The 57th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表

ポスター発表 PE

Thu. Aug 27, 2015 1:30 PM - 3:30 PM メインホールA (2階)

[PE028] 受動的学習者の学習に対する構え

芝崎良典 (くらしき作陽大学)

Keywords:アクティブ・ラーニング, 自己教育力

目 的
知識の伝達・注入を中心とした従来の大学の授業を,学生が能動的に学修していく場に転換していくことが現在求められている。学習者が単に授業を聴いているだけではなく,聴く以上の活動を行い,その活動に能動的にかかわっていき,活動内容についてよく考えて行くような仕掛けを教員が行うこと,すなわちアクティブ・ラーニング型授業を展開するよう求められている。多くの大学でアクティブ・ラーニング型授業の導入が進められているところである。
アクティブ・ラーニング型授業のキー概念のひとつにinvolvementがある。学生を授業に巻き込んで行くことが学生の能動的学修につながると考えられている。しかしながら,同じ活動の機会があっても,ある学生は積極的に関与しようとするが,他の学生は受動的なかかわりに終始することは十分にありうる。学習者の学習活動に対する構えのちがいによって,授業における活動への関与度にちがいが生じるであろう。本研究では,授業で与えられた自主的な実習への参加頻度から,調査対象者を受動的学習者と能動的学習者に分け,両群間に学習への構えに差があるかどうかを調べた。
方 法
調査対象者 大学生73名。授業時間外で大学の附属幼稚園に観察実習を行う機会を設けた。1ヶ月の期間中,何回,観察実習を行ったか記録した。学生たちは平均2.2回観察実習に参加していた。一度も観察実習を行わなかった者を受動的学習者とした(N=23)。一方,5回以上行った者を能動的学習者とした(N=19)。
自己教育力尺度 森ら(2000)が開発した自己教育力尺度を用いた。35の質問項目について,「はい」か「いいえ」で答える尺度である。自己教育力として7つの特性(課題意識,主体的思考,学習の仕方,自己評価,計画性,自主性,自己実現)を想定しており,それぞれ5項目からなる。
結果と考察
各学習への構えの自己教育力の各特性の得点の平均値を表1に示した。受動的学習者と能動的学習者の間で,自己教育力尺度の特性の値にちがいがあるかWelchの t 検定を用いて検討した。結果,課題意識と自己評価の特性について,受動的学習者の特性の値は能動的学習者よりも低かった(t(39.72)=-2.32, p=.025, t(39.27)=-2.59, p=.01). 他の特性の値については,両群間にちがいはなかった。「課題意識」は,学習活動に対してどの程度積極的に関与するかと対応する特性であるし,「自己評価」は,学習活動についてのメタ認知活動と対応する特性である。いずれの特性も授業活動に能動的にかかわり,能動的学修を実現するために不可欠な要素である。受動的学習者は,これらふたつの特性の得点がともに低い。アクティブ・ラーニング型授業を展開する際には,このような受動的学習者が能動的学習者とともに教室にいることを予想,考慮して授業計画をたてる必要がある。