[PE069] ポジティブな心理的敏感さがレジリエンスに及ぼす影響
ASD傾向の高さと本来感との関連
キーワード:ポジティブな心理的敏感さ, レジリエンス, 本来感
問題と目的
今日発達障碍は教育現場において広く認知されてきているが,診断までには至らない自閉症スペクトラム症(以下ASD)傾向の高い人は,周囲に理解者が少ないことによる困り感が大きく,不登校や精神的な病を発症することも少なくない。
ASD傾向の高い人は,生得的な心理的敏感さが高く(土田,2014)認知の偏りによる傷つきやすさを抱えていると考えられ,その様態を周囲が理解できないことにより,不登校や精神的な病につながっていると考えられる。
だが,ASD傾向の高い人の中にも適応的にすごせる人々が存在しているが,適応的に働く要因として,生得的な心理的敏感さのなかにポジティブな要因が存在しており,本研究においては,ASD傾向の高い人がもともと持っているポジティブな心理的敏感さの働きについて検討をしていくこととする。
方 法
1.質問紙
自閉症スペクトラム指数日本版短縮版AQ-J-16(栗田・長田・小山・金井・宮本・志水,2004)(以下AQ),Highly Sensitive Person Scale(Aron&Aron,1997)のうち,Aron(1997 富田訳2000)において翻訳された日本語版23項目(平野,2013)(以下HSP),The Resilience Quotient日本語版(長内・古川,2005)(以下RQ), 本来感尺度(伊藤・小玉,2005)を使用した。
2.調査協力者
首都圏大学学部生103名(男性50名,女性53名),平均年齢は男性20.13歳,女性20.17歳,年齢範囲は18歳~23歳であった。
3.手続き
調査協力者の授業終了後質問紙を配布した。フェースシートへ倫理的配慮項目の明記の上,口頭で伝えた。15分程度で無記名,自記式にて実施,その場で回収した。
結 果
AQ,HSPポジティブな心理的敏感さ,本来感,レジリエンスの合計得点と平均点,レジリエンスの各因子得点の平均点を算出し,平均点より高得点を高群,平均点より低得点を低群とし2群に分け,分散分析を行った。
(1) 各尺度における性別の効果
HSPポジティブな心理的敏感さにおいて女性が5%水準で有意に高かった(F(1,100)=3.99,p<.05)。
(2) 本来感,レジリエンスにおけるAQ,HSPポジティブな心理的敏感さの効果
本来感においてAQとポジティブな心理的敏感さに交互作用がみられた(F(3,93)=5.14,p<.05)。単純主効果の検定をしたところ,AQ高群におけるHSPポジティブな心理的敏感さ高群の単純主効果,HSPポジティブな心理的敏感さ高群におけるAQ低群の単純主効果がみられた。
レジリエンス得点においてはAQの主効果がみられた(F(3,72)=12.28,p<.001)。
レジリエンスくじけない心においてAQの主効果に有意傾向が見られた(F(3,73)=3.23,p<.10)。
レジリエンス問題解決力においてAQの主効果がみられた(F(3,73)=10.09, p<.01)。
レジリエンス状況分析力においてAQの主効果(F(3,73)=21.72, p<.001),HSPポジティブな心理的敏感さの主効果に有意傾向(F(3,73)=2.80, p<.10)がみられた。
(3) レジリエンスにおける本来感の影響
1%水準で有意であった(F(1,76)=7.09, p<.01)。
考 察
ポジティブな働きをもつ生得的な心理的敏感さは女性の方が高い。したがって生得的に女性の方が細やかな気遣いが出来たり,細かな状況の察知力や場面の転換などの力は女性の方が勝っていることが明らかとなった。
ポジティブな心理的敏感さの高い人は本来感が高い。本来感はレジリエンス力に強い影響を及ぼしている。ASD傾向が高い人でもポジティブな心理的敏感さの高い人は,本来感が高いことから,ポジティブな心理的敏感さはレジリエンスの力にも何らかの影響を及ぼしており,ネガティブな出来事に遭遇してもそれを乗り越え,打ち勝つ力を高める効果を持つと推察できる。
