日本教育心理学会第57回総会

講演情報

ポスター発表

ポスター発表 PE

2015年8月27日(木) 13:30 〜 15:30 メインホールA (2階)

[PE044] 小学校高学年の学習コンピテンスの規定要因

3年間の縦断的データから

宮本友弘1, 相良順子2, 倉元直樹3 (1.聖徳大学, 2.聖徳大学, 3.東北大学)

キーワード:学習コンピテンス, 小学生, 学業成績

目的
学習コンピテンスと学業成績との間には両方向の相互作用的影響があるという(外山,2004)。小学校6年間はどのような様相を示すのであろうか。
この点について,宮本他(2012)の小学4年生~6年生を対象にした調査によれば,当該学年時の両者の相関は.590~.712と比較的強い相関であった。一方では,低学年時の成績から予測される当該学年時の成績と実際の成績の差(残差)が大きいほど,学習コンピテンスが高かった。このことは,低学年時のがんばりが高学年時の学習コンピテンスを形成し,高学年時の成績を支えることを示唆するものである。本研究では,この予想を縦断的データによって検討する。
方法
調査対象 私立小学校の2008年度入学者77名(男子32名,女子45名)。2012~2014年の3年間,毎年3月に以下の質問紙を実施し,欠損値のない66名を分析対象とした。
質問紙 児童用コンピテンス尺度(桜井,1992)の下位尺度である,学習コンピテンスを使用した。10項目,4件法による回答。
学業成績 調査協力校において1年時から毎年2月に実施している教研式標準学力検査NRTのうち,国語と算数の結果(全国基準による偏差値)を使用した。
手続き クラスごとに担任が質問紙を配布,回収した。
結果・考察
学習コンピテンスの学年変化
TABLE 1は男女別に4年~6年時の学習コンピテンス尺度得点の平均と標準偏差を示したものである。性別×学年による分散分析の結果,性別の主効果のみ有意で,男子が女子よりも高かった(F(1, 64)=11.90,p<.01)。男女ともに4年生以降の学習コンピテンスは安定しているといえる。
そこで,各学年間の相関係数を求めると.585~.725(いずれもp<.01)の比較的強い相関がみられた。主成分分析を行った結果,第1主成分の説明率が78.00%であり,1因子構造が確認された。また,内的一貫性をみるとα=.855であった。以下の分析では第1主成分得点を使用することとした。
学業成績と学習コンピテンスの関連
各学年時の学業成績と学習コンピテンスの相関係数を求めた結果,FIGURE 1の通りとなった(いずれもp<.01)。国語,算数ともに4年生以降の相関は比較的高い水準で推移するが,国語では3年から4年にかけて強くなり,一方,算数では1年から4年まで漸進的に強くなる傾向にあった。このことから,1年から3年までの成績の変化が,4年時以降の安定した学習コンピテンスを規定する可能性が考えられる。
そこで,各学年の成績から予測される次年時の成績と実際の成績の差と,学習コンピテンスの相関を求めた結果,TABLE 2の通りとなった。国語では3年から4年の成績が,算数では1年から3年までの毎年の成績が,予測よりもプラスに変化するほど(マイナスに変化しないほど),4年時以降の安定した学習コンピテンスを形成することが示唆された。