感じ,わかりにくいと判断することが考えられる。
さらに,質問紙調査の結果をもとに,自分の話し方(KS後群・KS前群)×評定課題で提示された話の構成(KS後・KS前)の二要因分散分析を行った結果,自分の話し方の主効果はみられず,話の構成の主効果が1%水準で有意であったことから(F (1.48)=32.05, p<.01),自分の話し方の特徴とわかりやすいと判断する話の構成との間に関係はないことが示された。すなわち,音声による状況説明の場合,自分の話し方の特徴に関係なく,誰もがKSを後に述べる状況説明を「わかりやすい」と感じるのである。
口頭での状況説明については,目撃証言などの研究分野において,証言の信憑性や記憶の観点から,情報をいかに“正確に”伝えるかについて盛んに検証されている(菊野(1995),高木,辻(2009)など)。しかし,証言のわかりやすさ,すなわち,状況を相手にいかに“わかりやすく”説明するかについて検証した例は少ない。
そこで本研究では,大学生を対象として,状況をわかりやすく伝えるための話し手の要因について検討する。具体的には,わかりやすさの規定要因として「話の順序(話の結論的な内容の位置)」「代名詞,指示語の多少」「言葉の繰り返しの量の多少」を取り上げ,これらが実際にわかりやすさに影響を与えるかどうかを検証する。
【実 験】
対象:大学生56名
要因:話の順序(段落内キーセンテンス後・段落内キーセンテンス前(以下,KS後・前))×代名詞・指示語の量(少・多)×言葉の繰り返し(少・多)の3要因で,いずれも参加者内要因である。
材料:ボイスレコーダー,練習用音声,本番用音声(事前に収録した「高校生活で印象に残っている出来事」の発話から2つ(話題1「サンタクロースについて」,話題2「応援団について」)を選んだ。この2つについて,各要因の組合せごとに「話の順序」「代名詞・指示語の量」「言葉の繰り返しの量」を改変したものを収録し直し,本番用音声とした。1つの話題につき8種類,計16種類を用意した),評定用紙,評定理由回答用紙,質問紙
手続き:実験は,呈示された音声(各話題について8個ずつ,合計16個)の評定を行った。評定は「話のわかりやすさ」「話の聴きやすさ」「話の好感度」の3項目について7段階評定で回答した。その後,各話題(8個)の中で最も評定の良くなかったものについての理由について評定理由回答用紙に回答した。最後に,実験参加者自身の話し方における「話す順序」「代名詞・指示語の量」「話の繰り返しの量」についての質問紙に5段階評定で回答した。
【結果と考察】
「話のわかりやすさ」の評定結果について,話の順序×代名詞・指示語の量×話の繰り返しの量を3要因とし,分散分析を行った結果,話の順序において話題1,2共に1%水準で有意な主効果が見られ(話題1:: F (1.55)=43.33, p<.01 話題2:F (1.55)=40.13, p<.01),いずれもKS後の方が平均値が高かった(表1)。これは,「話の聞きやすさ」「好感度」においても同様の結果であった。このことから,口頭で状況説明を行う際は,付属的な説明や細かい描写をはじめに行い,文末に重要な説明(KS)を持ってくる方が聴き手にわかりやすく,聴きやすく伝わり,好感が持てることが示された。
また,評定理由課題の結果について各項目の回答率を集計した結果,良くないと評定した理由に「話の順序がバラバラである」と回答した割合が,話題1は全体の45%,話題2は28%であったことから,KSを言った後に付属的な説明をすると,聴き手は順序が逆転していると感じ,わかりにくいと判断することが考えられる。
さらに,質問紙調査の結果をもとに,自分の話し方(KS後群・KS前群)×評定課題で提示された話の構成(KS後・KS前)の二要因分散分析を行った結果,自分の話し方の主効果はみられず,話の構成の主効果が1%水準で有意であったことから(F (1.48)=32.05, p<.01),自分の話し方の特徴とわかりやすいと判断する話の構成との間に関係はないことが示された。すなわち,音声による状況説明の場合,自分の話し方の特徴に関係なく,誰もがKSを後に述べる状況説明を「わかりやすい」と感じるのである。