The 57th meeting of the Japanese association of educational psychology

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ポスター発表

ポスター発表 PF

Thu. Aug 27, 2015 4:00 PM - 6:00 PM メインホールA (2階)

[PF009] 大学適応感とソーシャルスキルの関連

東平彩亜1, 松本麻友子2, 大庭丈幸#3, 齋藤菜月#4, 杉浦悠子#5, 甲村和三6 (1.愛知工業大学, 2.神戸親和女子大学, 3.名古屋大学・日本学術振興会, 4.名古屋大学, 5.愛知淑徳大学, 6.愛知工業大学)

Keywords:大学適応, ソーシャルスキル

【目 的】
近年,大学への適応の問題が深刻化している。入学したものの毎年多くの大学生がその後不適応を起こし大学を去って行く。休学事由として多いのは,精神的な理由,交友関係,金銭的な理由であり,退学理由として多いのは,一身上の都合,勉学意欲をなくした,怠学により卒業できない,就職が決まった,他校への進学(編入)などである(樋口, 2007)。これらの現状を考慮し,多くの大学で不適応の予防や適応の促進を目的とした試みがなされている(例えば,及川・坂本, 2008; 吉澤・西川, 2011)。他方,大学への適応に関連する要因については,まだ十分な検討がなされていない。例えば,友人関係を広げたり,深めたりすることが大学適応において重要であると示されていることから (植村・小川・吉田, 2001),ソーシャルスキルの向上を目的とする試みも少なくない (松本・山崎, 2012; 武蔵, 2012)。しかし,ソーシャルスキルのどのような側面が,大学への適応にどのような影響を及ぼすのかは明らかではない。そこで本研究ではこれらの関連を詳細に検討する。
【方 法】
対象者 大学生128名(男性117名,女性11名)
実施時期 2015年1月~3月
実施方法 「大学生の意識調査」として,授業時間を利用して一斉に実施した。
質問紙の構成 学校への適応感尺度(大久保, 2005)と成人用ソーシャルスキル自己評定尺度(相川・藤田, 2005)から構成された。学校への適応感尺度は30項目であった。下位尺度は,居心地の良さの感覚/課題・目的の存在/被信頼・受容感/劣等感のなさであり,先行研究に倣って5件法で実施した。成人用ソーシャルスキル自己評定尺度は35項目であった。下位尺度は関係開始/解読/主張性/感情統制/関係維持/記号化であり,先行研究に倣って4件法で実施した。
【結果】
それぞれの尺度得点について,Pearsonの積率相関係数を算出した(Table 1)。適応感尺度の合計得点(大学適応感)とソーシャルスキル自己評定尺度の合計得点(ソーシャルスキル)との間には有意な正の相関が確認された。一方,適応感尺度の下位尺度である劣等感のなさと,有意な相関が確認されたソーシャルスキル自己評定尺度得点は関係開始のみであった。またソーシャルスキル自己評定尺度の下位尺度である感情統制とは,大学適応感及び,いずれの下位尺度とも有意な相関は見られなかった。
【考 察】
本研究においても,先行研究と同様,大学適応感とソーシャルスキルとの間には正の相関が確認された。武蔵(2012)も指摘するように,大学教育においても学生にソーシャルスキルを学習させることは,学生の対人関係の改善に役立つと同時に,不適応を予防することにつながると考えられる。他方,大学適応に関連する重要な要因として注目され,介入の対象となることも多い劣等感については,ソーシャルスキルとの関連ははっきりとは確認されなかった。また,ソーシャルスキルに含まれる感情統制においては,いずれの適応感尺度得点とも直接有意な関連は見られなかった。これらを考慮すると,どのようなソーシャルスキルを,どのような目的やタイミングで,どのような学生に学習させるのかも,効果的な介入を考える上では重要なポイントとなり得るだろう。今後,ソーシャルスキルが大学適応過程においてどのような役割を果たしているのか,また大学適応感の変化によってどのように影響を受けるのか,両者の関係についてより詳細に明らかにしていく必要があるだろう。