[PF012] 教育相談リーダー養成研修の効果
2段階の研修システムによる教育相談の定着を目指して
Keywords:教育相談リーダー, 養成研修, 承認の効果
問題と目的
教育相談の定着化は,学校適応援助の充実に有効だとされている(西山,2012)。教育相談を定着させ,システムを整えるために不可欠な要素として,各教員の教育相談技術を含む資質を向上させる研修等が必要であるとされている(生徒指導提要, 2010)。しかし,多忙な現場では研修時間の確保は容易ではなく,数回の全体研修だけでは現存の教育相談体制の確認に留まり,各教員の個々の対応力や具体的な教育相談の手立てを体験するといった発展的な内容まで網羅できない現状がある。そこで,全体研修に先駆け,報告者が一部の教員を対象に「教育相談リーダー研修」として,OJT方式で,教育相談担当者養成研修を構造化した。教育相談リーダーが,学年レベルでの具体的な教育相談活動を実践し,その活動を通して,学校全体へ教育相談の意義や効果を浸透させること,さらに,学校全体の教育相談を推進でき,他校へ異動しても教育相談を一人で担当できるようになること目的とした。
方法
1. 研究期間
平成26年11月~平成27年3月
2. 研究対象
全体:福岡市内のA中学校全教員27名
(女性13名,男性14名/20歳代6名,30歳代7名,40歳代5名,50歳代8名)
一部:福岡市内のA中学校選定教員6名
(女性3名,男性3名/20歳代3名,30歳代3名)
3. 研究の評価方法
教育相談に必要なスキルを習得する変容の過程を,リーダーへの半構造化面接で図る。また,全教員の自己効力感の変化や自校の教育相談体制の捉え方や定着度等を図る。
・半構造化面接
・教育相談の定着化に関する質問紙(西山,2012) ①教育相談の届く範囲②教員間の同僚生③生徒支援の適切さ④人材活用⑤教員間の協働⑥教育相談活動への合意⑦教育相談体制の一貫性の7項目からなる。
・教師自己効力感尺度: Wolfolk&Hoy (1990)の作成した教師自己効力感尺度を前原(1994)か翻訳した項目から,14項目を使用
結果
福岡市立A中学校において,教育相談の定着を促進させるために,実現可能な研修として,一部の教員を対象にしたOJTによる教育相談リーダー研修と,全教員を対象にした全体研修による2段階の教育相談研修を構成し,試行した。その結果,主に次の3つの結果が得られた。
1.教育相談リーダーの承認の効果
半構造化面接により,研修後に各リーダーに承認の効果が認められた。各リーダーは,管理職からの客観評価や周囲からの相談等が増えた事実等を通して,自分の力量や特性を「評価された」ことを,「承認された」,「賞賛された」,あるいは「関心を持たれた」と捉え,自己研鑽や研修への意欲を促進した,という感想が全員から得られた。
2.教育相談リーダー研修から全体への波及効果
同じくリーダー研修後の半構造化面接から,「生徒の支援は,みんなで行うものと実感した。」という感想を持ったリーダーが,実際に学年チームで援助を始め,リーダー以外へ教育相談体制が広まりつつある。
3.伝達講習としての校内研修
教育相談に関する専門性を教職大学院にて習得中の報告者が,在籍校において,まず一部の教員へ,その専門的な知見を伝達し,その後一部の教員を通して,全体へ伝達されるという校内研修のシステムを構成することができた。
考察
多忙な現場で,生徒の学校適応を促進する教育相談に関する研修を実施するためには,研修内容や形態の工夫が必要であった。その結果,校外研修などで専門性を身につけた教員が,OJTで,既存の教育相談打ち合わせ会を利用した,教育相談リーダー養成研修を行うことで,時間的な問題が解決できた。次に,養成研修を受けた各リーダーが,全教員へ教育相談研修を企画・進行することで,学校全体の教育相談に関する資質や技能が高まった。この効果は,単に2段階の研修自体の結果だけではなく,周囲からの承認の効果が研修意欲に結びついたことによるものと考えられる。その一方,現時点では聞き取り調査の分析を中心とした成果検討であることから,今後は質問紙調査や,生徒や保護者への効果を検討する必要がある。
