[PF032] 学業生活への期待に対する授業満足度の影響
満足授業率と授業満足率の2つの指標の比較
キーワード:授業満足度, 学習実感, 学習支援
【目 的】
鈴木(教心発表2014)では,満足できた授業数を受講した授業数で除算した満足授業率と,授業全般を振り返って満足したかを尋ねた授業満足率の2つの指標を用いて,初学年時の授業全般に対する満足度を調べ,今後の学業生活への期待感との関連について相関分析をしたところ,満足授業率は学校との親和性,授業満足率は学習との親和性と,双方で異なる関連が示された。
そこで,本研究は,同様に初学年時における半期終了後の授業満足度が授業中に得られた学習実感とどう関連し,学業生活への期待にどう影響をもたらしているのか,また,学習困難時に,教授者側にどのような支援を求めているのか,これらの多重的な指標の関連を分析することで,上記した授業満足度の実質的な意味を検討した。
【方 法】
調査内容:半期で受講した科目数と,その中で満足できた科目数を直接回答してもらい,また,別途「大学での全般的な授業満足度は主観的に何%ですか」という教示で主観的な満足率の回答を得た。それに加え,「出来てうれしいことがあった」などの30項目で学習実感についての回答を,「この学校のことが好きになった」などの10項目で今後の学業生活における期待感についての回答を,また,「個別にアドバイスがほしい」などの28項目で学習困難時における支援要請についての回答を,7件法で得た。調査時期:2014年7月28日~30日の定期試験後。調査対象者:人文社会・教育系2学部の130名(男性48名,女性82名)の大学1年生。平均年令は18.6才(SD=0.82)。
【結 果】
学習実感に関しては,最尤法による因子分析を実施した後,固有値の減衰率を基準として2因子を抽出し,バリマックス回転解を得た(累積寄与率37.2%)。一方の因子は「学習増進感」と命名し,他方は「学習抑制感」と命名した。再度,因子別に構成する項目に対して因子分析を行い,前者では「効力感」「達成感」,後者では「重圧感」「負担感」「虚脱感」と命名しうる回転解を得た上で(累積寄与率44.0%,49.6%),それらの尺度得点を算出した(5尺度のα係数は.77~.91)。
また,今後の学業生活への期待に関しては,同様な因子分析で固有値1.0以上を基準として3因子を抽出し,回転バリマックス解を得た(累積寄与率63.4%)。一つの因子は,学校が好きで楽しくなってきたとする「学校親和」,二つ目は,学力を伸ばしたいとする「学習親和」,三つ目は,新しい物事を知るのが楽しいとする「見聞親和」とし,これを尺度化した(αは.60~.89)。
更に,授業困難時の支援要請に関しては,同様な因子分析と因子別の再度の因子分析により,「課題支援」(思考援助・目的援助),「管理支援」(応答援助・統制援助),「情緒支援」(解放援助・緩和援助)の因子を得て,尺度化した(αは.60~.85)。
満足授業率,授業満足率のどちらか一方の変数をモデルに投入し,他の指標に関しては同様に配置をした上で,共分散構造分析をAmosによって行った。その結果,Fig 1に示すような推定値(標準化推定値)が得られた。適合度指標は,満足授業率を投入したモデルではGFI=.94,AGFI=.88,CFI=1.00,RMSEA=.00,授業満足率を投入したモデルではGFI=.93,AGFI=.86,CFI=1.00,RMSEA=.02となり,どちらも十分な適合を示した。その結果,「満足授業率」では「学習親和」への係数が-0.05,それに対し「授業満足率」では-0.20で,「授業満足率」の低下が逆に学習への親和を高めることに影響することが確認できた。「学校親和」への係数は,前者が0.41,後者が0.53であった。
【考 察】
手続きからすると,満足授業率は一つ一つの授業自体を対象化しているのに対し,授業満足率は,本人自身を対象とした評価になっている点が異なると考えられ,授業における自己についての評価が低いほど,学力を伸ばすことに期待をかけていることを示唆すると考えられた。また,いずれにしろ,授業満足度を高めることは,「学習親和」や「見聞親和」よりも「学校親和」への期待に強く影響を与えるものであると考えられた。
