The 57th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表

ポスター発表 PE

Thu. Aug 27, 2015 1:30 PM - 3:30 PM メインホールA (2階)

[PE035] 進学校と工業高校の生徒の未来展望に関する比較研究

陳晶晶1, 茂呂雄二2 (1.筑波大学, 2.筑波大学)

Keywords:未来展望, 希望, 心配

高校時代は,ライフコースにおける,最初の重要な選択が迫る時期とされるため(吉川,2001),従来,高校生の未来展望に多くの注目が集まってきた。本研究は,異なる学校環境によって高校生の抱える未来像がどう異なるかについて吟味するため,進学校と工業高校の生徒の未来への希望と心配を調査した。
方 法
調査協力者:茨城県内にある進学校の高校生1~3年生236名,及び東京都の工業高校生1~3年生500名であった。
調査内容:「あなたの未来への希望はなんですか」(希望);「その希望を実現するために,何か心配なことがありますか」(心配)
結果・考察
収集した記述内容について,まずKJ法を援用しカテゴリ化の作業を行った。両学校の分類結果に,大きな相違が見られず,全体的に類似している(Table 1)。
思春期の子供の希望と不安について,従来このような主題的アプローチを用いる検討が数多く存在する(Table 2)。その中で,異なる国と調査集団を対象に調べた結果にも関わらず,主な展望主題が変わらないことが示されてきた。Seginer(2009)は従来の各研究で得られた分類結果を整理し,希望と不安の展望主題を,進学や就職,結婚など,人生の発達課題にかかわる内容を表す「展望的ライフコース」,また娯楽や個人の成長,社会や国などの集団に関わる展望内容を表す「実存的カテゴリ」といった二つの側面にまとめた。本研究で得られた両学校の分類カテゴリは,ある程度Seginer(2009)のこの結論を裏付けた結果と考える。
一方,進学校と工業高校の展望内容の相違を比較してみると,まず,希望と心配の分類カテゴリの中で,両学校とも「希望なし」と「心配なし」が得られたが,工業高校では,この二つのカテゴリでの回答比率が,それぞれ分類したすべてのカテゴリの中で最も高かった。カテゴリの構成内容を見ると,「(希望が)ない」といった回答以外に,無回答や「分からない」といった反応も多く見られた(Table 3)。
Table 2に示されるように,従来,主題的アプローチによる希望の検討は,生活領域を軸に分類した展望内容またそれぞれの展望領域における内容の密度についての議論に止まっている。しかし,今回の調査で得られた「希望なし」のカテゴリで示唆されたように,このようなアプローチのもとに,希望について何か具体的なイメージとして挙げられない子供たちが,この分析の対象からは除外されてしまっている。無回答や「わからない」と答えた子供たちの中で,もし希望が明確なイメージとして存在していないのであれば,希望は具体的な目標以外にどんな存在の仕方が考えられるのか。あるいは,そもそも工業高校の生徒において,希望はどのように捉えられているのか。この2点について,今後インタビュー調査など,調査方法を工夫して検討する必要性があると考える。このような検討は,希望概念の捉えなおしを促し,希望研究の領域に新たな視点と知見を与えるだろう。
引用文献
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吉川徹(2001)ジェンダー意識の男女差とライフコース・イメージ 尾嶋史章(編著) 現代高校生の計量社会学一進路・生活・世代一 ミネルヴァ書房