教育相談の定着化は,学校適応援助の充実に有効だとされている(西山,2012)。教育相談を定着させ,システムを整えるために不可欠な要素として,各教員の教育相談技術を含む資質を向上させる研修等が必要であるとされている(生徒指導提要, 2010)。しかし,多忙な現場では研修時間の確保は容易ではなく,数回の全体研修だけでは現存の教育相談体制の確認に留まり,各教員の個々の対応力や具体的な教育相談の手立てを体験するといった発展的な内容まで網羅できない現状がある。そこで,全体研修に先駆け,報告者が一部の教員を対象に「教育相談リーダー研修」として,OJT方式で,教育相談担当者養成研修を構造化した。教育相談リーダーが,学年レベルでの具体的な教育相談活動を実践し,その活動を通して,学校全体へ教育相談の意義や効果を浸透させること,さらに,学校全体の教育相談を推進でき,他校へ異動しても教育相談を一人で担当できるようになること目的とした。
方法
1. 研究期間
平成26年11月~平成27年3月
2. 研究対象
全体:福岡市内のA中学校全教員27名
(女性13名,男性14名/20歳代6名,30歳代7名,40歳代5名,50歳代8名)
一部:福岡市内のA中学校選定教員6名
(女性3名,男性3名/20歳代3名,30歳代3名)
3. 研究の評価方法
教育相談に必要なスキルを習得する変容の過程を,リーダーへの半構造化面接で図る。また,全教員の自己効力感の変化や自校の教育相談体制の捉え方や定着度等を図る。
・半構造化面接
・教育相談の定着化に関する質問紙(西山,2012) ①教育相談の届く範囲②教員間の同僚生③生徒支援の適切さ④人材活用⑤教員間の協働⑥教育相談活動への合意⑦教育相談体制の一貫性の7項目からなる。
・教師自己効力感尺度: Wolfolk&Hoy (1990)の作成した教師自己効力感尺度を前原(1994)か翻訳した項目から,14項目を使用
結果
福岡市立A中学校において,教育相談の定着を促進させるために,実現可能な研修として,一部の教員を対象にしたOJTによる教育相談リーダー研修と,全教員を対象にした全体研修による2段階の教育相談研修を構成し,試行した。その結果,主に次の3つの結果が得られた。
1.教育相談リーダーの承認の効果
半構造化面接により,研修後に各リーダーに承認の効果が認められた。各リーダーは,管理職からの客観評価や周囲からの相談等が増えた事実等を通して,自分の力量や特性を「評価された」ことを,「承認された」,「賞賛された」,あるいは「関心を持たれた」と捉え,自己研鑽や研修への意欲を促進した,という感想が全員から得られた。
2.教育相談リーダー研修から全体への波及効果
同じくリーダー研修後の半構造化面接から,「生徒の支援は,みんなで行うものと実感した。」という感想を持ったリーダーが,実際に学年チームで援助を始め,リーダー以外へ教育相談体制が広まりつつある。
3.伝達講習としての校内研修
教育相談に関する専門性を教職大学院にて習得中の報告者が,在籍校において,まず一部の教員へ,その専門的な知見を伝達し,その後一部の教員を通して,全体へ伝達されるという校内研修のシステムを構成することができた。
考察
多忙な現場で,生徒の学校適応を促進する教育相談に関する研修を実施するためには,研修内容や形態の工夫が必要であった。その結果,校外研修などで専門性を身につけた教員が,OJTで,既存の教育相談打ち合わせ会を利用した,教育相談リーダー養成研修を行うことで,時間的な問題が解決できた。次に,養成研修を受けた各リーダーが,全教員へ教育相談研修を企画・進行することで,学校全体の教育相談に関する資質や技能が高まった。この効果は,単に2段階の研修自体の結果だけではなく,周囲からの承認の効果が研修意欲に結びついたことによるものと考えられる。その一方,現時点では聞き取り調査の分析を中心とした成果検討であることから,今後は質問紙調査や,生徒や保護者への効果を検討する必要がある。