日本教育心理学会第57回総会

講演情報

ポスター発表

ポスター発表 PF

2015年8月27日(木) 16:00 〜 18:00 メインホールA (2階)

[PF008] 高校生におけるソーシャルスキル教育がメンタルヘルスに及ぼす効果(2)

短期介入の効果

茅野眞起子1, 岡安孝弘2 (1.東京都立新宿山吹高等学校, 2.明治大学)

キーワード:ソーシャルスキル, 対人不安, 高校生

目的
児童生徒の人間関係上の問題の改善を図ろうとすることを目的とした行動療法的介入方法のひとつとして,クラス単位でのソーシャルスキル・トレーニング(SST)が試みられるようになってきている。昨年の報告では,不登校を経験した生徒が多く入学する高校において,アサーション・トレーニングに,認知行動療法的観点から不安やストレスをマネジメントするためのトレーニングを加えたソーシャルスキル教育プログラムを4ヶ月にわたって4回実施し,ストレス反応の軽減に一定の効果があることが示された。本報告では,昨年よりも短期間で集中的にプログラムを実施し,それによってどの程度その効果に違いが生じるかを検討した。
方 法
対象者
東京都内のA高校の新入生187名を対象としてプログラムを実践し,実施前と実施後の2回の効果判定調査に有効回答をした139名(男子69名,女子70名)を分析対象とした。
実施時期・手続き
2014年4月から5月にかけて,クラスごとに約2週間に1回の計3回,1回40分,各ホームルームの時間にプログラムを実施した。相談室担当教員が授業を行い,各担任は補助に付いた。
実施内容
第1回:ガイダンス・仲間作り
プログラムを実施する目的を説明し,学習することの意義を理解してもらうとともに,お互いをよく知るためのゲーム形式のグループ学習を行った。
第2回:不安のマネジメント
思考―感情―行動の関連性について理解を深め,ネガティブなセルフトークに気づき,ポジティブなセルフトークを見つける学習を行った。
第3回:アサーション・トレーニング
3つのタイプの自己表現について解説し,グループによるアサーションの練習を行った。
プログラムの効果判定指標
⑴ソーシャルスキル尺度(戸ヶ崎他,1997)
⑵対人恐怖心性尺度(堀井・小川,1996)
⑶自尊感情尺度(山本他,1982)
⑷パブリックヘルス・リサーチセンター・ストレスインベントリー高校生版(PSI)(坂野他,2007)のうちストレス反応を測定する3下位尺度を使用。
結果と考察
Table1は,介入の効果について検討するために,ソーシャルスキル尺度,対人恐怖心性尺度,自尊感情尺度,PSIのストレス反応尺度の介入前後の得点変化を下位尺度ごとに示したものである。
その結果,対人恐怖心性尺度の「自分を統制できない悩み」を除く4つの下位尺度において,介入後に得点が有意に低下していた。また,ストレス反応尺度の「抑うつ・不安」と「無気力」においても有意な得点の低下が認められた。また,それぞれ小~中程度の効果量が見られた。なお,ソーシャルスキル尺度と自尊感情尺度については,有意な得点の変化は認められなかった。
昨年の実践では,ストレス反応にしか有意な改善効果が見られなかったが,今回の実践では,それに加えて対人不安においても一定の改善効果が認められた。昨年は,ストレスマネジメントも含めた4回のセッションを約1ケ月の間隔で実施した。今回は,高校のカリキュラムの関係でストレスマネジメントの除く3回のセッションでプログラムを構成したが,それを短期間で集中して実践することで,より大きな教育効果が得られる可能性があることが示された。