[PF036] 交渉学の授業が中・高校生の相互理解と共創に及ぼす効果
キーワード:交渉学, 相互理解, 共創
本研究で用いる交渉学とは,「原則立脚型交渉」,すなわち,自分と相手の一致点を模索し,共通の利害を見つけそれに基づく合意を形成すると共に,利害の対立に対しては客観的で公正な基準に基づいて解決しようとするアプローチを指す。これまでにも,さまざまな授業において,相互理解についての考え方やコミュニケーションの仕方を中心とした授業を展開するものが行われてきているが,交渉学の「原則立脚型交渉」のストラテジーを導入するという観点から実施された授業は見あたらない。
そこで本研究では,中・高校生を対象として,交渉学を導入した授業を実施することを試みる。授業を通して,生徒達の相互理解と共創にいかなる効果が及ぼされるかを検討することを目的とする。
【 方 法 】
対象者 A進学塾の高校1年生と2年生。合計49人(男16人,女33人)。実施期間は,2時間30分を全6回に分けて行った。選抜方法としては,事前になぜ交渉学を学びたいのかについてのモチベーションレター提出を求め,その内容によって選抜を行った。
授業内容 大きく前半部分の講義形式と,ロールプレイによって構成した。講義-交渉学ロールの読み込み-ロール別チームに分かれてディスカッション-交渉-感想戦-講師によるフィードバックという形式で行った。グループディスカッションは4~5人のグループに分かれ,交渉は1対1で行った。講義の部分のみ講師が講義形式で行うが,以降は講師は一切内容には関わらず,最後のフィードバックのみ講師主導で行った。感想戦では,お互いのロールを取り替えて相手の立場を理解することで,交渉時点では気付かなかった相手の背景を知ることで相互理解の重要性を促した。交渉なので,講義時間内に合意に至る場合と至らない場合があり,最後のフィードバックでは,講師が合意に至ったグループと至らなかったグループに,なぜそのような結論になったかを問いた。
【 結果と考察 】
1.アンケート結果の分析
各6点満点のアンケートにおいて,初回と最終回において,上昇した項目は,以下の4項目であった。項目1:「交渉学を身に付けることを,自分の能力や性格の中から,プラスとマイナス面を説明できる」(4.48→4.73),項目2:「学校生活において,交渉学を実践する機会があると思う」(4.56→4.70),項目3:「このプログラムを通して,コミュニケーション力がついたと感じる」(4.71→5.14),項目4:「このプログラムを通して,論理的に考える力がついたと感じる」(4.67→5.07)。これに対し,初回と最終回において低下した項目は,以下の2項目であった。項目5:「交渉学を身に付ければ,以前よりも迅速に学校生活を進められるようになると思う」(4.90→4.57),項目6:「今回の授業でならった交渉学を日常で役立てることが出来そうなので,とても楽しみだ。」(5.04→4.73)。
2.自由記述の分析
初回と最終回において上昇した項目のうち,項目1「交渉学を身に付けることを,自分の能力や性格の中から,プラスとマイナス面を説明できる」における自由記述では,「友達との話し合いがうまくなった」,「授業内でのディーベートから相手の立場を考えるようになった」といったスキル的な面のみならず,認知面でも「自分の非を認めた上で相手への不満を言うようになった」,「他の考えをもっと知ろう思えるようになった」,「自分の情報をなるべく相手へ提供するようになった」などの変化が記されていた。これより, 交渉の過程で自分のプラスとマイナス面を見つめる機会を得ることができ,自分の非を認め,自分よりも良い考えであれば受け入れることができるようになっていったことが分かる。譲歩や競争とは異なる,共創の解決の重要性に気づいたことが読み取れる。
上昇した項目の項目2「学校生活において,交渉学を実践する機会があると思う」における自由記述では,「これまでより意見が良く出せるようになると思う」,「全然知らない人ともスムーズに話ができるようになった」,「相手のことをよく考えた上で論理的に話すことができるようになった」など,今後の学校生活において,交渉学を活かせる意義を見出した意見が多かった。中には合意に至っていないグループもあったが,お互い納得の上で合意をしようという了承の下で進めており,その思考法こそが相互理解の上で重要である。初対面でも,相手のことをよく考えようとし,お互いの立場や状況,思考の違いを踏まえ,相手の立場を理解した上で,自分の主張を論理的に話す,という相互理解に繋がる交渉がもてたと考えられる。
