日本教育心理学会第57回総会

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ポスター発表

ポスター発表 PF

2015年8月27日(木) 16:00 〜 18:00 メインホールA (2階)

[PF010] 児童における居場所の有無と学校適応の関連

布施光代 (明星大学)

キーワード:居場所, 学校適応, 児童

問題と目的
近年,子どもの「居場所」の重要性が指摘されている。子どもの「居場所」を取り上げたこれまでの研究から,「居場所」とは,ほっとできる場所,安心できる場所とされている(弓削・足立,2006; 吉松・荒木,2008など)。吉松・荒木(2008)は小学生が「居場所」をどのように捉えているのかを検討した結果,多くの小学生が学校ではなく家庭を「居場所」と捉えていることを明らかにしている。
文部科学省(1992)は,学校現場が児童・生徒にとって自己の存在を実感できる精神的に安心することができる場所,すなわち,「心の「居場所」」が学校適応に重要な役割を果たすとした。学校現場の中で「居場所」があることももちろん重要であろうが,そもそも「居場所」を持っていることは,子どもたちの学校適応にとって重要であると考えられる。そこで本研究では,児童期の子どもの具体的な「居場所」を捉えること,「居場所」の有無が学校適応に与える影響を検討することを目的とする。
方法
調査対象者 関東および東北の公立小学校の5年140名(男71名,女子69名),6年160名(男子81名,女子79名),計300名(男子152名,女子148名,均年齢10.8歳)を対象とした。
調査内容 ①「居場所」について:「居場所」の有無をたずね,ある場合には具体的な記述を求めた。また,その理由を10 個まで自由に記述させた。②学校生活享受感尺度(10項目,4件法):古市・玉木(1994)が作成した学校生活享受感尺度を用いた。
手続き 質問紙による調査を行った。クラス毎に担任教師に依頼し,一斉調査を行った。調査時期は,2014年6月から7月であった。
結果と考察
居場所 「居場所」がある児童は293名(97.7%),ない児童は7名(2.3%)であり,大半の児童にとって「居場所」があることが明らかとなった。また,具体的な「居場所」は,「家」215名(75.8%),「自分の部屋」44名(15.4%),「教室」19名(6.64%)「公園」4名(1.4%),いずれにも該当しない「その他」4名(1.4%)であった。学校の中に「居場所」を感じている児童は少なく,多くの児童が自分の家や部屋を挙げており,自宅が子どもたちにとっての「居場所」となっていることが示された。また,「居場所」だと感じる理由について,KJ法による分類を行った結果,「安心感」,「楽しさ」,「ひとりでない」,「自由」,「ありのままの自分の受容感」,「大切」の6カテゴリが得られた。
学校適応感 古市・玉木(1994)にならい,学校生活享受感尺度10項目の得点を合計し,学校適応感の指標とした。学年(5年・6年)×性別(男・女)の2要因分散分析を実施したところ,性別の主効果のみ有意であり(F(1,291) =6.03,p < .05),男児よりも女児の得点の方が高かった(Table 1)。
「居場所」の有無と学校適応の関連 「居場所」の有無により学校適応感に差が見られるのかを検討するため,「居場所」があると回答した児童とないと回答した児童それぞれの学校適応感の平均値を算出した。その結果,「居場所」がある」と答えた児童の平均値は29.9,ないと答えた児童の平均値は25.0となり,t検定の結果,居場所がある児童の方が学校適応感が高いことが得られた((t(293)=2.14,p<.05)。学校内に限らず,「居場所」があることは子どもたちに安心感を与え,学校適応にも効果的であることが示唆された。