鈴木(教心発表2014)では,満足できた授業数を受講した授業数で除算した満足授業率と,授業全般を振り返って満足したかを尋ねた授業満足率の2つの指標を用いて,初学年時の授業全般に対する満足度を調べ,今後の学業生活への期待感との関連について相関分析をしたところ,満足授業率は学校との親和性,授業満足率は学習との親和性と,双方で異なる関連が示された。
そこで,本研究は,同様に初学年時における半期終了後の授業満足度が授業中に得られた学習実感とどう関連し,学業生活への期待にどう影響をもたらしているのか,また,学習困難時に,教授者側にどのような支援を求めているのか,これらの多重的な指標の関連を分析することで,上記した授業満足度の実質的な意味を検討した。
【方 法】
調査内容:半期で受講した科目数と,その中で満足できた科目数を直接回答してもらい,また,別途「大学での全般的な授業満足度は主観的に何%ですか」という教示で主観的な満足率の回答を得た。それに加え,「出来てうれしいことがあった」などの30項目で学習実感についての回答を,「この学校のことが好きになった」などの10項目で今後の学業生活における期待感についての回答を,また,「個別にアドバイスがほしい」などの28項目で学習困難時における支援要請についての回答を,7件法で得た。調査時期:2014年7月28日~30日の定期試験後。調査対象者:人文社会・教育系2学部の130名(男性48名,女性82名)の大学1年生。平均年令は18.6才(SD=0.82)。
【結 果】
学習実感に関しては,最尤法による因子分析を実施した後,固有値の減衰率を基準として2因子を抽出し,バリマックス回転解を得た(累積寄与率37.2%)。一方の因子は「学習増進感」と命名し,他方は「学習抑制感」と命名した。再度,因子別に構成する項目に対して因子分析を行い,前者では「効力感」「達成感」,後者では「重圧感」「負担感」「虚脱感」と命名しうる回転解を得た上で(累積寄与率44.0%,49.6%),それらの尺度得点を算出した(5尺度のα係数は.77~.91)。
また,今後の学業生活への期待に関しては,同様な因子分析で固有値1.0以上を基準として3因子を抽出し,回転バリマックス解を得た(累積寄与率63.4%)。一つの因子は,学校が好きで楽しくなってきたとする「学校親和」,二つ目は,学力を伸ばしたいとする「学習親和」,三つ目は,新しい物事を知るのが楽しいとする「見聞親和」とし,これを尺度化した(αは.60~.89)。
更に,授業困難時の支援要請に関しては,同様な因子分析と因子別の再度の因子分析により,「課題支援」(思考援助・目的援助),「管理支援」(応答援助・統制援助),「情緒支援」(解放援助・緩和援助)の因子を得て,尺度化した(αは.60~.85)。
満足授業率,授業満足率のどちらか一方の変数をモデルに投入し,他の指標に関しては同様に配置をした上で,共分散構造分析をAmosによって行った。その結果,Fig 1に示すような推定値(標準化推定値)が得られた。適合度指標は,満足授業率を投入したモデルではGFI=.94,AGFI=.88,CFI=1.00,RMSEA=.00,授業満足率を投入したモデルではGFI=.93,AGFI=.86,CFI=1.00,RMSEA=.02となり,どちらも十分な適合を示した。その結果,「満足授業率」では「学習親和」への係数が-0.05,それに対し「授業満足率」では-0.20で,「授業満足率」の低下が逆に学習への親和を高めることに影響することが確認できた。「学校親和」への係数は,前者が0.41,後者が0.53であった。
【考 察】
手続きからすると,満足授業率は一つ一つの授業自体を対象化しているのに対し,授業満足率は,本人自身を対象とした評価になっている点が異なると考えられ,授業における自己についての評価が低いほど,学力を伸ばすことに期待をかけていることを示唆すると考えられた。また,いずれにしろ,授業満足度を高めることは,「学習親和」や「見聞親和」よりも「学校親和」への期待に強く影響を与えるものであると考えられた。