[PF019] 教職志望学生を対象とした授業観察視点
担任が経営上「困難を感じていない学級」および「困難を感じている学級」における授業観察を通して
Keywords:教職志望学生, 学級の荒れ, 授業観察
目 的
教師の多くの実践の割合が授業で占められている。小学校においては学級担任の授業が学校生活の中心である(小松,2003)。学級や学校において荒れに対する対策が講じられているが,授業からの立て直しに可能性があるといえる(小松,2003)。教職志望の学生にとって,学級の荒れを授業から見取り,検討することは学級経営を支えとした授業実践を捉えるために必要なことと考える。そこで本発表では,小学校教育実習前後の教職志望学生を対象として,異なる2つの学級の観察視点を比較検討する。担任(発表者)が経営上「困難を感じていない学級」および経営上「困難を感じている学級」それぞれにおける授業観察を通して,自由記述した所見をデータとして,学生の授業観察視点の特徴を検討することを目的とする。
方 法
1.観察対象とした学級および授業
1-1.観察対象とした学級
1)発表者が経営上「困難を感じていない学級」(以降A学級と表記する)は東京都内小学校第5学年であり発表者の担任期間は2002年4月から2003年3月であった。
2)発表者が経営上「困難を感じている学級」(以降B学級と表記する)は東京都内小学校第5学年であり発表者の担任期間は2008年4月から2009年3月であった。
1-2.観察対象とした授業および記録方法
学生の観察対象学級における授業者はA・B学級ともに発表者である。教科はともに算数科である。A・B学級いずれの授業も同僚教員に公開している。そして,第三者が見て,明らかに「学級の荒れ」が認められないと判断した学級における授業である。A・B学級いずれの学級においても教室後方の一定点よりVTRカメラを固定し撮影した。A学級では教室後方黒板に向かって左端に,B学級では教室後方黒板に向かって右端に設置し録画した。
2.学生の授業観察および記録方法
授業観察者は教職志望学生1回生および2回生18人そして教育実習を終えた教職志望学生3回生17名であり,1回生・2回生は2012年11月28日に,教育実習を終えた教職志望学生3回生は2012年12月7日にそれぞれ教職に関わる専門科目受講時に観察した。A学級,B学級ともに,それぞれ同じ時間(40分間)VTR視聴を通して観察を行った。その際,発表者からは経営上「困難を感じていない学級」および経営上「困難を感じている学級」に関わる言及はせず,観察を実施した。観察の順序は1回生および2回生,そして3回生いずれもA学級での授業,B学級での授業の順とした。
3.分析方法
3-1.ワークシートの分析方法
観察後に授業の所感をワークシートに自由に記述してもらい,カテゴリーによる分類を行った。数量は記述のデータ数を対象とし,記述された内容は観察された視点および観察対象の視点が観察者によってどういた所感として表現されているのかを分類のための基準とした。1つのデータ区分は特定の観察視点が認められた一まとまりの表現であると同定できた記述をカウントした。
3-2.学生の記録した所感の分類方法
データは教職志望学生による授業観察した際の所感の記述だが,発表者は実践者としてその記述内容を分類することとなるため,授業を多面的に構成要素として提示した藤岡(1994)の分類カテゴリーを援用した。藤岡(1994)は授業デザインのための6つの構成要素を提示している。そのうち,授業観察からは「授業者のねがい」は推測できないと判断し,記述の分類カテゴリーを「目標」,「学習者の実態」,「教材の研究」,「教授方略」,「学習環境・条件」,の5つに設定した。学生がワークシートに記録した「所感」は学生が授業観察視点の対象に対して所感が加えられている内容であり,授業観察視点の対象に限られた記述内容を「事実」として区分した。さらに「所感」を授業者に肯定的な内容記述である内容(「肯定」)および否定的な内容(「否定」)あるいは対案が加えられた内容(「対案」)という2つに分類した。
結果・考察
1.所感記述数
1,2回生および3回生とともに授業者の「教授方略」に分類できる所感記述数が多かった。1・2回生はA学級では58,B学級では53,また,3回生はA学級では95,B学級では67であった。
1,2回生では,「事実」の記述数がA学級,B学級における授業観察に対して,それぞれ70,55という結果となった。教育実習を終えた3回生の記述数は,「否定」的な所感あるいは「対案」の提示はA学級,B学級における授業観察に対して,34,29,さらに「事実」の記述数は,A学級,B学級における授業観察に対して,それぞれ68,49という結果となった(Table 1)。1・2回生はA・B学級の観察においてともに授業における「事実」に視点が置かれて観察していたと考えられる。3回生は教育実習後の観察であったことから,実習において授業実践に対して,否定的な見方ができ,対案を提案する視点で観察していたと考えられる。
2.所感の記述内容
学生の所感に対して,発表者の解釈を加え学生の観察視点を考える。・「字が小さい」→授業者は学級での授業運営に自信を失っていた。・「ピザに見えず,子どもの笑いをとる」→授業者には子どもたちの笑いは明らかに嘲笑と受け止められる。・「先生が子ども達を引っ張って授業に入り込ませている」→荒れを押さえるために,どうしても教師主導型の授業にならざるを得ない。学生の所感には,学級の荒れに関連すると判断できる内容のものがいくつか見られた。さらに,学生からのこれらの所感が学級の荒れに対する気づきとなって所感と学級の荒れとが結びつけられるものと考える。