そこで本研究では,中・高校生を対象として,交渉学を導入した授業を実施することを試みる。授業を通して,生徒達の相互理解と共創にいかなる効果が及ぼされるかを検討することを目的とする。
【 方 法 】
対象者 A進学塾の高校1年生と2年生。合計49人(男16人,女33人)。実施期間は,2時間30分を全6回に分けて行った。選抜方法としては,事前になぜ交渉学を学びたいのかについてのモチベーションレター提出を求め,その内容によって選抜を行った。
授業内容 大きく前半部分の講義形式と,ロールプレイによって構成した。講義-交渉学ロールの読み込み-ロール別チームに分かれてディスカッション-交渉-感想戦-講師によるフィードバックという形式で行った。グループディスカッションは4~5人のグループに分かれ,交渉は1対1で行った。講義の部分のみ講師が講義形式で行うが,以降は講師は一切内容には関わらず,最後のフィードバックのみ講師主導で行った。感想戦では,お互いのロールを取り替えて相手の立場を理解することで,交渉時点では気付かなかった相手の背景を知ることで相互理解の重要性を促した。交渉なので,講義時間内に合意に至る場合と至らない場合があり,最後のフィードバックでは,講師が合意に至ったグループと至らなかったグループに,なぜそのような結論になったかを問いた。
【 結果と考察 】
1.アンケート結果の分析
各6点満点のアンケートにおいて,初回と最終回において,上昇した項目は,以下の4項目であった。項目1:「交渉学を身に付けることを,自分の能力や性格の中から,プラスとマイナス面を説明できる」(4.48→4.73),項目2:「学校生活において,交渉学を実践する機会があると思う」(4.56→4.70),項目3:「このプログラムを通して,コミュニケーション力がついたと感じる」(4.71→5.14),項目4:「このプログラムを通して,論理的に考える力がついたと感じる」(4.67→5.07)。これに対し,初回と最終回において低下した項目は,以下の2項目であった。項目5:「交渉学を身に付ければ,以前よりも迅速に学校生活を進められるようになると思う」(4.90→4.57),項目6:「今回の授業でならった交渉学を日常で役立てることが出来そうなので,とても楽しみだ。」(5.04→4.73)。
2.自由記述の分析
初回と最終回において上昇した項目のうち,項目1「交渉学を身に付けることを,自分の能力や性格の中から,プラスとマイナス面を説明できる」における自由記述では,「友達との話し合いがうまくなった」,「授業内でのディーベートから相手の立場を考えるようになった」といったスキル的な面のみならず,認知面でも「自分の非を認めた上で相手への不満を言うようになった」,「他の考えをもっと知ろう思えるようになった」,「自分の情報をなるべく相手へ提供するようになった」などの変化が記されていた。これより, 交渉の過程で自分のプラスとマイナス面を見つめる機会を得ることができ,自分の非を認め,自分よりも良い考えであれば受け入れることができるようになっていったことが分かる。譲歩や競争とは異なる,共創の解決の重要性に気づいたことが読み取れる。
上昇した項目の項目2「学校生活において,交渉学を実践する機会があると思う」における自由記述では,「これまでより意見が良く出せるようになると思う」,「全然知らない人ともスムーズに話ができるようになった」,「相手のことをよく考えた上で論理的に話すことができるようになった」など,今後の学校生活において,交渉学を活かせる意義を見出した意見が多かった。中には合意に至っていないグループもあったが,お互い納得の上で合意をしようという了承の下で進めており,その思考法こそが相互理解の上で重要である。初対面でも,相手のことをよく考えようとし,お互いの立場や状況,思考の違いを踏まえ,相手の立場を理解した上で,自分の主張を論理的に話す,という相互理解に繋がる交渉がもてたと考えられる。