今日発達障碍は教育現場において広く認知されてきているが,診断までには至らない自閉症スペクトラム症(以下ASD)傾向の高い人は,周囲に理解者が少ないことによる困り感が大きく,不登校や精神的な病を発症することも少なくない。
ASD傾向の高い人は,生得的な心理的敏感さが高く(土田,2014)認知の偏りによる傷つきやすさを抱えていると考えられ,その様態を周囲が理解できないことにより,不登校や精神的な病につながっていると考えられる。
だが,ASD傾向の高い人の中にも適応的にすごせる人々が存在しているが,適応的に働く要因として,生得的な心理的敏感さのなかにポジティブな要因が存在しており,本研究においては,ASD傾向の高い人がもともと持っているポジティブな心理的敏感さの働きについて検討をしていくこととする。
方 法
1.質問紙
自閉症スペクトラム指数日本版短縮版AQ-J-16(栗田・長田・小山・金井・宮本・志水,2004)(以下AQ),Highly Sensitive Person Scale(Aron&Aron,1997)のうち,Aron(1997 富田訳2000)において翻訳された日本語版23項目(平野,2013)(以下HSP),The Resilience Quotient日本語版(長内・古川,2005)(以下RQ), 本来感尺度(伊藤・小玉,2005)を使用した。
2.調査協力者
首都圏大学学部生103名(男性50名,女性53名),平均年齢は男性20.13歳,女性20.17歳,年齢範囲は18歳~23歳であった。
3.手続き
調査協力者の授業終了後質問紙を配布した。フェースシートへ倫理的配慮項目の明記の上,口頭で伝えた。15分程度で無記名,自記式にて実施,その場で回収した。
結 果
AQ,HSPポジティブな心理的敏感さ,本来感,レジリエンスの合計得点と平均点,レジリエンスの各因子得点の平均点を算出し,平均点より高得点を高群,平均点より低得点を低群とし2群に分け,分散分析を行った。
(1) 各尺度における性別の効果
HSPポジティブな心理的敏感さにおいて女性が5%水準で有意に高かった(F(1,100)=3.99,p<.05)。
(2) 本来感,レジリエンスにおけるAQ,HSPポジティブな心理的敏感さの効果
本来感においてAQとポジティブな心理的敏感さに交互作用がみられた(F(3,93)=5.14,p<.05)。単純主効果の検定をしたところ,AQ高群におけるHSPポジティブな心理的敏感さ高群の単純主効果,HSPポジティブな心理的敏感さ高群におけるAQ低群の単純主効果がみられた。
レジリエンス得点においてはAQの主効果がみられた(F(3,72)=12.28,p<.001)。
レジリエンスくじけない心においてAQの主効果に有意傾向が見られた(F(3,73)=3.23,p<.10)。
レジリエンス問題解決力においてAQの主効果がみられた(F(3,73)=10.09, p<.01)。
レジリエンス状況分析力においてAQの主効果(F(3,73)=21.72, p<.001),HSPポジティブな心理的敏感さの主効果に有意傾向(F(3,73)=2.80, p<.10)がみられた。
(3) レジリエンスにおける本来感の影響
1%水準で有意であった(F(1,76)=7.09, p<.01)。
考 察
ポジティブな働きをもつ生得的な心理的敏感さは女性の方が高い。したがって生得的に女性の方が細やかな気遣いが出来たり,細かな状況の察知力や場面の転換などの力は女性の方が勝っていることが明らかとなった。
ポジティブな心理的敏感さの高い人は本来感が高い。本来感はレジリエンス力に強い影響を及ぼしている。ASD傾向が高い人でもポジティブな心理的敏感さの高い人は,本来感が高いことから,ポジティブな心理的敏感さはレジリエンスの力にも何らかの影響を及ぼしており,ネガティブな出来事に遭遇してもそれを乗り越え,打ち勝つ力を高める効果を持つと推察できる。