教師の多くの実践の割合が授業で占められている。小学校においては学級担任の授業が学校生活の中心である(小松,2003)。学級や学校において荒れに対する対策が講じられているが,授業からの立て直しに可能性があるといえる(小松,2003)。教職志望の学生にとって,学級の荒れを授業から見取り,検討することは学級経営を支えとした授業実践を捉えるために必要なことと考える。そこで本発表では,小学校教育実習前後の教職志望学生を対象として,異なる2つの学級の観察視点を比較検討する。担任(発表者)が経営上「困難を感じていない学級」および経営上「困難を感じている学級」それぞれにおける授業観察を通して,自由記述した所見をデータとして,学生の授業観察視点の特徴を検討することを目的とする。
方 法
1.観察対象とした学級および授業
1-1.観察対象とした学級
1)発表者が経営上「困難を感じていない学級」(以降A学級と表記する)は東京都内小学校第5学年であり発表者の担任期間は2002年4月から2003年3月であった。
2)発表者が経営上「困難を感じている学級」(以降B学級と表記する)は東京都内小学校第5学年であり発表者の担任期間は2008年4月から2009年3月であった。
1-2.観察対象とした授業および記録方法
学生の観察対象学級における授業者はA・B学級ともに発表者である。教科はともに算数科である。A・B学級いずれの授業も同僚教員に公開している。そして,第三者が見て,明らかに「学級の荒れ」が認められないと判断した学級における授業である。A・B学級いずれの学級においても教室後方の一定点よりVTRカメラを固定し撮影した。A学級では教室後方黒板に向かって左端に,B学級では教室後方黒板に向かって右端に設置し録画した。
2.学生の授業観察および記録方法
授業観察者は教職志望学生1回生および2回生18人そして教育実習を終えた教職志望学生3回生17名であり,1回生・2回生は2012年11月28日に,教育実習を終えた教職志望学生3回生は2012年12月7日にそれぞれ教職に関わる専門科目受講時に観察した。A学級,B学級ともに,それぞれ同じ時間(40分間)VTR視聴を通して観察を行った。その際,発表者からは経営上「困難を感じていない学級」および経営上「困難を感じている学級」に関わる言及はせず,観察を実施した。観察の順序は1回生および2回生,そして3回生いずれもA学級での授業,B学級での授業の順とした。
3.分析方法
3-1.ワークシートの分析方法
観察後に授業の所感をワークシートに自由に記述してもらい,カテゴリーによる分類を行った。数量は記述のデータ数を対象とし,記述された内容は観察された視点および観察対象の視点が観察者によってどういた所感として表現されているのかを分類のための基準とした。1つのデータ区分は特定の観察視点が認められた一まとまりの表現であると同定できた記述をカウントした。
3-2.学生の記録した所感の分類方法
データは教職志望学生による授業観察した際の所感の記述だが,発表者は実践者としてその記述内容を分類することとなるため,授業を多面的に構成要素として提示した藤岡(1994)の分類カテゴリーを援用した。藤岡(1994)は授業デザインのための6つの構成要素を提示している。そのうち,授業観察からは「授業者のねがい」は推測できないと判断し,記述の分類カテゴリーを「目標」,「学習者の実態」,「教材の研究」,「教授方略」,「学習環境・条件」,の5つに設定した。学生がワークシートに記録した「所感」は学生が授業観察視点の対象に対して所感が加えられている内容であり,授業観察視点の対象に限られた記述内容を「事実」として区分した。さらに「所感」を授業者に肯定的な内容記述である内容(「肯定」)および否定的な内容(「否定」)あるいは対案が加えられた内容(「対案」)という2つに分類した。
結果・考察
1.所感記述数
1,2回生および3回生とともに授業者の「教授方略」に分類できる所感記述数が多かった。1・2回生はA学級では58,B学級では53,また,3回生はA学級では95,B学級では67であった。
1,2回生では,「事実」の記述数がA学級,B学級における授業観察に対して,それぞれ70,55という結果となった。教育実習を終えた3回生の記述数は,「否定」的な所感あるいは「対案」の提示はA学級,B学級における授業観察に対して,34,29,さらに「事実」の記述数は,A学級,B学級における授業観察に対して,それぞれ68,49という結果となった(Table 1)。1・2回生はA・B学級の観察においてともに授業における「事実」に視点が置かれて観察していたと考えられる。3回生は教育実習後の観察であったことから,実習において授業実践に対して,否定的な見方ができ,対案を提案する視点で観察していたと考えられる。
2.所感の記述内容
学生の所感に対して,発表者の解釈を加え学生の観察視点を考える。・「字が小さい」→授業者は学級での授業運営に自信を失っていた。・「ピザに見えず,子どもの笑いをとる」→授業者には子どもたちの笑いは明らかに嘲笑と受け止められる。・「先生が子ども達を引っ張って授業に入り込ませている」→荒れを押さえるために,どうしても教師主導型の授業にならざるを得ない。学生の所感には,学級の荒れに関連すると判断できる内容のものがいくつか見られた。さらに,学生からのこれらの所感が学級の荒れに対する気づきとなって所感と学級の荒れとが結びつけられるものと考える。